(1)政治には「うつわ」(capacity)と「中身」(substance)がある。米国、中国、日本と一定の国際評価のある国体、「うつわ」は定着して、その「うつわ」の評価の中で「中身」の指導者、リーダー、議会、国民が変化しながらも自国の利益を守り、国際関係の中で存在感を示していくのが政治だ。
(2)岸田首相はカンボジアなどでのASEAN、G20出席のため11日に出発する予定だったが、葉梨法相の更迭、後任決定に迫られ出発が12日の深夜になった。オンラインでの参加も検討(報道)されたが、本人の強い希望で出発を遅らせての国際会議出席だった。
(3)プノンペンでは中国の李克強首相がASEAN会議に習近平主席と出席して演説し、岸田首相とも廊下での短時間での立ち話会談をしたとの報道だ。李克強首相は今秋の中国共産党大会後に習近平新体制ではすべての役職から除外されて無役、「ただの人」になることが決まっており、来年の習新体制発足までの首相としてプノンペン会議にも出席している。
(4)中国は習近平主席が政治、軍事政策を受け持ち、李克強首相が経済政策を担当する区分けといわれて、しかし習主席から徐々に経済権限も奪われて習体制では存在感、権限をなくしていたといわれている。
日本ではすでに退任が決まっている閣僚が国を代表して国際会議に出席することは国際的信用度、影響度から考えづらく、首相が代行するか後任を決めて出席するというのが常態だ。
(5)習近平主席全権掌握、権力集中の中国統治体制では方針は変わらずに、国際会議での発言も今後無役の李克強首相でも誰でもいいのだろう。李克強首相は中国共産党のエリート養成機関で高度の経済学を学び、経済の専門家といわれ、改革派と目されて、今回の中国共産党大会で地方組織上がりの習主席がかっての部下の側近で固めた新体制から除外されて無役、ただの人になることが決定していた。
(6)しかし、国際政治が習新体制から除外された無役の李克強首相と会談、話し合ってもそれが意味のある成果となるかは疑問で、中国関係の緊密性、必要性維持を確認する儀礼的なものになり、岸田首相としても中国との関係の重要性を考えての李克強首相との立ち話会談だったのだろう。あるいは長年付き合ってきた李克強首相をねぎらう意味合いもあったのかもしれないものだ。
(7)同じく出席している民主党バイデン米大統領も中間選挙での善戦(下院は共和党、上院は民主党多数が有力)は伝えられているが、分断政治で今後の政権運営、議会対策に難題は多く、韓国の尹鍚悦大統領も経済政策などで国民支持率は低落して評判は悪く、岸田首相も国内事情は同じでこういう指導者たちが集まって協議、話し合ってもどれだけ成果、結果に結びつくのかわからない。
(8)当初出席を表明していた露プーチン大統領はウクライナ情勢の後退でか、直前になってオンラインでの参加に変更した。