旅限無(りょげむ)

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『チベ坊』の続編のような…… 其の六

2010-10-28 15:46:54 | チベットもの
チベット独立を支援する国際団体「自由チベット」(本部ロンドン)が22日明らかにしたところによると、中国青海省果洛チベット族自治州や同省海南チベット族自治州など4カ所で20~21日、中国語による教育を決めた教育改革に反発する高校生らが街頭で抗議行動を行った。……海南チベット族自治州共和県では20日、四つの学校の中高生約2千人が抗議デモを実施。生徒らは「チベット語を自由に使いたい」などと叫んだ。隣接の興海県でもデモが起きた。 21日未明には果洛チベット族自治州大武で生徒がデモ行進、武装警察に阻止された。また同日朝、黄南チベット族自治州双朋西でも約500人の中学生がデモ行進したという。
2010年10月22日 産経新聞 

■このように懐かしい地名が並びますと胸が熱くなります。海南チベット族自治州の中心地の共和県は、拙著の舞台で「四つの学校」と言いますと『坊ちゃん』の翻訳を4割ほど残して小生が去った直後に省都の4年制大学に吸収合併された我が母校も含まれている可能性が高く、見学や交流で訪れた民族中学や短期大学相当の民族学校も含まれているのでありましょう。個人的な知り合いは既に卒業してしまった後ですが、その後輩達が決起したと聞きますと感慨深いものがあります。それにデモの参加者の中には教師も含まれているとの報道に接しますと、厳しい経済状況の下で職を賭す決断の重さを考えると共に何人かの顔が浮かんで来ます。

■果洛(ゴロ)チベット族自治州の大武は現地名マチェンという標高3700m以上の高地にある町で、ゴロ州はチベット文化に興味の有る方には世界最長の未完の物語である『ケサル王伝奇』の舞台となった土地としてご記憶かも知れません。同州にはラジャ寺という真っ青な黄河源流に近い川の畔に建つ名刹もあります。


……青海省で19日から21日にかけて、授業で中国語の使用を強制する新政策に反発するチベット族の大学生や高校生らが3日連続で抗議デモを行った。……自由アジア放送(RFA)が22日、伝えた。……連日数千人がデモに参加。同仁県では数日以内に授業ボイコットも計画されているという。デモ参加者は「チベット語を返せ」と叫び、県庁前などを行進。20日の参加者は計8000人に達した。警察は各地の学校にデモを制止するよう要請したり、学生を学校に連れ戻したりしている。青海省教育庁の当局者はRFAに「状況を把握するため、職員を現地に派遣した」と述べた。中国メディアは一連のデモを一切報じていない。 
2010年10月22日 時事通信 

■留学生として現地に入り、後に正式に日本語教師として採用された身ですから、対応に追われている教育庁の中には世話になった人もおりますし、親しかったチベット人で警察関係に就職している者もおりますから、間違った政策が発端で無用な流血や不幸な事態が起こらないように祈るばかりであります。「愛国無罪」の反日デモを楽しんでいる?低地の漢族学生達は、デモに参加しないように週末特別授業を課されている由ですが、チベットで起こったデモはその学校の授業に問題があるのですから、全寮制の学校に押し込めるのは難しいでしょうなあ。


米政府系のラジオ自由アジア(RFA)によると、北京の中央民族大学で22日、チベット族の学生約400人がチベット語保護を訴えるデモを行った。中国青海省でチベット族高校生らが民族文化保護を求めるデモを行っていることに触発されたとみられる。学生らは「民族言語の保護を」などと書かれた横断幕を掲げ、約2時間にわたり校内を行進したという。……
2010年10月23日 読売新聞 

■数は少なくとも中央民族大学には青海省出身のチベット人学生が在籍していますから、現地からの極秘?情報は刻々と伝わっていることでしょう。北京動物園の北側に立地している中央民族大学では、時々、異文化に対する無理解や誤解から不幸な事件が起こるそうで、大学周囲の市民でさえ不思議なことに?チベット文化については何も知らずサフラン色の袈裟を着けた高僧が暴行されたり、チベット人学生が飲食店で絡まれた揚句に意識不明の重態になるまで殴られたなどという実話もあります。大学構内は異文化の融和・交流の雰囲気が漂っているのですが、常に政治的な緊張感はあるようで……。
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『チベ坊』の続編のような…… 其の伍

2010-10-28 15:46:14 | チベットもの
「其の四」の記事が続きます。
……英BBCによると、24日には黄南チベット族自治州尖扎県で民族学校の生徒に教師も加勢し、総勢千人以上が教育改革の撤回を求めてデモを強行、治安部隊が出動する事態に発展した。発端は9月下旬、青海省が省内の民族学校に、チベット語と英語以外の全教科で中国語(標準語)による授業を行うよう通達したことだった。教科書も中国語で表記する徹底ぶりで、小学校も対象という。当局の中国語教育の強化の背景には、中国語が話せないため職に就けないチベット族が少なくないという現状がある。就職難はチベット族と漢族の格差をさらに広げ、それがチベット族の当局に対する不満につながっているのも事実だ。しかし、2008年3月、チベット自治区ラサで発生したチベット仏教の僧侶らによる大規模騒乱が示すように、中央政府のチベット政策に対するチベット族の不満、漢族に向けられる嫌悪感は根強い。今回の教育改革も、チベット族学生の目には「漢族文化の押しつけ」「民族同化の強要」と映っているようだ。「自由チベット」は中国当局がチベット語の“抹殺”を図っていると主張している。…… 

■日本国内にもアメリカン・スクールや韓国人学校・朝鮮学校などが存在していますが、チャイナの「民族学校」というのは飽くまでも中華人民共和国の学校ですから、少々事情は異なってはいます。しかし、少数民族の文化を尊重して保護するという建前上、野蛮で可哀想な少数民族に北京語を教えてやる!という生々しい政治の本音は巧妙に隠されているようで、漢語教育は一種の外国語授業のような扱いで所定のコマ数の中に納まっていることになっております。就職や各種事情で最初から民族学校ではない漢族向けの学校に入る少数民族の子供のおりますし、逆に高校以上のレベルになると少数民族の特別枠を狙って偽者が紛れ込むという椿事も珍しくはないようです。

■北京語が下手だとマトモな就職口が無い!という現実そのものが問題で、古い話になりますが失脚した華国鋒の後を次いで国家主席に就任した胡耀邦さんが、1980年の5月にチベットを視察した時、それまでのチベット政策の失敗を認めて謝罪する有名な演説をしました。チベット復興のために投入された「莫大な資金は何処に消えたのだ?!」と言ってはいけない事まで口走って、チベット人は感動したものの、後に失脚する遠因になったとも言われております。チベット訪問時に「政治犯の釈放」「チベット語教育の解禁」と新機軸を打ち出し、その2年後には中国憲法に基づいて「信教の自由」を改めて保証し、解放戦争と文化大革命で略奪され無残に破壊された多くの僧院の再建も始められたのでしたが、「莫大な資金」を懐に入れて我が世の春を楽しんでいたに違いない悪い奴らは大いに腹を立てて、別の事件で胡耀邦さんが失脚すると全部丸ごと御破算になったという切ない歴史がありましたなあ。

■「西部大開発」を象徴する青蔵鉄道が鳴り物入りで開通して日本のNHKなども盛んに宣伝に強力したものですが、不思議なことに西部大開発によって経済格差がどんどん広がり、開発の資本を握っている特権階級が続々と乗り込んで来て肥え太って行くばかりというチベット人にとっては袋小路に追い込まれるような状況が深刻化しているようです。中には知恵と努力と幸運?で経済的に成功したチベット人も存在しますが、先日、そんな一人のチベット人が逮捕されて財産を没収されるという事件が起きましたなあ。

■今回の学生デモの発端となったカリキュラムの全面的な改定により、チベット人はチベット語を外国語のように学ばねばならなくなるわけで、多くの由緒有る寺院を爆破・破壊し僧侶を殺害した歴史に、世界的な仏教文化を写し取って保存しているチベット語を死滅させるのか?!という重大な問題として多くのチベット人を怒らせてしまったのは大失敗でしたなあ。


……同省共産党委員会の強衛書記は21日、黄南チベット族自治州で学生代表と座談会を開き、「学生たちの願いは十分尊重する」と約束した。中国当局が反日デモ同様、教育改革に対するチベット族の抗議デモが、体制批判に転じることについて懸念している状況をうかがわせる。
2010年10月24日 産経新聞 

■どのように願いを「尊重」するのか?青海省政府の名で決定された政策をあっさりと引っ込めるわけには行かないでしょうし、かと言って更に強行したら大規模な暴動に発展する可能性が高く、政権末期の胡錦濤国家主席としては出世の糸口を「ラサ暴動」でつかんだ身としては、絶対に「チベット暴動」で失脚するわけにも行きますまいから、最後の手段としては「青海省政府の暴走」として大きなトカゲの尻尾切りを断行するしかないかも知れませんなあ。
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首相の留守には何かが起こる 其の八

2010-10-28 14:23:55 | 政治
 衆院予算委員会は13日、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件の状況を海上保安庁が撮影したビデオ映像について、那覇地検に提出を求めることを全会一致で議決した。だが、政府は当面、非公開とする方針だ。また、議決は具体的な公開方法まで含む要求にはなっておらず、ビデオが国会に提出されれば、理事会で扱いを協議する。……国会法によると、政府は基本的に要求に応じなければならない。しかし、内閣が「提出が国家の重大な利益に悪影響を及ぼす旨」の声明を出せば、提出しなくてすむ。
2010年10月13日 産経ニュース 

■既に「重大な悪影響」は出てしまっております。その原因は菅アルイミ首相がビデオ公開を躊躇して攻める好機を逸したからであります。今となっては、ビデオを公開して最大の被害を受けるのは那覇地検に圧力をかけて「釈放」させた民主党政権に他なりませんから、政権維持のために邪魔なビデオを仕舞いこんで国民が忘れてくれることを願うばかりなのでしょうなあ。


……衝突事件をめぐり、菅直人首相は18日夜、民主党の岡田克也幹事長、輿石東参院議員会長らと首相官邸で会談し、海上保安庁の巡視船が衝突時に撮影したビデオテープを国会に提出する方針を決めた。公開の時期や方法については今後与野党間で協議する見通し。……ビデオには中国漁船が故意に巡視船に衝突する様子が克明に記録されており、公開すれば国際世論は日本に有利に傾くとされる。仙谷由人官房長官は9月28日の記者会見でビデオ公開の可能性を示唆したが、その後中国側に配慮し、消極姿勢に転じていた。
2010年10月18日 産経ニュース 

■「日本が一方的に悪い!」と居丈高に決め付けて学生にデモまでやらせているチャイナが事件の記録を「公開するな!」と言っているのは辻褄が合いませんが、一方的に押し捲られた日本側がそれに同調して「配慮」しているというのはメチャクチャな話であります。『週刊新潮』10月21日号の特集記事「尖閣ビデオに怒髪天の国辱シーン」で、最も重大な場面は活字になって紹介されておりますし、ネット・ニュースの中にもビデオの概要が出ているのですから、この期に及んでビデオを出し渋るのは偏に「北京政府が怒るから」という卑屈な理由によるのでしょうなあ。


中井洽衆院予算委員長は27日午後、国会内で、尖閣諸島沖の中国船衝突事件で、海上保安庁が撮影したビデオ映像を横路孝弘衆院議長から受けとった。衆院予算委は午後に理事懇談会を開き、取り扱いを協議する。横路議長は同日午前、政府からビデオの提出を受けていた。横路氏はビデオを渡すにあたり、那覇地検からの要望として「配慮が必要なので、見る方の範囲を含めて慎重に扱ってほしい」と伝えた。これに対し、中井氏は「気をつけて対応します」と応じた。
2010年10月27日 産経ニュース 

■どうして「配慮が必要」なのでしょう?よほど正視に堪えない残酷な場面が含まれているのか?はたまた子供達に悪影響を与える猥褻画面が散在しているのでしょうか?そういう下世話な興味と期待がどんどん膨らんでしまう取り扱い方ですなあ。


自民党は28日午前……政府が国会に提出したビデオ映像は編集され不十分だとして、映像全編の提出を衆院法務委員会で求める方針を決めた。佐藤勉国対委員長代理が記者会見で明らかにした。中国人船長の釈放を判断したとされる那覇地検幹部の国会招致も法務委で求める。……ビデオ映像は、約6分間とされる。自民党国対幹部は「海上保安庁が撮影した映像は約2時間あるという。誰が編集したかも分からず、改竄された可能性もある」と述べた。……
2010年10月28日 産経新聞 

■どうして「6分間」に編集しなければならないのか?しかもオリジナル映像の95%を切り捨てた記録なのに「配慮」だの「慎重に」だのと不発弾のような扱いをしているのも解せません。そもそも、記録映像は菅アルイミ首相が国連会場に持参して「証拠の記録映像を持参した」という一言の切り札にすべき武器だったはずで、これから国内向けに何処かでこそこそと隠れて恥ずかしいビデオでも観るように奇怪な限定付きで公開しても、単に公開したという空疎な大義名分が偽造されるだけでありましょう。


……海保が撮影したビデオ映像は、漁船に衝突された巡視船「よなくに」(1349トン)と「みずき」(197トン)の船首付近から撮影されたもの。……漁船はよなくにの左後方に衝突した後、漁船の左前方を並走していたみずきに幅寄せするように接近した末、左にかじを切って衝突している。漁船がみずきと並走していた際の航行速度は約10ノットだったとみられ、漁船はその後、約12~13ノットに速度を上げてみずきに近づき、「体当たり」しているという。
漁船の最高速度は通常20ノット程度といい、逃走を図ったにしてはやや低速だった。衝突を避ける場合は減速したり離れたりするはずだが、逆に速度を上げて接近しており、「故意の衝突」を裏付けている。……海保に公務執行妨害容疑で逮捕された漁船の中国人船長は衝突前、酒を飲んでいたとみられる。捜査関係者は「海保職員が船長を連行する際、酒臭かった」と証言している。那覇地検は日中関係を考慮し、勾留期限の4日前に船長を処分保留のまま釈放した。すでに釈放から1カ月が経過しているが、まだ処分を出していない。
2010年10月28日 産経ニュース 

■以上の記事は「27日に分かった」との報道になっているのですが、別のメディアからはもっと早くもっと詳細な内容が漏れ出ていましたぞ。

首相の留守には何かが起こる 其の七

2010-10-28 14:23:14 | 政治
 ■いよいよ始まった事業仕分けの第三弾ではありますが、これまでに法的拘束力も無い単なる宣伝用の見世物でしかない事がバレてしまっているので、自慢のファッションで身を固めた蓮舫大臣が尤もらしく「特別会計を丸裸にする!」と叫んでみても、国民の視線は列島上空の寒気団の如くに冷ややかなものでありましょう。南は豪雨の後に台風が接近、北では大雪と1月前までの狂ったような猛暑が現実のものだったのか?と我が身を抓って確かめたくなるような気象の激変ぶりは、政権交代の猛暑のような熱気が冷めてマニフェストの鍍金も剥がれた政権与党の民主党によく似ているような……。

■かつて村山内閣という奇怪な政権が出現した時に、神戸の大震災とオウム真理教による地下鉄サリン事件が続け様に起こったことが、最近の菅アルイミ政権の迷走ぶりを見ていると不思議に思い出されるのであります。得体の知れない自信に満ち溢れている仙谷ノーコメント官房長官や不思議なくらいに余裕綽々でニヤニヤしながら大臣席に並んでいる素人集団の姿からは政治の重みも責任感もまったく伝わって来ないのは、あの自社連立政権という与党になりたいだけの目的で生み出された野合内閣とまったく同じ意識を共有しているからではないのでしょうか?今の民主党を一皮向けば、かつての自社連立内閣よりもバラバラで前後左右の距離が大き過ぎて正体が分かりませんぞ。

■長かった猛暑の後に巨大な寒気団が南下し、大勢力の台風が北上して来る時に列島各地で不気味に目立った地震が頻発しているのが気になって仕方がない今日この頃なのでありますが、尖閣衝突事件の後始末を着けずにうやむやのまま先送りしようとする菅アルイミ政権は自らが追い詰められている現実を直視しようとはせずに、自民党と公明党の要望を丸呑みする裏取引で当面は政権が維持出来そうだと大いなる勘違いをしているとか……。


……漁船衝突事件で、中国側が打診してきた「領有権」問題の棚上げ論は中国の常套手段である。……棚上げ論は中国のかつての最高実力者、小平氏が提唱していた。1978年に来日した際、尖閣諸島の「領有権」について「この問題は後の世代の知恵に任せて解決しよう」と表明。「存在しない」はずの領土問題を強引に国際問題化させ、経済的な利益の分配をちらつかせながら、やがて軍事支配を強める手法だ。これを実践したのが南沙諸島だ。中国は1988年のベトナムとの交戦を経て諸島の一部の実効支配を強めると、1995年には当時の銭其シン外相が、氏の路線を踏まえて問題の「棚上げ」化を推進。2005年にベトナム、フィリピンとの海底資源の共同探査で合意し巧妙に主権奪取へと動いた。今や中国は南シナ海を自国の領海と位置付けている。…… 

■長らく日本の政界では「外交は票にならない」と言われ続けておりましたから、民主選挙を通して意志を示す有権者が外交問題に興味を持たず内向きの平和を貪っていた責任は重いのですが、情報を独占して政治家にも国民にも真実を伝えずに奇妙なエリート意識に凝り固まった外務官僚にはもっと大きな責任がありましょうなあ。平和憲法にしがみ付いてさえいれば軍事や安全保障の問題に頭を悩ませる必要はないと国民も政治家も外務官僚も怠惰な時を過ごして来たツケをいよいよ支払わねばならない状況になったのかも知れません。


軍事力を背景にした中国の海洋権益への意欲は強まるばかりで、18日に閉幕した中国共産党第17期中央委員会第5回総会で採択されたコミュニケでも、「国防・軍の近代化を強化し、情報化時代の局地戦に打ち勝つ能力を核心とし、多様化した軍事的任務を完遂する能力向上」を目指す方針を盛り込んだ。菅直人首相は、「日中関係は戦略的互恵関係の原点に戻りつつある」と述べ、関係回復に自信を示す。だが、交渉が中断している東シナ海のガス田共同開発でも、「東シナ海の実効支配を強めるのが中国の本当の狙い」(外務省幹部)とされている。「当面の問題を棚上げしておけば、いずれ日本は妥協する」と見越したような中国の思惑に乗せられて関係改善を急ぐのか、それとも断固として主権にこだわるのか。日本外交の岐路が訪れようとしている。
2010年10月21日 産経ニュース 

■臨時国会で取り上げられたのは「那覇地検」「政治とカネ」ばかりで、ガス田問題も尖閣防衛もまったく素通りでしたなあ。少なくとも決算委員会で防衛予算の見直しを絡めて東シナ海の安全保障を取り上げて実のある討論をして欲しかったのですが、「八百長国会」などと陰口を叩かれるようでは喧嘩の芝居ぐらいしか期待できないのでしょうなあ。既に外交的には宝の持ち腐れになってしまった海上保安庁が命懸けで撮影した証拠ビデオに関する議論も、あまり真剣みのあるものではなかったようですが……。