心と神経の哲学/あるいは/脳と精神の哲学

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社交不安障害とオタクが人類を救う

2021-01-31 18:20:53 | 社会・政治

社交不安障害という精神疾患がある。

かつて対人恐怖症と呼ばれていた神経症の一種である。

この疾患を抱える人は対人関係が病的な緊張によって妨害され、人との交流を避けて孤独を好む。

大勢の人の前で話す、異性と会話する、他人と会食する、飲み会に出席する。

こうしたことを彼らは極端に苦手とする。

緊張のために手が震えたり、赤面したり、声が震えたりする。

そうした機会が避けられないものだとすると、数日前から不安で眠れなくなる。

それと同時に様々な心身症的身体症状も現れてくる。

 

これはかつては、そして今でも性格のせいだとか、芯が弱いからだとか思わて、病気ないし疾患とはみなされなかったりする。

しかし、社交不安障害はれっきとした脳の病気であり、対人緊張を制御する脳の神経システムが不安定で脆弱なのである。

それが条件反射のように固定されて、社交的場面を避けるようになる。

 

対人恐怖症と呼ばれていた頃は、森田療法などの精神療法が主であったが、今世紀に入ってからSSRIという抗うつ薬が効くことが分かり、

主流は薬物療法+認知行動療法となった。

SSRIは偏桃体周辺のセロトニンの伝達に働きかけ、固定された対人緊張の条件反射を解除してくれるのである。

 

身体の病気ないし脳神経システムの障害は気力や教育によって治せない。

医学的治療が必要なのである。

 

ところで、オタクと呼ばれる人たちがいる。

彼らも対人関係を嫌い、孤独な趣味に走ることが多いが、ほとんどは病的な緊張症を抱えてはいない。

ちなみに、オタクに対置されるのはリア充と呼ばれる人たちである。

彼らは一人になることを極端に恐れ、コンパ、合コン、飲み会、その他の集団行動を好む。

孤独を嫌うのは、鬱になるのが怖いからである。

それゆえ、彼らはオタクを嫌い、社交不安障害を馬鹿にする。

 

ところで、去年から始まったコロナウイルス感染症のパンデミックを抑え込む手段は対人接触を可能な限り禁じることである。

特に、飲み会や大勢での集会は避けるべきものとされる。

これはリア充にとっては地獄となるが、オタクや社交不安障害者にとっては天国となる。

強制的な職場の飲み会から逃れられるからである。

 

ハーバード大のある医学者によると、このパンデミックは2024年まで続くらしい。

もし、リア充が跳梁跋扈していたら、人類は滅亡してしまうであろう。

それに対して、自然自粛、自発的ロックダウンを普段の生活信条とする社交不安障害者やオタクのおかげで感染爆発は阻止され、収束に向かうのである。

 

皮肉なものである。

リア充とはリアルが充実していることの略らしいが、いったいいかなるリアルが充実していたのだろうか。

それは弱いもの、孤独な者、暗い人、日陰者たちへの軽蔑の念に裏打ちされた社交的快楽主義でしかなかったのである。

政治家にはオタクや社交不安障害的な人は皆無に等しい。

芸能人もそうだし、スポーツマンもそうである。

飲食業にもそういう人は多い。

 

結局、こういう人々は自然界の害悪、人間の屑、社会のゴミ、生態系の破壊者、或る阿呆の一生だったのである。

これを機会に彼らをこの世から追いやった方がいいくらいである。

生活に必要ないもの、積極的に感染症を広げ、人類を滅亡に追いやる人たちは死んだ方がいいのである。

 

それに対して、バブル期に忌み嫌われたオタクや社交不安障害者こそが人類の救世主となるのである。

彼らを賛美した太宰治の『人間失格』を今こそ万人が読むべきなのである。

 


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