いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

男気、衣笠。 heroism , kinugasa

2018-04-25 20:10:18 | 日記
 (1)本当の男気(heroism)、元広島カープ選手の衣笠祥雄さん(71)が亡くなった。ここ数年体調を崩していたことはまったく知らずに、少し前のプロ野球TV解説で言葉にならない声を聞いてこれが衣笠さんかと驚いていた。

 (2)広島カープは広島市民球団として地域に根差したちょっと他のプロ野球球団とは趣の違う、色でいうとまっさらな感じのする極味(こくみ)のない球団の印象だった。
 長く本拠地としてきた広島市民球場(現在は新設広島球場)は施設も古く、何より夏の夕日がレフトスタンド側から射し込むプレーに陽よけが必要という設計上のプロ野球にふさわしくない市民球場というのもチームカラーを象徴していた。

 (3)そこへ東京六大学のスター山本浩二さんと平安高校で甲子園出場した衣笠祥雄さんが入団して、ともに主力として後の赤ヘル旋風を巻き起こして、今やセ・リーグを代表する強力チームに定着した。

 (4)衣笠祥雄さん。その名前の「おさまり」の良さがまずある。4文字どっしりとした安定感がある。その次にあの「ドス」の利いたコワもての顔だ。まゆも太く、もみあげを繁々と伸ばして睨まれたら立ちすくむ迫力がある。

 ところがそれに反比例する子どものようなくったくのない笑顔にやさしいカン高い声の落ち着いた話しぶりで、聞くものに好感、安心感を与える見るからに紳士然とした大人ぶり、常識ぶりが印象的だった。

 (5)野球では気持ちのいいダイナミックなフルスイングで、三振しても臆することなくそれこそ肩を怒らせてバットに当たらないボールが悪いとばかりにベンチに引き上げるそぶりがまた迫力があった。

 デッドボールを受けても反転スクッと立ち上がり、色めき立つ自軍ベンチを手で制して1塁に歩く姿は男気があって見るものを引きつけた。巨人戦での広島カープしか見る機会はなく、生涯安打2543安打(歴代5位ー報道)、同本塁打504本塁打(同7位)と見事に打ったという印象はなく、とにかく行方はボールに聞いてくれとばかりのフルスイングの三振で肩を怒らせてベンチに引き上げる姿ばかりが印象に残る。

 (6)その影で前述の高い記録を成し遂げていたところに、男気、衣笠祥雄さんの真骨頂がある。長嶋茂雄さんの完成された美しい荒々しさのフルスイングとはまた違った荒野をひとり行く荒々しさで、同じように他チームからもファンからも愛された存在だった。

 「鉄人」と呼ばれて連続試合出場のプロ野球記録で、その長嶋茂雄さんより早く王さんに次いで2人目のプロ野球人として国民栄誉賞を受賞したのは名誉だった。

 (7)引退後はプロ野球解説者としてていねいな語り口でわかりやすく伝える解説は人格者を思わせて、誰からも愛される信頼される存在だった。

 報道からは野球が好きで、野球を愛し、冒頭紹介のように病で言葉にならないTV解説でも亡くなる直前まで野球にかかわり続けた71年の男気、衣笠祥雄さんの見事な生涯だった。

 
 

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