(1)バイデン米大統領がウクライナ避難民が多いポーランド訪問の演説でプーチン大統領に対して「この男が権力の座にとどまってはならない」(報道)と非難したことが問題になっている。バイデン大統領が露の体制転換(レジームチェンジ)を訴えたともとれる発言で、露側から大統領を選ぶのはバイデン氏ではなくロシアだと反論、反発が出ている。
(2)ホワイトハウスもレジームチェンジ(regime change)について述べたものではなく、プーチン氏が隣国やその地域で権力を行使することは許さないという意味だと釈明に追われた。バイデン大統領のこの発言はこれまでの米国の方針(我々は体制転換は目的にしていない。リーダーを誰とするかはロシア国民が決めなければならないーブリンケン国務長官)に反するものでそもそも演説原稿にもないものだったと説明されて、バイデン大統領独自の強い思いだったことがわかる。
(3)欧米日などの経済、金融制裁に追い詰められても強気の姿勢を崩さない、変えないプーチン大統領に対して、ウクライナ隣国の避難民受け入れ協力のNATOポーランドにまで足を運んで対露制裁姿勢をみせたバイデン大統領のリップサービスか、プーチン大統領へのイライラ感からか予定外の踏み込んだ発言となった。
(4)問題はあっても露の大統領をひきずり下ろすというバイデン発言はあきらかな内政干渉であり、経済、金融制裁で露を追い詰めている時に露に反米プロパガンダの反転攻撃の機会を与えるもので露のNATO勢力拡大阻止、ウクライナ軍事侵攻への正当性の口実を与えかねないものだった。
(5)ではどう発言すればよかったのか。露側がいくら大統領を選ぶのは露国民だといっても国民には選択権、自由の保障はなく、有力な敵対勢力、政治家はことごとくプーチン大統領によって排除、国外追放にあっているプーチン独裁政治状況では、露国民に大統領を自由に選べる権利は保障されていないのが現実だ。
(6)これまでの米国の方針、露側の今回のバイデン発言に対する否定、反発も形式論的なもので反発に実存性のないことはわかっている。米国は共産党一党独裁国家中国に対しては人権抑圧、民族弾圧問題に対して新彊ウイグル地区などの事例を指摘して懸念を表明しているが、中国は内政問題、内政干渉として米側を非難している。
(7)米国など西側諸国は今年の北京冬季五輪でも人権抑圧問題の改善がみられないとして開閉式への政府代表団を送らずに外交ボイコットをして抗議の姿勢を示した。仮にバイデン大統領がプーチン大統領を権力の座にとどまらせてはならないと考えるなら、露のウクライナ軍事侵攻に対してNATOとしてウクライナを軍事支援して露の侵攻を軍事力で阻止するしかない。
(8)圧倒的な軍事力で一気に露軍の侵攻を阻み、後退させない限り、バイデン大統領のいうように第3次世界大戦の危険は高まり、それは米露核戦争に発展する可能性があり、国境を挟んで軍事対立は長期化して米国の軍事負担、世界の危機はまた大きくなる。
世論調査でも、米国民の多くは軍事介入を望んでいない。