(1)岸田首相が宗教法人法の「質問権」(the right of inquiry)を行使して、旧統一教会の霊感商法、寄付、献金問題など国民被害救済に向けて調査することを表明した。政府が宗教法人法の質問権を行使するのは初めてのことで、もちろん馴染みもなく岸田首相も前例がないことからまずは「実態解明」に取り組むことを強調している。
(2)担当機関が文科省(文化庁)であり、憲法に保障された「信教の自由」との兼ね合いもあり、手探りでの調査で実態解明がどこまでできるのかはまだわからない。旧統一教会は国会議員との深いつながりが明らかになり、特に与党自民党議員に多く、問題を抱えた大臣、党役員もいて岸田首相、茂木幹事長は今後一切旧統一教会とは関係を持たないことを宣言しており、旧統一教会への質問権の行使でどこまで同団体から協力が得られるのか、逆に議員とのあらたな疑惑関係が出てくるということになれば国民にとっては知る権利、意味のあることだが、岸田政権にはパンドラの箱をあけることにもなりかねない。
(3)旧統一教会は集団結婚式、霊感商法、高額寄付、献金で社会問題となって問題視されたが、話題が優先して新興宗教団体特有の宗教入信と信者信仰の関係、信教の自由での「心」の作用、内面問題として片づけられることもあり、同団体も改名して出直しを強調してみせていた。
(4)宗教法人法の「質問権」という馴染みのない言葉で、担当機関が文科省(文化庁)ということで文化庁からは「なんせ、我々にはブツ(証拠)がない」(報道)という声も聞かれて「(解散)請求の判断ができるまでに、どれだけの時間がかかるかは見通せない」との指摘もある。
(5)今回の岸田首相の「質問権」行使表明は、議員と旧統一教会とのつながりが臨時国会で野党の追及が予想される中で開会前日になって岸田首相の指示で突然出てきた話で、国会対策のものでどれだけ準備(はやくも対象適法範囲で混乱)、考えて判断したものかわからずに、行き当たりばったりの出たとこ勝負の様相だ。
(6)旧統一教会には数多くの国会議員、党役員、大臣との深いつながり、選挙支援関係があり、旧統一教会はこれらをかけ引きにして文科省の質問権、調査に応じるものとみられ、文科省はまずは証拠集めからはじめなければならず、どこまで開示されるのか重い、時間のかかる質問権、調査開始だ。
(7)信教の自由の建前から新興宗教の社会問題に手をつけずに過ごしてきた政治のツケが、身内(議員)との深いつながりがより深く、広く進行して、国民の批判の高まりを受けてのあわただしい初めての「質問権」の行使となってあらわれた。
(8)もちろん旧統一教会問題は「実態解明」が求められており、政府としても同団体が国会議員との深いつながりもあり「質問権」調査により「問題」を明らかにしなければならない「政治責任」がある。