(1)上場企業の22年9月中間決算発表では1部上場企業の売上高は円安による売上額の円換算で合計で前年同期比18.1%増(247.3兆円)と過去最高益を更新したが、営業利益合計は資源高など仕入れ価格の高騰で前年比0.6%増(17.6兆円)に(報道)とどまった。自動車など輸出産業では売上高が17.1%増となったが最終利益は13.7%減の円安、原材料高騰の影響で落差の大きい結果となった。
(2)トヨタなど自動車産業は途中、半導体不足で生産計画の見直し、生産一時停止に見舞われて、AIなど次世代半導体の国産化確保に向けてトヨタ、ソニー、NTT、ソフトバンク、三菱UFJなど8社が参加、出資して新会社「ラピダス」を設立した。
(3)半導体事業は1980年代は日本の半導体メーカーが世界シェアの50%超を占めていたが、今や台湾、韓国にシェアを奪われて世界から「10年あるいは20年遅れている」といわれる現状だ。
技術、製造業が特徴の日本企業、産業でどうしてこんなことになったのか、その後の急速な情報化社会、IT革命時代に適切に対応できずに人材、知能、技術の海外流出の影響を受けたのか、さらに日本経済、産業、企業の特性も影響したとみられる。
(4)日本の企業では内部留保が500億円以上といわれて過去最高を記録し、賃上げによる物価上昇の好循環をはかりたい政府から内部留保を賃上げに回す期待、要請も聞かれ、日本企業の積極的な事業投資に向かわない守りの慎重、内向きの体質がみられるものだ。
(5)米国でのかなり前の逸話で、市場をほとんど独占した企業が独禁法に問われて、その社長が社員にそれなら市場残り全部を取ってこいと言ったという話があって、競争相手がいるからの独禁法違反であり市場100%独占ではパラドックスとして独禁法は成り立たない。極論でおもしろおかしい話ではあるが、攻撃型経済社会の特徴を示したものだ。
(6)前出のトヨタなど8社の参加、投資の次世代半導体新会社は27年をめどに量産化を目指すとしているが今回の投資規模も「現状では本気かと思われてしまう規模感だ」(関係者)との声も聞かれて、世界から10年、20年は遅れている日本の半導体事業でどこまで追いつけるのかはわからない。
(7)半導体事業では過去にも経産省が公的資金をつぎ込んで官民挙げて取り組んだ事業が経営破たんした前例があり、守り、慎重、内向きの産業、企業体質の日本が攻撃型産業、企業に変革できるのか、それでも時代、技術、革命の変化を正しくとらえられない取り組みの遅さは解消されておらずに、とりあえずは何もしないよりはましという危機感の共有だ。