(1)原子力規制委員会初代委員長の田中俊一さんが原発事業の問題として、運転経験者が
減って人材不足という課題が解決できていないとして、政府がこれらを解決できないなら技術基盤も薄れ事故のリスクが高まり、今後は原子力をあきらめた方がよいと指摘している。
(2)岸田首相は原発新増設を含めてエネルギー政策の原発依存を強める方針を示しており、原規委初代田中委員長が問題点を指摘して警鐘を鳴らしたものだ。田中俊一さんは原発推進と規制が一体となった経産省行政の矛盾解消のために原規委を経産省から切り離して独立した機関の初代委員長で、それでも政府の方針に沿って原発再稼働を世界でも最も厳しい基準と自負して許可、推進してきた当事者であり、その結果としての今日の原発事業者の安全管理に次々と技術的、能力的、規律的な問題点が浮上して国民の不安、不信、反対が根強い原発事情だ。
(3)岸田首相の原発新増設、依存方針を受けて、西村経産相は原発1基動かすとLNG100万トンを海外から購入する必要がなくなり、LNG輸入が減れば(貿易収支)が改善し、円安を和らげる要因になると発言(報道)して、原発再稼働が円安対策にもつながる「新理論」を持ち出した。
(4)円安は欧米のインフレ対策としての利上げが続き、これに日銀が大規模な金融緩和を継続して急激な円安を招き、物価高が国民生活を苦しめているもので、日銀は日本だけが今金融緩和を変更しても円安には影響しないとして金融緩和策を継続している。
1ドル145円に政府、日銀は市場への為替介入を実施したが米国などはインフレ抑制を優先した利上げで効果は続かずに、今また円安149円となり政府は為替介入に迫られている。
(5)西村発言のように原発を再稼働してLNG輸入が減少すれば円安対策になるのか、電気料金の値下げにはなるかもしれないがそれで円安要因の欧米の利上げに日銀の金融緩和の政策ギャップが解消するとは考えられずに、円安効果につながるとはならない。
(6)政府の原発政策は福島第一原発事故を受けて問題、課題、解決の長い時間が山積しており、西村経再相の原発再稼働と円安の「新理論」は原発への国民の信頼、信任もなく、原発事業者の技術、能力、人材、規律性に重い問題もあり理論克服は困難で、再生可能エネルギー社会実現を優先して取り組むことが求められる。