心と神経の哲学/あるいは/脳と精神の哲学

心の哲学と美学、その他なんでもあり

哲学B1 文章講義(第41回目)

2021-01-17 08:59:25 | 哲学

今回は「8   創発の存在論」について説明する。

 

創発の存在論の意味は、テキストp.198の図に端的に示されている。

二元論的思考が生命を心か物質のどちらかに還元するのに対して、創発主義的思考は心と物質の交わる部分に生命を措定し、心と生命と物質の三つの要素間に基礎づけと創発の関係を想定する。

 

哲学史上、デモクリトスは唯物論の代表者、デカルトが二元論のそれとみなされているが、プラトンとアリストテレスという西洋哲学の頂点に立つ古代の巨峰は、

創発主義的観点と親近的な思想をもっていた。

特にアリストテレスはそうであった。

 

現代の還元主義的な生命観を推進する生物学者の中には、精神を物質世界の外に逃がし、それを温存する傾向があるが、ここで生命と心の分離が起こってしまう。

創発の存在論は有機的自然観ないし目的論的自然観に基づき、心と生命の深い関係を重視し、唯物論と二元論の双方を否定するのである。

 

この節は第7章のまとめであると同時に利己的な遺伝子の概念の提唱者ジャック・モノーの軽薄な心観と実存的自由の観念を批判したものである。

そのことを顧慮して、この短い節を読んでほしい。

 

 

 

               それがきみのためになるんだにゃ

 

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