旅限無(りょげむ)

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魚雷の後は悪口 其の壱

2010-05-26 16:16:05 | 外交・情勢(アジア)
■黄海で過去3回仕掛けた銃撃戦の成績が2敗1分で、しかも引き分けになった1回は時の大統領から「撃たれても(犠牲者が出るまで)反撃するな!」と何処かの自衛隊と同じような命令が出ていたからだったとかで、執念深く鮮やかな1勝を上げる機会を待っていた北の将軍様は、三男坊に権力を譲り渡す時期も近いし、上海万博でお祭り気分?のチャイナに出向いて「祝い酒」のお裾分けをちょっと多めにネダッてみたら、素気無く断られてご立腹……日米関係は基地問題でギクシャクしているし欧州は財政問題で蜂の巣を突いたような大騒ぎ、米国は内政とイランの核問題で手一杯……となれば、ちょっと兄貴分のチャイナも困らせて本命の米国にも驚いて貰えれば好都合だと緻密な恫喝計算をしたのかも?
 
■それにしましても、海上戦闘では大人と子供、プロと素人、あるいは最新ハイテク製品VS骨董品のような様相を呈していながら、たとえ発射されたのが人間魚雷だったかどうかは別にして、ローテク・アナログ潜水艦の接近を許して魚雷を発射させてしまった韓国海軍側には、何か致命的な欠陥があったのではないか?との指摘が軍事専門家筋から出ているそうですが、潜水艦だけは?世界有数のレベルに達していると言われている日本の自衛隊は、怠り無く調査研究に励んで欲しいものですなあ。


韓国政府は24日、哨戒艦沈没事件に関し北朝鮮への対応措置を発表したが、これまで大統領や国防相ら首脳が「断固たる措置」「北には必ず相応の代価を支払わせる」と強調してきた割には強硬策は控えたかたちだ。……軍事的な面では「今後、武力侵犯に対しては即刻自衛権を発動する」とし“報復攻撃”は今後の北朝鮮の出方次第とした。南北協力事業の開城工業団地についても中断・閉鎖は今後に持ち越した。……“軍事報復”を行った場合、北朝鮮との一定の戦争状況を覚悟しなければならないことや、韓国が置かれた経済、外交など内外情勢から簡単には踏み切れないからだ。……開城工業団地はもともと韓国側の投資・開発で始まり、韓国企業が多数関係している。閉鎖の場合、韓国側の被害が大きい。

■太陽政策を進めた時期は、韓国にとって「失われた10年」になるのかどうかの瀬戸際になっているのかも知れませんが、莫大な援助をした韓国側よりも、莫大な援助で生き延びて来た北朝鮮側の方が遥かに事態は深刻でありましょう。


韓国政府にとって頭が痛いのは、国内世論が対北強硬論で必ずしも一致していないことだ。野党や親北・反政府勢力は事件の背景として「李明博政権の対北政策の失敗」を主張。「対北融和政策を放棄し、北を怒らせ追いつめた李政権が悪い」などと北朝鮮を擁護する声が結構、聞かれる。……北朝鮮に対する「軍事的対応」について世論調査では、59%が反対している。国民は依然、平和志向が強く“覚悟”は見られない。北朝鮮はその足下を見ながら「全面戦の脅威」で韓国を牽制している。
2010年5月24日 産経ニュース

■韓国に平和志向が広まったのは北の謀略によるものだとの説があるようですが、東西ドイツが統一された後の苦境を見れば、太陽政策は安上がりだとの計算も成り立つわけで、統一よりも経済成長に集中したいとの民意が強いのではないでしょうか?本気で停戦中の朝鮮戦争を再開したところで人的犠牲と経済的損失は避けられず、仮に戦争に勝ったところでアノ北朝鮮を合併してからの苦労を考えれば、周辺諸国の協力で事態の収拾を図りたいところでありましょう。

鳩山首相の独り言 其の参拾弐

2010-05-21 09:45:14 | 政治
■鳩山由紀夫首相は20日の夜、韓国政府が哨戒艦沈没を北朝鮮の魚雷攻撃によるものと断定したことを受けて、妙に興奮した口調でまたまた「独り言」を今回は随分と長く披露したのでした。

--韓国の哨戒艦沈没事件に関し、北朝鮮の攻撃が原因だと断定したことを受けて、韓国は国連安全保障理事会で制裁決議案を提起する方針だ。その場合は日本も協調する考えか。また、6カ国協議の見通しについてはどのように考えるか

「はい。……大変これは遺憾なことで強く北朝鮮に対して非難をいたします。当然のことだと思います。……韓国の立場を支持をする。すなわち、もし韓国が安保理に決議を求めるということであれば、ある意味で日本として、先頭を切って走るべきだと、そのように考えておりまして、強くその方向で努力をしたいと思います」

■「先頭を切って走る」のは結構ですが、日本の後に米国が付いて来てくれるかどうか?少なくとも鳩山サセテイタダク内閣と歩調を合わせて「走って」くれるとは思えないのですが、首相は自分が付けた傷など無かったかのように、日米同盟は前政権の時代と何も変わっていないと思い込んでいるのではないでしょうかな?大昔の鎌倉武士でもあるまいし、単騎先駆けは非常に危険な行動だとよくよく落ち着いて考えるべきでしょうなあ。


--中国は冷静な対応を求めているが、中国政府に何らかの対応をする考えはあるか

「……私は、事実は事実としてこれは認めるべきでありますので、その中で、やはりこういった信じられないような行為というものが2度と起きないようにしていくために、私は国際的な場裏の中で、しっかりと訴えていく必要があると。中国に対してもそのように臨みます」

■北朝鮮は韓国に対してはラングーン爆破テロや大韓航空機爆破などの「信じられない行為」を仕掛け、日本には拉致工作を仕掛けて来た前科があります。韓国は10年間の「太陽政策」に失敗して条件闘争を始めておりますが、日本は鳩山サセテイタダク内閣になってから拉致犯罪被害者家族の皆さんが心を痛めるほど何もしない姿勢が目立っております。拉致・核・ミサイルの三点セットを放り出しておいて、魚雷攻撃に対しては国際的な場にしゃしゃり出て何をしようと言うのでしょうなあ?


--……移設問題に関して、関係閣僚会議を行ったが、どういった話し合いが行われたか

「うん。これは中身は私がどのようなコメントを出すかということの議論。それからやはり日本としてしっかりこういった状況であるので、政府としても覚悟を持って臨もうではないかという意思統一はしました」

■「こういった状況」を作ったのは誰だったのか?他に共犯者や責任者が居たのか?いつの間にやら個人的な「思い」が消えて連帯責任みたいな「覚悟」「意思統一」を前面に出されても、閣僚は鼻白むでしょうし国民は耳を貸さないでしょう。


--普天間問題に関して、首相は政府の方針を5月28日か31日に国民に発信したいと民主党の石井一選対委員長に伝えたということだが……

「これは5月の末に向けて、私は今、最終的な努力を政府の中で行っています。当然言うまでもありませんが、それは日本国民のみなさんに対して、申し上げるべきことでございます。したがいまして、すべてをトータルしながら、私の考え方を国民のみなさんに申し上げるということでございます」

■「最終的な努力」というのは、自民党時代に決まった「現行案」をどんなに僅かであろうとも「変更」したと言い張れる仕掛けを模索しているということかも知れません。それが鳩山流の「5月末決着」の正体なのでしょうが、「お騒がせしましたが、元の木阿弥となりました」と頭を下げるしか説明のし様は無いと思うのですが……。

鳩山首相の独り言 其の参拾壱

2010-05-21 09:43:38 | 政治
■夏の参議院選挙までにどこまで内閣支持率下がるのか分からないのに、民主党内は春の海の如く終日(ひねもす)のたりのたりの雰囲気が漂っているようです。選挙の鬼になって全国を行脚して獅子奮迅の活躍をしていたはずのクラッシャー小沢も、ずらりとタレント・有名人候補を並べた後は「参議院単独過半数!」の大風呂敷は畳んで何処かに仕舞い込んでしまったようですし、自分の裏金疑惑がくすぶり続けている最中に北海道で日教組からの闇献金を受けて当選していた女性議員がとうとう辞職を決意する話が決まったそうです。この議員はミニスカート姿をトレードマークにしているわけではないので、わざと転倒して車椅子やら松葉杖やらで同情を買うパフォーマンスも出来ないし、党代表を見習って「私はまったく知らなかった」と駄々っ子みたいな開き直りを見せる無神経さも持ち合せていなかったようですなあ。

鳩山由紀夫首相は20日、国際宇宙ステーション(ISS)から帰還した宇宙飛行士の山崎直子さんの表敬を受けた。山崎さんが「応援いただき、無事に任務を終えることができた」と報告すると、首相は「ミッション(任務)の達成おめでとう」とねぎらった。有人宇宙船を飛ばしたのは米国、ロシア、中国だけであることに話題が及ぶと、「日本は(有人宇宙船の開発を)やらないのか?」と人ごとのように質問し、自分が宇宙開発戦略本部本部長を務めていることをすっかりお忘れのようだった。
2010年5月20日 産経ニュース

■一国の首相というものを「ある意味で」まったく理解していない鳩山サセテイタダク首相は、自分が責任者になっている事の意味も分かっていないのであります。おそらく党の代表という自分の立場も分かっていないのでは?「宇宙開発戦略本部本部長」という肩書きも、この人にくっ付くと軽々しい物に変じて無重力状態になるのですから、宮崎県で発生した口蹄疫の対策本部長にもなってしまいましたから、さぞや現地の皆さんは落胆していることでありましょう。


鳩山由紀夫首相は18日朝、宮崎県で過去最悪の被害が拡大している口蹄疫について、「一番大事なことは政府として(対策に)万全を期し、これ以上、感染を広げず、農家に『大丈夫だ。経済、経営のことはしっかり政府がやるから』という思いを理解をしていただくことだ」と述べた。また、「感染経路を十分に把握することが難しい。生き物を扱う対策だから、非常に難しい」と対策の難しさを強調。記者団からの「政府や県の対応に問題点はなかったか」との問いには、「すでにこれまでも、政府で対応はしてきた」と反論した。
2010年5月18日 産経ニュース

■発言の順番を入れ替えますと、「これまでの政府の対応は大丈夫」だけど「対策は難しい」、でも「しっかり政府がやるから大丈夫」という御馴染みの支離滅裂な妄想「思い」を吐き散らしていることが分かります。大規模な殺処分とワクチン投与が決定されたものの、現場では埋める場所も作業に熟達した人材もまったく足りなくて、地元の農家は不安ばかり募らせている現実を、対策本部長を兼務する首相はまったく分かっていないようです。きっと間もなく「どうして(殺処分を)やらないのでしょうねえ?」などと他人事みたいなコメントが出て来るのでしょうなあ。

■魚雷攻撃を仕掛けておいてシラを切り続ける北朝鮮という困った隣人からも、鳩山サセテイタダク首相の政治手腕に関してほぼ正確な分析が発表されております。同情されているのか?バカにされているのか?


 北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は(4月)28日、米軍普天間飛行場移設問題をめぐり、鳩山政権が関係自治体の反対を無視して「力で押し切る方法を選択すれば、政権の運命が危うくなる可能性もある」とする論評を掲載した。北朝鮮メディアは、普天間問題をめぐる日米の摩擦をこれまでも取り上げてきたが、政権の行方に懐疑的な見方を示したのは初めて。……「米国は日本を信じておらず(普天間問題で)日米関係の亀裂はさらに深まるだろう」と指摘した。
2010年4月28日 産経ニュース

■この論評が発表されたのは黄海で魚雷攻撃を仕掛けた後なのですが、首相の「国外、最低でも県外」という発言が日米同盟の弱体化を予感させ、同時に日本の外交力が著しく低下して軍事バランスの空白が生じていると北朝鮮側に思わせてしまった可能性も否めますまい。ちょっと勉強してやっと「抑止力」という概念を少しばかり理解した鳩山サセテイタダク首相は、にわかに沖縄の軍事的重要性を初めて知った!感動と興奮が隠せないようです。こういう軽率なお調子者が大きな戦争の引き金を引いたりすることが歴史には数多く記録されているのですが……。


政治主導=元の木阿弥 其の六

2010-05-20 15:23:22 | 政治
■「朝令暮改」という言葉は権力を握る政府などを批判する時に使用すべきものですから、愛用する言論人やマスコミ人も多いのですが、報道機関が誤報を流してお詫び訂正をする場合にも使えるかも知れません。それにしましても「民主党幹部」とは何者ぞ?

「怒りに震えている、本当に。あり得るわけがない。(外遊に)行った人が職員含めて10名くらいいるのだから、そういう人たちに聞いても分かるし」(赤松広隆農水相)
赤松大臣の外遊を巡っては、19日夜、民主党の複数の幹部が、長期出張していたことは問題だという考えを示し、この間に大臣がゴルフをしていたと、明らかにしていました。これについて赤松大臣は20日朝、このように全面的に否定した上、民主党幹部も、20日朝になって、大臣がゴルフをしていたという情報は「伝聞だった」などと発言し、具体的な根拠は無かったことを明らかにしました。JNNでは、20日朝のニュースで、19日夜の民主党幹部の発言を報じましたが、発言に対する裏付け取材が不十分でした。お詫び致します。
5月20日 TBS

■こういう場合は「伝聞」とは言わず「怪情報」と言うのではないでしょうか?いろいろと問題の多いTBSテレビですから、この種の勇み足も珍しくはないのですが、悪質な噂を公共の電波に乗せてしまったのは拙かったですなあ。まあ、今、最も叩き易くて視聴率が取れそうな敵役は赤松農水相であるのは間違いないのですが……。
 
 
平野博文官房長官は20日午前の記者会見で、宮崎県内で家畜の伝染病、口蹄疫の被害が拡大する大型連休中に、赤松広隆農林水産相が外遊先でゴルフをしていたとの一部報道について「事実は確認して報道していただきたい」と述べ、事実関係を否定した。
2010年5月20日 産経新聞

■平野官房長官も徳之島で「丸呑み」密談をした帰りに宮崎県庁に立ち寄って、関係者から「何しに来たんだ?!」と責められた口ですから、大臣の初動を批判するわけには行かないでしょうし、火を噴いて墜落している鳩山内閣の番頭役としても、小さな火種をこまめに消して歩く役目を果たさねばなりますまいなあ。

■政治家のゴルフと言えば、2001年2月にハワイ沖で起きた愛媛県立宇和島水産高等学校所属の漁業練習船えひめ丸(499トン)が米海軍のロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦グリーンビルに衝突されて沈没し、9名が死亡した悲惨な事故の第一報を聞いた当時の森喜朗首相が運悪く?大好きなゴルフをしていてプレーを続行してしまったことを思い出します。欧米メディアも面白おかしく連日のように報道したものですから、海外の評判を気にする日本のメディアは輪を掛けて大きく取り上げまして、とうとう退陣問題に発展してしまったという悲喜劇がありました。

■国家の一大事が起こっている時にエライ人がゴルフを楽しんでいるという図は、ゴルフ好きの多い日本では注目を集め易いネタなのでありましょうが、仮に赤松大臣が外遊中にゴルフをしていたとしても、外交日程をきちんと消化して一定の成果を上げていれば大した問題ではないような気もします。勿論、外遊を直前にでも中止して陣頭指揮を執るとか、緊急帰国して一言自分の油断を詫びてさっさと対応に尽力していれば立派な大臣だと褒められもしたのでしょうが……。

■出発直前まで、誰が言ったのか知りませんが驚くほど楽観的な話ばかりが大臣の回りに満ちていたそうですから、外遊自体を責めても仕方がありますまい。長期の外遊ともなれば、空き時間に英気を養うことも大切でしょうし、会議や交渉の場で立派な仕事をして下されば文句はありません。但し、外遊中に口蹄疫に関する情報をどれだけ収集していたのか?それは確認しておくべきでしょうなあ。首相のように「まったく知りませんでした」というわけでもないでしょうが……。

 
自民党の浜田靖一国会対策筆頭副委員長は20日午前の記者会見で、家畜伝染病「口蹄疫」の被害拡大をめぐる赤松農相に対する不信任決議案について、「きょうの(衆院本会議での)答弁などを勘案しながら考えていく。当然検討に値する」と述べ、国会への提出を目指す考えを明らかにした。また、社民党の重野幹事長は20日午前の記者会見で、「口蹄疫」の被害拡大について、「初動対応に遅れはあったんだろう。農水省の初動対策、対応に不十分さがあったということになれば、責任はとらないといけない」と述べ、赤松農相の責任に言及した。
5月20日 読売新聞

■赤松大臣自身が「反省すべき事は無い!」と言い張っているのに、連立与党から責任を問う声が上がるところが鳩山内閣らしいところであります。社会党が分裂した頃から燻っていた怨念に火が付いたとも言えましょうが、社民党という政党は相変わらず子ども染みたことをするようであります。普天間基地移設問題を混乱させた元凶として名指しされると夏の参議院選挙は苦しくなりますから、ここで恨み骨髄の元同僚を血祭りに上げて批判の矛先を少しでも変えようとでも思ったのかも知れませんが、何とも姑息で無責任な話であります。首相が重石にならない連立内閣というものは、斯くも見苦しく共食いでも何でもするものなのですなあ。

■ゴルフ疑惑ぐらいで「怒りに震えている」暇があったら、赤松大臣にはもっと働いて頂きたいものであります。対策本部長から副部長に格下げされてしまったので手持ち無沙汰なのかも知れませんが……。
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政治主導=元の木阿弥 其の伍

2010-05-20 14:27:18 | 政治
高速道路の新料金制度を巡り、前原誠司国土交通相は18日の閣議後会見で、当初予定していた6月の導入を断念する考えを示した。実質値上げに小沢一郎・民主党幹事長が異論をはさみ、新料金導入の前提となる道路財政特別措置法改正案の審議入りのめどが立たないため。当面は現状の「休日上限1000円」などの割引が継続される見通し。……新料金導入は参院選後に先送りされる可能性が高い。

■「高速道路無料化」もしろ!道路建設もしろ!とクラッシャー小沢が無理難題を国交省に押し付けて、御本人は国民との約束を守ったんだと御満悦なのでしょうが、その前に国民に約束した「財源はいくらでもある」の方はすっかり忘れているようです。現在の休日割引制度でも税金からの補填が必要なのですから、民主党は国家戦略局を作って開店休業状態にして財政危機を忘れたことにしてバラマキ選挙を強行しようとしているようです。


政府は、高速料金の割引財源の一部を道路建設に充てるための道路財政特措法改正案を今国会で審議し、「普通車上限2000円」などの新料金制度を6月から導入する計画だった。建設を求める党への配慮からだが、割引財源が減るため、近距離ドライバーを中心に事実上の値上げとなる。参院選への影響を懸念した小沢幹事長が見直しを求め、前原国交相が反論する事態に発展していた。……小沢幹事長は18日、山口市での会見で「(6月導入断念は)国民の気持ちも一緒だ。理解は得られる」と述べた。
5月18日 毎日新聞

■鳩山サセテイタダク首相の「思い」とクラッシャー小沢の「国民の気持ち」は要注意で、どちらも危険な思い込みである場合と甘言を得意とする茶坊主からの耳打ち話である場合があるようです。改正案が先送りされたところで、「高速道路無料化」の約束はどうなるのか?道路建設の財源はどうするのか?「国民の気持ち」としては、そちらの方が気になるところなのですが……。

■こうして表面上は前政権時代と何も変わらず、何事もなかったかのように「元の木阿弥」となって行くのですが、この間の内外で起こった波風と混乱は確実に将来に大きな影響を及ぼす傷を残しているのではないでしょうか?実に罪深いことであります。
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政治主導=元の木阿弥 其の四

2010-05-20 14:26:55 | 政治
……「『部隊移転』は厳しい。『訓練移転』を全国に呼びかけるしかない」「やはり普天間が優先だ。訓練は二の次だ」。首相周辺は18日、残された選択肢がほとんどない窮状を周囲に訴えた。政府は今後、5月末に向け、徳之島を含む全国への訓練分散などとあわせ、埋め立て方式を念頭に米側の理解を求めていく考えだ。 ……
5月19日 読売新聞

■ほんの少しでも自民党が残した遺産に傷を付けるか色を変えないと面子が潰れる!とケツカッチンの首相周辺は右往左往しているようです。そんな物のために沖縄県民や徳之島の住民が踊らされていたのなら、これは政治とは呼べない悪質な茶番劇ですなあ。最初から辺野古案を踏襲しておいて、新政権として「その後」をじっくりと米国と交渉し始めておけば日本の政治に新しい局面を開けたかも知れないのに、「思い」ならぬ「思い込み」に拘り続ける首相に政府も国民も振り回されてしまったようです。江戸時代なら殿、御乱心!ということで家臣たちが「押し込め」にしてしまったのでしょうが……。民主党内の忠臣は、まったく逆の行動に出ているようです。
 
 
……平野博文官房長官が16日に鹿児島県・徳之島の移設賛成派の住民と鹿児島市で会談した際、徳之島3町の借金(公債)の棒引きなど、住民側が示した移設受け入れの7条件にすべて応じる意向を示したことが19日、明らかになった。……平野氏は移設賛成派の住民14人と会談し、移設受け入れに向けた7項目の要望を記した紙を受け取った。一通り目を通した平野氏は「移設と振興策は別だが、7項目はすべてのむ」と言い切った。

■移設と振興策は別?「セット」の間違いではないでしょうかな?選挙で選ばれた町長や県知事を飛び越えて賛成派住民と直接交渉する官房長官も異様ですが、指示を出している首相は引退した元議員の徳田虎雄さんに政治工作を頼みに行ったのですから、形振り構っていられない窮状を鳩山・平野コンビは天下に喧伝して歩いているようなものです。


ペーパーに記された7項目は
(1)徳之島3町合計で約250億円の借金(公債)棒引き
(2)航路・航空運賃を沖縄並みに抑制
(3)燃料価格を沖縄・本土並みに引き下げ
(4)沖縄県が対象の黒糖製造工場への交付金を鹿児島県にも適用
(5)医療・福祉・経済特区の新設(健康保険税の免除)
(6)奄美群島振興開発特別措置法の所管省庁を国土交通省から内閣府へ移す
(7)看護学校、専門学校の設置--だった。

■まだ米軍が承諾していない徳之島への移設案を、こういうやり方で進めてしまって大丈夫なのか?(5)や(7)などは医療法人を経営している徳田虎雄さんへの気配りのようにも見えなくもありませんが、基地の移設を受け入れて長寿と健康を売り物にした島として発展しようとする計画のようですが、これらを丸呑みする予算が上積みされたら在日米軍関連の総予算が増えてしまうのではないでしょうか?沖縄の基地問題を解決するという大目標に逆行して、基地問題を県境を越えて拡散させて得られるのは、ちっぽけな民主党政権の面子だけかも?


平野氏は会談で、奄美群島向けの10年度政府予算(奄美群島振興開発事業予算)が前年度比29%の大幅減となったことを謝罪、来年度予算編成での対応を約束した。徳之島へのドクターヘリ配備にも言及し、今後、徳之島の地元3町長や伊藤祐一郎県知事と振興策を詰める意向も示したという。なりふり構わぬ平野氏の姿勢には、徳之島にこだわる政府側の焦りがにじむ。

■賛成派住民→3町長→県知事という構図を民主党では民主的と呼ぶのでしょうか?「移設と振興策は別」と言いながら、露骨にカネの話を水戸黄門の印籠のように振り翳してなし崩しに話をまとめるのなら、自民党時代を懐かしむ声が増えそうです。元々、自民党支持者が多かったという徳之島ですから、完全に頭越しで無視された反対派の人々は、こういうやり方を恨むでしょうなあ。賛成派の人達も、日米交渉が決裂してしまったら「丸呑み」話が吹き飛ぶわけですから、こちら側からも恨みを買いそうです。


……会談の最後、平野氏は会談内容について出席者に固く口止めし、住民側は記者団に平野氏から振興策の話はなかったと口をそろえた。一方、出席者の一人は会談後、平野氏の「丸のみ」発言を徳之島の町長らに伝達。「微妙な変化が島にも出てきた」と賛成論の広がりに期待するが、3町長が交渉のテーブルに着く見通しは立っていない。
5月20日 毎日新聞

■「固く口止め」した直後に御注進に及ぶ人間がいることを官房長官は期待していたのかも知れませんが、こういう田舎芝居を打っていると思わぬ方向から情報管理の甘さを危ぶむ声が出て来るかも知れません。

政治主導=元の木阿弥 其の参

2010-05-20 14:26:28 | 政治
■税収が大きく落ち込み、特別会計を含んだ予算の抜本的な組み替えに失敗して恐ろしい財源不足に陥っているというのに、選挙用マニフェストに従うためだと史上最大の赤字国債を発行した鳩山サセテイタダク内閣でありますが、「子ども手当て」の目的と中身が訳の分からない理屈で迷走中のようですし、「高速道路無料化」も政府と党の内紛で又裂き状態になった後に空中分解し、とうとう雨散霧消してしまうようです。それでもクラッシャー小沢が全国行脚して約束して歩いた「農家への戸別所得補償」だけは絶対に額面通りに実現されるかと思っていたら、宮崎県の畜産農家が口蹄疫で壊滅的な打撃を受けて、政府は1箇月遅れで「万全な対応」を執っているのだそうですが、地元の怒りは収まるどころか火に油を注いだも同然のようであります。

■マニフェストには「主要穀物等では完全自給をめざす」と書かれてはいますし、「畜産・酪農業、漁業に対しても、農業の仕組みを基本として、所得補償制度を導入する」とも書かれています。仮に殺処分された家畜分の「所得補償」が実施されても在庫一掃後には空っぽの畜舎が残るだけだと被害を受けた畜産農家は絶望感に苛まれているとか……。マニフェストの第31項に「戸別所得補償制度で農山漁村を再生する」とあるところからも、余程、誰かさんはこの制度に自信を持っていたのでしょうが、宮崎県の畜産業を本当に「再生」出来るかどうかで、民主党の評価は決まりそうです。

■地方分権の推進とは言っても、今回のような未曾有の災厄に襲われたら政府が迅速に対応しなければなりません。そして、地方分権を進める前提となっているのが、政府は外交・安全保障政策に専念するという原則だったはずなのです。自分の無知蒙昧ぶりを世界中に知らしめただけの沖縄基地移設問題は、計らずも今の政府に政権担当能力がまったく無かったことを証明してしまったのであります。


米軍普天間飛行場移設問題は結局、2006年の日米合意に基づく元の計画に大筋戻る方向となった。日本の安全保障の観点よりも、「自民党政権時代の否定」に固執し続けたあげく、最終的には米軍の抑止力維持や技術面での条件を満たす現行計画に戻るしかなかった。だが、沖縄県民の反基地感情は再燃しており、地元が容易に受け入れるかどうかは不透明だ。鳩山政権の場当たり的対応が招いた代償は大きい。

■自分の発言に関して「決して場当たり的ではない」と絵に描いたような場当たり的な釈明をした鳩山サセテイタダク首相には「腹案」があったはずでしたが、単に自民党が残した日米外交の遺産を帳消しにしてしまえば何かが起こるんじゃないかなあ、と何事につけ「まったく知らない」大金持ちの世襲政治家がふと思い付いたままを口走ってしまったばかりに、ぐるりと回って「元の木阿弥」となってしまいそうです。しかし、これで日米関係が「元の鞘」に収まるわけではないでしょうし、総選挙前には「国外、最低でも県外!」と焚き付けられたのにもかかわらず、地元の市長選挙の結果は無視されてしまった沖縄県民の怒りと不信感は、鳩山サセテイタダク首相が地元に御百度参りして歩いても決して消えないほど根深いものになっているでしょう。


「悪い情報ばかり入ってくる」。政府筋は18日、日米間の外務、防衛当局による実務者協議の現状に、弱音を吐いた。17、18の両日は課長級が開かれ、20日には審議官級の大詰めの日米協議が予定されている。社民党や、移設先に挙がる地元自治体の反発が強まる中、政府は米側との交渉を優先させる道を選んだ。……

■内政は「幹事長の言う通り」で、日米間の交渉は「米国政府の言う通り」というのなら、民主党の政治主導も鳩山首相が言った「対米偏重を正す」も、全部丸ごとウソだったことになります。ウソがばれると「一生懸命やっています」と奇怪な「思い」を吐き散らす悪い癖が治らない首相ですから、さぞや事務方の士気は下がっているでしょう。馬鹿馬鹿しくてやっていられない!と言いたくなるのが人情というものです。


米側は桟橋について、滑走路と海面の間に空洞ができることでテロに弱いことに加え、上空からの攻撃にも軍事施設として堪えない、と指摘。さらに、現行計画を前提とした防衛省の環境影響評価に追加の手続きも必要となるため、「どれだけ時間がかかるのか」と、工期ずれ込みへの懸念を伝えた。工期が長引くほど、普天間移設を含む在日米軍再編の行程表で掲げる2014年の目標も達成から遠ざかる。「行程表にある沖縄駐留海兵隊8000人のグアム移転も停滞する」(日米関係筋)……。

■首相は「自然への冒涜」が気になり、連立与党の誰かさんは公共事業としてしか移設問題を考えない。もう一つの連立弱小与党などは古臭いイデオロギー闘争の道具にしているようですから、肝腎の安全保障政策がすっぽり抜け落ちたままの「5月末決着」と「トラスト・ミー」でありました。日本国民からも米国政府からも無視されて、支持率だけは着実に急降下する中で自民党が決めた移設案に引き戻されて行く首相の目はますます虚ろになっております。


地元の名護市では、現行計画には一定の理解を示す住民はいるが、桟橋方式には一様に反対する。背景には、高度な技術が必要となる桟橋方式は、実現したとしても本土の大手ゼネコンが受注するため、地元の経済活性化にはつながりにくい事情などがあるようだ。……首相は、海面の埋め立てを伴う現行計画を「自然への冒涜(ぼうとく)」と言い切り、全面的に葬ったかにみえた。そのために、鹿児島県・徳之島などに普天間飛行場のヘリコプター部隊を移転することなどで「県外移設」の体裁を整える道を探った。これに先だち、政権内では米軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)との統合案や、シュワブ陸上部への滑走路建設案などが次々と浮上した。だが、米軍の運用面などで適用可能かどうかなど、本格的に検討した形跡はほとんどない。……

■鳩山サセテイタダク首相は「最後に会った人物」の口真似をするのだそうですから、何処かに消えてしまった「腹案」というのも、本当は空っぽの袋のようなもので、その中身は毎日のように入れ替わっていたのかも知れません。党首討論で「腹案がある!」と啖呵を切った御本人は、中身が玉石混交・支離滅裂状態であっても膨れ上がった袋を後生大事に持っていることを誇って見せただけのことだったのかも?あの選挙用のマニフェストも……。

政治主導=元の木阿弥 其の弐

2010-05-19 22:37:39 | 政治
■赤松農相の外遊までの数日間をもう少し追ってみましょう。
 
4/27 東国原知事、農林水産省で赤松農相と会談し、予算確保を要望。赤松農相はできる限り支援する意向を表明、29日に疫学の専門家チームの派遣、家畜共催の掛け金支払い条件の緩和を農業共済組合に要請。東国原知事、自民党谷垣総裁とも面会。谷垣総裁、28日の現地入りを表明。民主党高嶋幹事長とも面会。……

■東国原知事が御自身で公開しているブログには、上京したこの日には某新党の事務所などに顔を出していたという事実が書かれているそうです。忙しい農水相に会うにしても、じっくり腰を据えて半日語り合うようなわけには行きませんでしょうから、時間を有効に使っただけだったと好意的に解釈も出来ますが、宮崎県の災厄よりも国政に対する色気が勝っていたのでは?と勘繰る声が出ても仕方がないかも知れませんなあ。海のものとも山のものとも知れない出来立て新党を歴訪するより、勝手知ったるテレビ局やマスコミ各社を回って「取材制限」や「消毒の徹底」などと眦(まなじり)を決して訴えていたら、畜産宮崎の名前を高められたのでしょうが……。

 
4/28 宮崎県、豚に感染に似た症状5頭。検査を待たず豚486頭を処分(以後すべて豚は、遺伝子検査の結果を待たず殺処分=陰性の可能性もある)。70km離れたえびの市。移動制限区域を拡大。区域内7地点で消毒開始。8~10例目で処分数は計2800頭超。宮崎県、33億円の緊急補正予算と245億円の融資枠を決定。第3回口蹄疫防疫対策本部を開催。谷垣総裁、川南町のJA尾鈴を視察し、政府の初動体制を批判。えびの市、市民からの要請で道路2カ所を通行止め。日南市・串間市、防疫対策本部を設置。宮崎県、6家畜衛生保健所に現地対策本部を設置。

■華が無いキャラクターの故か話が面白くないからなのか、谷垣総裁が宮崎県を訪問した事などマスコミはほとんど取り上げず、誰も知らなかったのではないでしょうか?まあ、農業関連団体は根こそぎクラッシャー小沢の草刈場になってしまったそうですから、それを少しばかり奪還する気でちょこまかと動き回っていただけの話だとマスコミ各社は事務的に判断したのかも知れません。

 
4/29 農水省の疫学調査チームが現地調査。宮崎県、感染疑い牛2頭。農水省山田副大臣と東国原知事が宮崎県庁で意見交換し、知事は予算措置を要望。

■既に豚にも感染が広がっていた時期に、具体的な対処法も決められないまま副大臣と何となく「意見交換」をして、取り合えず「予算措置」をお願いしていたのなら、いよいよ農水省が長期の外遊に出掛けてしまう前日にしては緊迫感の無い話であった印象が拭えませんなあ。「外遊を止めて下さい!」と絶叫していたら東国原知事の株はぐっと上がったかも?

■そして、いよいよ問題の農水相が外遊に出掛けた当日となります。


4/30 民間事業者で初の豚4頭感染の疑い。1429頭を処分。12例ふくめ計4300頭。宮崎県議会の各会派代表者会議で、連休中の県議2人の待機を決定。九州知事会、国の支援を求める緊急決議。赤松農相「対策は万全」と中南米に外遊。

■連休中の「県議2人の待機」というのは、残念ながら緊迫感に欠ける決定だったのではないでしょうか?農水相は海外へ去り、県議会の大多数も予定通りに連休モードに入ってしまったのですから、県と国が喧嘩しても始まらない話になってしまったのでした。多くの当事者のうち、一体、何人が口蹄疫の恐ろしさを知っていたのでしょう?もっと心配なのは初動・対応に関して「反省すべきことは無い!」と大見得を切っておきながら対策本部長から実質的に更迭・格下げされてしまった赤松農相と、妙に淡々と本部長の席に座ってしまった鳩山サセテイタダク首相の御両人が、口蹄疫の恐ろしさや事態の深刻さを現時点でも理解しているかどうか?確信が持てないところであります。

■最悪の事態に至った時に、本部長の首相が「学べば学ぶほど……」などと取り返しの付かない自責の念に耽溺されたのでは堪ったものではありませんからなあ。こうなったら兼業農家を標的にした稲作偏重の「戸別所得保障制度」に出す予算を停止して、有力な輸出産業でもある南九州の畜産業壊滅防止政策に切り替えたら如何でしょう?莫大な設備投資をしている経営者の皆さんにとって、大規模な殺処分は非情な「派遣切り」以上の厳しい生活を強いられる恐ろしい話で、この先10年近くも「無収入」で先行投資分の借金だけは返済し続けねばならない絶望的な立場に追い詰められる方も多いでしょう。

■これでまた一つ、鳩山サセテイタダク内閣は国内国外を問わず「他山の石」とすべき恥ずかしい悪例を残すという偉業を成し遂げたのかも知れませんが、今の日本に「学べば学ぶほど……」などと夏休み明けの小学生から聞くような空疎な言葉を首相が吐いている余裕は無いのであります。先の総選挙で民主党が掲げた極端に内向きなマニフェストとは無関係に、世界のブランドを育て上げてチャイナや欧米にも堂々と高級肉として輸出していた宮崎県の畜産業が壊滅したら、本当に民主党が構想した財源無きバラマキ農政しか日本に残らないことになるかも?

政治主導=元の木阿弥 其の壱

2010-05-19 16:03:59 | 政治
■沖縄の基地移設問題も高速道路無料化も、すべては空騒ぎだけを残してぐるりと回って元に戻って落ち着きそうな気配であります。参議院選挙を前にして、一体、あの政権交代は何だったのだろう?と落ち着いて考えている間もなく、宮崎県で発生した口蹄疫の災厄はとうとう県知事が「パンデミック」という重大な言葉を使うほど深刻化してしまいました。この言葉の意味を鳩山サセテイタダク首相が正確に認識していてくれればよいのですが……。
 
自民党の石破茂政調会長は19日午前の記者会見で……赤松広隆農林水産相らが政府の対応の遅れを否定していることについて「結果責任なので、『責任がない』とは政府の人間が言うことではない。非常に見苦しい」と批判した。また、政府がワクチン使用による感染抑制を検討していることには「今、一番必要なのは、区域を定めて(全頭)殺処分を行うことだ。やらねばならないことの順番が正しくないのではないか」と述べた。
2010年5月19日 産経ニュース

■ワクチン投与は防疫ならぬ貿易問題に直結する大変な影響が出るとも言われているようですから、今の政府はそれに相応しい覚悟を持っているのか?はなはだ疑問ではありますなあ。「岡目八目」ということもありましょうし、野党という立場もありますから、こういう批判は出て来て当然。事実、自民党が政権党だった10年前に口蹄疫が発生した時の対応は、少なくとも民主党政権よりは素早く強力なものだったと「2000年の自民党政権の口蹄疫への対応と、民主党の口蹄疫への対応の比較」という経過日数を軸にして両者の比較をしたサイトは教えてくれます。同サイトから赤松農相の「反省すべきことがない」動きに関連した事項を抜き出してみたいと思いますが、農相個人の資質や責任よりもその背後に隠れている「専門家」と称される人たちの存在を忘れては行けないようです。自民党の石破さんが批判している対処法を提言している張本人でもありますからなあ。


……農林水産省は18日午後、農水相の諮問機関「食料・農業・農村政策審議会」の牛豚等疾病小委員会を開いた。追加的な感染拡大防止策として、健康な家畜へのワクチン接種や一定区域内の全頭殺処分などの是非を議論したもようだ。赤松広隆農水相は専門家の意見を重視する姿勢を示しており、小委の結論が注目される。小委は4月20日の口蹄疫発生以降、これまで3回にわたって開かれた。5月6日開催の前回会合では、感染拡大防止策に関し、厳格な消毒や農場内への出入り制限とともに、発生農場での迅速な殺処分、埋却などによる防疫措置を徹底すべきだと指摘していた。ただ、その後も口蹄疫による被害は拡大し続けており、現行の対策では不十分との指摘も出ている。
2010年5月18日 時事通信

■この報道だけでは分かりませんが、小委員会は4月20日の初会合で赤松農相に外遊に行っても大丈夫みたいだなあ、と思わせるような甘い見通しを取りまとめており、ところが農相が外遊に出掛けてみたら事態はどんどん深刻になって帰国した頃には大惨事になるのは確実な状況でありました。そこで5月6日の会合では一転して厳格な防疫措置の提言が出て来ます。これはマッチポンプと呼ぶべきかも知れませんなあ。以下は前記のサイトからの引用です。

 
4/20 宮崎県、口蹄疫感染の疑いを発表。県は防疫対策本部を設置。立ち入り検査・半径20kmの家畜の移動制限を実施。農林水産省、牛肉輸出を一時停止、口蹄疫防疫対策本部(赤松農相が本部長)を設置。「牛豚疾病小委員会」を開き、協議。半径1km圏内の検査方針を示す。緊急対策会議で半径10km2地点、半径20km2地点で車両の消毒を決定(24時間体制)。……

■ただの鼻風邪だという地元の獣医さんの見立てが間違っていたことが判明して宮崎県は「防疫対策本部」を設置して本格的に動き出し、政府も問題の「小委員会」を開いて歩調を合わせたように見えますが、実際には「地元では十分な対応を取っており、間もなく終息するだろう」などという驚くほど楽観的な見通しが示されて、せっかく設置された「口蹄疫防疫対策本部」の責任者となった赤松農相は「自分が行くと騒ぎが大きくなる」だの「感染はほぼ1箇所に抑え込めている」だのと、見て来たような楽観論を公言していたとか……。

■「緊急対策会議」が決定した車両の消毒地点は少な過ぎて何の効果も無かったことがすぐに判明します。
 
 
4/21 川南町、防疫対策本部を設置。殺処分の穴から地下水で断念。宮崎県、新たに6頭感染疑い。続けて、疑い3例目。農家周辺の通行制限・消毒。民主党3議員が東国原知事を訪問、県の対応の説明を受ける。「政務三役に伝える」と返答。続けて、川南町訪問、町長から予算措置の要望。自民党議員、県庁訪問。

■この時に現地に入った民主党の3議員が何を見て何を報告したのか?

 
4/23 農林水産省、1例目について口蹄疫の感染断定、感染経路の調査。畜産農家への経営維持資金の融資枠を20億から100億へ拡大と発表。赤松農相、口蹄疫の専門家チームの派遣方針を示す。宮崎県、新たに2頭疑い。畜産農家からの要請で、県は消毒ポイントを2点追加。日南市・都城市も独自に消毒ポイント設置。

■100億円という数字が当時の政府が考えていた感染規模を示しているのでしょうが、現地から戻った議員からの報告は「専門家チームの派遣」という小さな?実を結んだことになりますが、焼け石に水にさえならなかったのでした。この段階で消毒頼みの政府も地元も完全に後手に回ったと言えましょうが、赤松農相の外遊はさらに1週間後のことでありました。

 
4/25 7例目、牛4頭に感染の疑い。農場規模が大きく、725頭が殺処分により、殺処分数は計が1108頭。 宮崎県、口蹄疫防疫対策本部の第2回会議で対応を協議。農林水産省から6人、4府県から5人が家畜処分などの応援で宮崎入り。串間市、消毒ポイント1点設置。都城市、消毒薬2600戸に配布。

■農水省から6人ばかりの「応援」が来たところで、殺処分数が爆発的に増えて行く速度には対応出来なかったのでした。

沖縄の次は宮崎 其の参

2010-05-18 15:09:11 | 社会問題・事件
4月下旬に口蹄疫への感染が判明した宮崎県都農町の畜産農家の水牛が、3月下旬に県の家畜保健衛生所の検査を受けながら、口蹄疫の可能性を疑わず特段の問題なしとして処理されていたことが18日までに分かった。このとき採取された問題水牛の検体は、4月22日に県が農家を立ち入り検査した際に提出され、その後の遺伝子検査で口蹄疫感染が分かった。……問題の農家は3月26日、掛かり付けの獣医に「水牛が熱を出して下痢もしているので治してほしい」などと相談。獣医は風邪以外の疾病の可能性もあるとみて、家畜保健衛生所に検査を依頼し、3月31日から4月2日まで検査が行われた。しかし、水牛の症状が一時快方に向かったこともあり、詳細原因は不明のまま、口蹄疫の可能性は見逃された。 
5月18日 時事通信

■別の報道によりますと、今年の初め1月7日に隣の韓国で口蹄疫が発生したから「注意せよ!」と都道府県に通知していたそうであります。宮崎県の家畜保健衛生所にも文書は届いていたはずなのですが……。韓流ブームとかで、随分と奥まった地方都市などにもマニアックな旅をする日本人がいる一方で、韓国からも大勢の観光客が日本に来ているのですから、初動の甘さは悔やんでも悔やみ切れないものがあります。何かを予感した獣医さんと検査を中断したお役所との違いは何なのでしょう?それを明らかにして政治を変えるのが民主党の仕事だったはずなのですが……。


……同県都農町で水牛を飼育する農家から、かかりつけの獣医師を通じ、県家畜保健衛生所に「水牛が発熱している。牛乳の出も悪い」という連絡があったのは3月31日。この日のうちに同衛生所の職員は立ち入り検査を実施し、4頭の水牛に発熱や下痢などの症状が出ているのを確認した。しかし、「普段の下痢」と判断して口蹄疫の可能性を疑うことなく、通常の風邪の検査をしただけで、同省にも報告しなかったという。

■たとえ杞憂であろうとも、万が一を考えて精密な検査をすると「事業仕分け」で嫌がらせでもされると思ったのか?検査費用を節約して税金の無駄遣いを率先して行おうと思ったのか?残念ながら衛生所の職員個人の責任が追及されることになるかも知れませんが、いつぞやは北海道でBSEに感染した牛の存在を公表した似たような職業の女性が自殺してしまった事があったのを思い出します。検査システムよりも行政組織により多くの問題があるような気もしますなあ。


この水牛農家から南東に600メートル離れた繁殖牛農家では4月9日、口の中がただれた牛が1頭見つかった。同衛生所はこの時も口蹄疫と見抜けず、20日に「最初の感染事例」として発表した。このため最初の水牛についても22日に血液の遺伝子検査を行った結果、ようやく23日に口蹄疫の感染疑いが判明したが、この時点で既に5例の感染(疑い含む)が発覚していた。口蹄疫の検査結果は通常、1日か2日で判明するため、もし3月末の段階で実施していれば4月初旬には拡散防止対策がとれたとみられる。……
5月18日 読売新聞

■この3週間の遅れは致命的でしたが、何度も指摘しているように赤松農相の長い外遊は4月30日から始まっているのです。読売新聞が分かり易く「口蹄疫の経緯」を図解しております。これによりますと4月9日にも農水省から「注意喚起」の通知が出ております。同日、水牛を飼育していた農家とは別の農家に県が獣医を派遣して立ち入り調査をしたものの、やはり口蹄疫とは見抜けなかったのでした。

 
……感染確認・疑い例は、17日午後6時現在で111例。……処分対象になった家畜は、計8万5723頭(牛など8212頭、豚7万7511頭)に上る。18日未明になって同県新富町でも疑い例が確認され、処分対象頭数は10万頭を超す見通しとなった。……1例目の感染疑い例が確認される11日前の4月9日。宮崎県都農(つの)町の農家で、口内がただれた牛1頭が見つかった。県は獣医を派遣したが、症状は軽く、他に症状のある牛もいなかったことから、口蹄疫とは考えにくいとして「経過観察」とされた。ところが、16日になって、他の牛にも症状が出始めた。検査の結果、経過観察していた牛を1例目と確認。農水省職員は「1例だけで、見抜けなくても仕方なかった」と同情するが、対策がとられないまま10日以上が経過し、初期の封じ込めに失敗した。

■発見が遅れた現場の責任者に一般人が同情するのはよいでしょうが、「注意喚起」の通知を2度も出している農水省の職員が「仕方なかった」と言ってはダメでしょう。通知を出していのですから、万が一を疑って血液の遺伝子検査を急ぐべきだったと言わねばならない立場のはずです。首相自らが他人事みたいな話ばかりするから、政府内の閣僚や役人の発言も軽々しいものになるのかも?


……県は3月には既にウイルスが県内に侵入していたとの見方を強めている。感染ルートは不明だが、今回のウイルスは、香港や韓国で今年発生したものと遺伝子配列が酷似している。感染力が強いとされることに加え、豚に感染が広がったことも、発生が収まらない一因とみられる。豚は牛に比べ、ウイルスの増殖が激しいとされるためだ。一方、政府は4月20日に感染疑い例が発見された段階で農水省に対策本部を設置し、関係省庁との連絡会議も設けた。しかし、赤松広隆農相が大型連休中に海外出張して現地入りが10日にずれ込んだことなどに、地元などから「対応が遅い」との不満が高まった。赤松氏は11日の記者会見で「やるべきことは全部やってきた」と強調したが、野党は「政府の初動態勢が極めて不十分で被害が広がったのではないか」(谷垣禎一自民党総裁)などと批判を強める。

■対策本部を設置してから外遊に出発するまでの10日間、赤松農相は何をしていたのでしょう?口蹄疫の恐ろしさを実は何も知らなかったのではないか?大臣経験の無い史上初の総理大臣が安全保障問題に関して無知であったのは残念至極でしたが、その内閣の農林水産大臣も閣僚経験が無かった上に、特に農政に詳しい人材でもなかったのは実に不運な巡り合せでありました。


……平野博文官房長官が16日朝、米軍普天間飛行場(沖縄県)の移設問題に絡んで出張していた鹿児島市から急きょ宮崎県に向かい、東国原英夫知事と会談。帰京後すぐに首相公邸に赴いて状況を報告した。鳩山由紀夫首相は17日、約1カ月経過してから政府対策本部に格上げしたことに関し、「風評が立つと農家が困る状況があった。政府は十分にことを運んできたが感染が拡大し、県民、国民に正確に事実を知っていただくことがより重要だと判断した」と説明した。2010年5月17日 毎日新聞

■先の新型インフルエンザ騒動の時には、役に立たない過度なパフォーマンスが批判され、肝腎のワクチンが足りない!騒ぎが終わったら余って困る!と右往左往したものですが、食糧自給率を上げるだの、農家の収入を安定させるだのと言いながら、立派に自立して頑張っている畜産農家を疫病から守るという国の使命を何処かに置き忘れていたような鳩山内閣の実態が、思いも掛けない場所から再び浮き彫りになってしまったようです。

■昔、風評被害で責められた菅さんが、罪滅ぼしにカイワレダイコンをむしゃむしゃ食べるお詫びパフォーマンスをしたことがありましたが、感染が広がれば赤松農相には引責辞任以外に選択肢は無いでしょう。しかし、選挙前に大臣が辞めるのは悪影響があるからと、クラッシャー小沢から強引な内閣改造の指示が出るかも知れません。しかし、そんな事は畜産農家には何の関係もない話でありましょう。
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沖縄の次は宮崎 其の弐

2010-05-18 15:08:47 | 社会問題・事件
赤松広隆農相は18日の閣議後会見で、口蹄疫の対応について「私自身はやってきたことに全く反省、おわびすることはないと思っている」と初動対応などに問題はなかったとの認識を改めて示した。殺処分対象の家畜が11万頭を超えたことについては「これだけの数が出たのは残念だ」と述べた。家畜伝染病予防法の改正や特別措置法の必要性については「今、とりたててやらなければいけないということはない」と否定的な考えを示し、「この方針で行こうと(17日に鳩山由紀夫首相と)下打ち合わせの話ができた」と明かした。
5月18日1 毎日新聞

■役人から厳しく「ご説明」を受けているのか?直ぐに謝る首相が任命した閣僚とも思えぬ強弁ぶりが気になります。因みに農相の中南米歴訪は4月30日~5月8日という長期間に及ぶもので、出発直後の5月1日には宮崎県が自衛隊に災害派遣を要請!帰国した日に6万2400頭が殺処分となる深刻な事態になっていたのでした。東国原県知事が小沢幹事長と直接談判したのは、赤松農相が帰国する前日だったからでした。嗚呼、外遊をドタキャンして現場に入って陣頭指揮を執っていれば……、最初の訪問国メキシコからでも緊急帰国してさえいれば……。少しは参議院選挙も戦い易くなったかも?
 
 
平野博文官房長官は18日の記者会見で、宮崎県内で発生している口蹄疫の被害拡大防止のため、一定の地域内の家畜について全頭処分の実施を検討する考えを表明した。感染していない家畜の処分については財産権の問題も指摘されている。平野氏は「農家の精神的な思いなどもあるが、ある意味では危機管理(の問題)だ。政治判断も必要だと思う」と述べ、やむを得ない場合もあるとの見解を示した。

■遅きに失した鹿児島市訪問がメインで、その帰りにちょっと宮崎県に立ち寄った官房長官は「虻蜂取らず」どころか「泣きっ面に蜂」の状態になっております。それにしても「思い」「ある意味」など、いつの間にやら鳩山サセテイタダク首相の口調が感染しているようです。 


家畜伝染病予防法では、口蹄疫の陽性反応が出た家畜と、同じ農場内の家畜が殺処分の対象となる。平野氏は法的問題について「現行法上でできるのか。できないなら、法改正を含めて緊急措置としてどうするのかを判断しなければならい」と述べ、法改正や特別措置法による対応も検討する考えを示した。

■あれあれ?同じ日の記者会見で赤松農相は家畜伝染病予防法の改正や特別措置法の必要性は無い!と言い切っていたのですが……。すっかり定着してしまった閣内不一致が、こんな緊急事態の場面でも出てしまったとは情けない話でありますなあ。


……鳩山由紀夫首相は同日朝、「一番大事なことは政府として(対策に)万全を期し、これ以上感染を広げず、農家に『大丈夫だ。経済、経営のことはしっかり政府がやるから』という思いを理解をしていただくことだ」と述べ、政府として支援していく考えを表明した。

■またしても首相の「思い」を理解しろ!との御下命でありますぞ。首相の「思い」に振り回された沖縄県民の皆さんは、一体、どんな助言を宮崎県の畜産農家の皆さんに送ればよいのでしょうなあ。「大丈夫」「しっかり」などの表現は空々しいばかりですが、その前に「経済、経営のこと」と言及されている点は恐怖さえ感じてしまいます。


記者団からの「政府や県の対応に問題点はなかったか」との質問に対しては、「すでにこれまでも政府で対応はしてきた」と反論したが、「一定の(問題)部分はあると思う」とも述べ、限定的ながら政府対応の問題点を認めた。
5月18日 産経新聞

■さてさて、所管大臣の赤松農相御自身は「全く反省、おわびすることはない」としれっと答えているのですから、鳩山サセテイタダク首相が考えている問題点を農水省の外に存在するのでしょうか?それとも外遊中の農相から留守を預かっていた誰かさんの責任になるのでしょうかな?

沖縄の次は宮崎 其の壱

2010-05-18 15:08:16 | 社会問題・事件
■宮崎県を襲っている口蹄疫の猛威についてのお話です。被害が広がった原因が徐々に明らかになりつつありますが、油断と失政、そして不運な人災の面もあったようです。地元の畜産農家の皆さんは夜も眠れない毎日が続いているとのこと、心よりお見舞い申し上げます。選挙目当ての露骨なバラマキとも揶揄される米作農家への補償制度などとは無縁な立場で、世界を唸らせるブランド牛肉を下支えする誇り高い宮崎の畜産家の皆さんが存亡の危機に立たされ、同時に日本中のブランド牛肉が消滅する可能性さえ出て来たのですから、これは大変なことであります。
 
■宮崎県と言えばすっかり名物男になった県知事が、タレント業の経験を活かして県内産品の売り込みに熱心でありましたが、地鶏やマンゴーはしつこいくらいに宣伝してようでしたが、気が付いてみれば宮崎牛を熱心に売り込んでいた記憶がありません。それだけ既に確固としたブランドとして知る人ぞ知る存在になっていたからなのでしょう。仄聞しますに、日本中のブランド牛肉のほとんどは宮崎生まれの子牛が育ったものだとか……。

■この災厄は3月末日から始まっていたと報道され始めまして、政府の対応に問題は無かったのか?!と参議院選挙前の大事な時に、政権与党は厳しい追及を受けることになりそうであります。実に皮肉なことに、口蹄疫が蔓延して行く時期は、鳩山サセテイタダク首相の「5月末決着」発言を巡って馬鹿馬鹿しい騒ぎが続いていた時期と重なり、クラッシャー小沢の「政治とカネ」の問題が蒸し返される時期とも重なっていたことになります。
 
■資金管理団体「陸山会」の土地取引を巡る政治資金規正法違反事件で、検察審査会が「起訴相当」の議決をしたのが4月27日のことでしたが、マスコミが物言わぬ幹事長を追い回していた頃、口蹄疫は宮崎県境を越え、県内では豚への感染も疑われ出していたのでした。それでも民主党内の茶坊主議員は宮崎県で起こっている災厄よりも、検察審査会を目の敵にして騒いでおりましたなあ。

■それから黄金週間に入ると赤松農相が南九州ならぬ、中南米諸国を外遊!連休が明けて5月10日には、柔道の谷亮子選手の参院選比例代表候補擁立!という驚くほど危機感の無い芸能ネタが日本中を席捲し始めるのですが、この発表の2日前には東国原県知事がクラッシャー小沢と直接会って防疫対策を懇願していたのでした。谷選手の擁立を発表する場で「100万、1千万の味方を得た気持ちだ」と大喜びしていた幹事長の脳裏に、果たして100万頭の家畜が殺処分されるような大惨事があったのかどうか……。

■その後、民主党は歌手や元五輪体操選手ら計7人の著名人候補を日替わり定食みたいに発表して行きますが、その間に宮崎県で処分された牛や豚は10万頭を越えつつありました。まあ、野党に転落して苦境に立つ自民党もプロ野球の元監督や女優などを引っ張り出しているのですから、民主党だけを責めるわけには行かないのですが……。


東国原英夫知事は18日、家畜伝染病の口蹄疫問題で非常事態宣言を宮崎県内に発令した。知事は会見し「このままでは本県畜産の壊滅はもちろん、隣県や九州、さらには全国にも感染が拡大する可能性を否定できない」と理解を求めた。……畜産農家には不要不急の外出を控え、一般県民にも農家訪問の遠慮や車の消毒、各種イベントの延期を求めた。口蹄疫ウイルスは人には感染しないが、人を介して偶蹄類に広がる可能性があるためだ。今回の非常事態宣言は法的根拠に基づくものではなく、協力依頼に当たる
5月18日 毎日新聞

■以前、鳥インフルエンザが広まった時、現場にわっと押し寄せたマスコミ陣が我が物顔で歩き回り、感染を広げた張本人ではないか?!と指摘されたことがありましたが、当時の学習効果があるのか、マスコミは比較的行儀よく取材しているとか……。

偶には聞きたい良いニュース 其の弐

2010-05-14 11:23:46 | 政治
■特別会計まで含めて無駄遣いを洗い出せば、20兆~30兆円の財源は簡単に確保できると豪語していたのは「努力目標」でさえなく、単なる選挙向けのホラ話だったとバレてしまったのですから、いよいよ「独立行政法人の全廃」という公約ぐらいは達成しておかないと選挙は戦えないぞ!と心ある民主党議員は藁にもすがる思いで心配しているかも?

独立行政法人(今年3月31日現在)で、独法制度が始まった01年度から昨年度までの9年間に、職員への食事手当や個人旅行補助などの「法定外福利厚生費」として計742億3171万円が支出されていたことが13日、総務省の調査で分かった。独法の設立目的は行政の効率化だったが、多額の無駄な支出が判明。……同省は今月6日、問題のある手当を廃止するよう通知した。

■一般企業で起こったら背任・横領などの犯罪になるのに、公務員や準公務員が同じ事をしても罪にならない不思議な仕組みがあります。株式会社なら株主に対する責任や顧客・消費者に対する責任が明確なのですが、公務員の場合は納税者に対する責任を問われることは無いというのも奇妙な話であります。


……昨年度末時点の全独法98法人を対象に実施。各独法の支出総額は、01年度の3億9325万円(41法人)から、法人数の増加とともに年々増え、ピークの07年度は124億1976万円に上る。……昨年度も113億5160万円(82法人は予算ベース)に達した。法人別では、設立以来の支出総額は▽鉄道建設・運輸施設整備支援機構85億8427万円▽日本原子力研究開発機構79億1788万円▽労働者健康福祉機構58億1480万円--の順。

■01年から昨年度まで、日本政府は莫大な赤字国債を積み増し続けたのですが、その間に法人数は倍増!予算は約3倍!、そのためだけに赤字国債を増やした訳ではないのでしょうが、少なくとも独立行政法人に属している人たちは、何の痛痒も感じることなく無駄遣いを止めよう!などという事は夢にも思っていなかった実態が透けて見えます。


……労働者健康福祉機構傘下のある施設は現在もホームページの職員募集欄に「(リフレッシュ目的の)宿泊施設などの利用に対する補助」「厚生会(互助組織)が5年ごとに旅行券を支給」などを挙げている。……法定外福利厚生費の中には職員の健康診断費など必要な支出もあるが、レクリエーションなど本来は支出すべきでない費用も多い。……▽個人旅行補助やフィットネスクラブ法人会員費など、文化・体育・レクリエーション関連の支出▽職員への食券交付や食事の実費給付▽慶弔見舞金、永年勤続表彰などの個人への給付▽互助組織への支出--など……

■厚労省管轄の年金事業でも、奇怪な福利厚生予算が使われていた事が暴露されて大騒ぎになったことがありましたが、それを「他山の石」とも思わず「対岸の火事」だとタカを括っていた根性は凄い!神経が麻痺してしまっている一種の麻薬中毒患者みたいなものなのでしょうなあ。


独法の運営には今年度予算で、補助金などの国支出が約3兆1600億円投入される。同省は各省庁を通じ、全法人に対し法定外福利厚生費のうち国や他の独立行政法人が設定していない手当を支出しないよう通知した。
◇独法の主な法定外福利厚生費◇
▽食事手当 ▽温泉旅館など保養施設利用補助
▽子供の入進学時の就学祝い金
▽結婚25周年の結婚記念祝い金
▽遊園地利用補助 ▽フィットネスクラブ法人会員費
▽NHK交響楽団コンサート鑑賞への補助
5月14日 毎日新聞

■独立行政法人の職員にとっての「最低限度の文化的生活」には、これらの支出が欠かせないのでありましょう。昨年度の総予算113億5160万円を全廃しても、9年間に支出された「法定外福利厚生費」の計742億3171万円の穴埋めにもならない!というのは大変な事であります。民主党にとって「選挙が第一」であるように、独立行政法人にとっては「職員の福利厚生が第一 だということのようです。さてさて、どちらの第一が強いのか?その勝負は日本に民主主義を根付かせる大いなる試金石になるのではないでしょうか?

■せっかくの良いニュースなのですから、民主党政権には是非とも現政権にとっても「福音」となるように、「公約」に従って独立行政法人の全廃を前提とする「ゼロベース」からの仕分け議論を期待したいものであります。それさえも実行できないと、民主党自体が仕分けされて、日本一の政党の座を失い「二位でもよい」と前惜しみを言わねばならなくなりましょうなあ。■こちらのブログもよろしく
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偶には聞きたい良いニュース 其の壱

2010-05-14 11:23:14 | 政治
■このまま夏の選挙に突入したらどうなるのかいなあ?と特に何処の政党に肩入れするわけでもない身としても、選挙絡み政局絡みでロクな話がない現状は、鶴田浩二さんの歌ではありませんが「右も左も真っ暗じゃあございませんか」と言いたくなる日本の政治状況であります。

■民意を大きく読み間違っているような気がしてならない民主党幹事長の参議院過半数制覇計画が着々と推し進められる中で、既に犠牲者が出ているようですから、本番は大変な騒ぎになるのではありますまいか?女子柔道で人気を博した谷亮子さんが、「五輪でも金、政治でも金、子育ても金」と言ったとか言わないとかで、世間は激しく反発している模様。確かに世界には才色兼備・文武両道の人物は存在しますが、世界一・日本一のレベルであれもこれもと大成功を並べられる人は皆無でありましょう。それ故に、何事によらず頂点を目指す者は自分が決めた目標のために多くの事を犠牲にして努力精進を続けているのですし、その中から栄光を手にして賞賛されるためには幸運にも恵まれていなければなりません。

■五輪大会での優勝に生涯を賭けている人、国政選挙で当選しようと必死になっている人、そして、悩みながらも幼子を育て上げようと心身ともに大変な思いをして頑張っている人も多いのですから、あれもこれもと大きな目標を並べ立てたりしますと、思わぬ反発を受けることになってしまう可能性があるものです。特に政権交代が実現した結果に大きな疑問や憤りの声が高まっている時期ですから、有権者の目は非常に厳しいものになっております。そこのところを民主党の幹事長は見落としているような気がしますなあ。


……日刊スポーツの5月12日付記事「Qちゃん民主要請拒否 スポーツ現場主義」……高橋さん側には、ある大物関係者を通じて民主党から参院選への出馬要請があった。これに対し、高橋さんは、「政治の勉強をした人が国民の代表になるべき」と断ったと、高橋さんの関係者が明かした……。女子マラソン初の金メダル獲得で国民栄誉賞を受賞しており、その立場から「どこかの一政党の代表にはなれない」とも考えたという。同じシドニー金の谷さんが出馬することには、「びっくりしました」と答えたそうだ。ネット上にこの記事がアップされると、たちまち絶賛の声が広がった。

■このところ政治関連の報道には「納得いかぬ!」と腹が立つ話ばかりが続いておりましたが、やっと、通常・正常の思考回路に素直に流れ込むニュースが出て来て、重苦しく垂れ込めていた暗雲に一条の陽光が差し込んだような、不快な空気を吹き散らす一陣の涼風が吹いたような、久し振りに気が晴れる話であります。


……参院選に出ない理由としては、「政治は難しい世界ですし、その知識がないと片手間にはできません」と話す。国民栄誉賞受賞は直接の理由ではないものの、「高橋は、賞をいただいたからには、自分が今できることを全うすべきと考えています。賞を安易に扱えないということです」。具体的には、マラソン解説者やキャスターなどの仕事を通じ、スポーツ発展のために現場に立ち続けることだという。「二兎を追えば、一つのことを全うできなくなります。高橋の得意な分野でやっていきたいと思っています」

■以前、テレビで売った名を利用して民主党から大橋巨泉さん、社民党からは田島陽子さんが鳴り物入りで立候補し、予想通りに大勝したのに投票した有権者の期待に反してあっさり辞職してしまったことがありましたなあ。自分の分を弁(わきま)えて、自分の役割を冷静に考えられる人物が今の日本にも存在しているという、極当たり前の事を再確認して多くの人たちが異様に興奮するというのは、今の日本が苦境に立っていることの証なのでしょうなあ。


母校、大阪学院大の特任教授として、学生たちにスポーツを教えているほか、2010年5月11日からは、食生活の大切さを知ってもらおうと、北海道の農場で野菜作りを始めた。「Qちゃんファーム」と名付けられた農場では、今後、マラソン大会などのイベントもしていくという。「野菜は人の口に入るから金メダルじゃないと許されない」。共同通信の記事によると、高橋さんは農場でこう語っていたという。政治も人の生活に響くから、やるとなったら「金メダルじゃないと許されない」と考えているのだろうか。
5月13日 J-CASTニュース

■かつて東京五輪のマラソン競技で裸足で優勝したエチオピアのアベベ選手は「走る哲人」と称されたものですが、ひたすら走り続ける生活の中で日本の高橋選手もしっかり哲学していたようです。意地の悪い比較をすれば、マラソン競技と女子柔道という二つの五輪種目自体に、歴史的にも競技人口の多寡にも大きな違いがあったことを思い出してしまいます。巨大な興行商売になってしまった近代五輪の諸問題まで思い出してしまう二人の女性アスリートに関する話になってしまうと、参議院の議席を積みます道具にして人の人生を弄(もてあそ)ぶ誰かさんの豪腕の罪深さが際立ちますなあ。

■「公約」と「努力目標」の区別がつかない首相や選挙のためには何でもやる幹事長に対する反発が日に日に強まっておりまして、何を言っても行動しても、民主党の支持率を下げる効果しかないような八方塞りの状態に、政権交代で舞い上がってしまった能天気な議員達も少しは不安を覚えるようになっているかのように見えます。唯一、政権交代が起きて良かったなあ、と好評を博したのが必殺!仕分け人のパフォーマンスだったのですから、起死回生の策はこのパフォーマンスを磨いて少しでも「公約」を果たして見せる以外に無さそうです。

目くじらを立てる時? 其の弐

2010-05-13 09:40:44 | 日記・雑学
……上海万博にパビリオンを初出展した北朝鮮館が、設備故障を理由に5日午後から6日午後にかけて一時閉館……雨天となった5日、北朝鮮館で雨漏りが見つかり、さらに、平壌市内をイメージした展示スペースの橋が来場者の重みで一部破損したため、緊急修理を行ったという。金正日総書記の5日の北京入りとの関連を憶測する情報も流れたが、実際のところ北朝鮮館の“安普請”が問題だったようだ。……壁一面の平壌の写真、指導理念の主体思想の塔や高句麗壁画のレプリカなどがいずれも張りぼてで飾られ、係員は北朝鮮の切手など土産物販売にいそしんでいる。建物や展示など中国側の資金援助で建設されたとの情報もある。
2010年5月6日 産経ニュース

■万国博覧会に参加する資格と能力と意志が有るかどうか、それを勘案するのも主催国の務めのはずなのですが、数と量と規模が大きいことがすべてに優先してしまうチャイナが主催すると、こういう事が起こります。おそらく雨漏りによる閉館に「目くじら」立てて怒り狂った客は一人も居なかったのではないでしょうか?「怖いもの見たさ」で足を向ける暇人は少ないようですし、血で固めた同盟関係にあるチャイナの人民は欧米各国や日本の展示館に押し寄せているようですから、急に北朝鮮館が閉鎖されても、何の問題もなさそうです。

■でも、パビリオンではなく北朝鮮の国家体制が閉館ならぬ崩壊となったら、周辺国は「目くじら」立てて怒っている場合ではなくなりますから、その点は御用心、御用心。個人的にはまったく興味が湧かない上海万博ですが、この種のニュースが否応も無く世界に向けて発信される点は好意を以って見守りたいと思っております。

■日本ではいよいよ世間は「選挙モード」に入ったようでありますから、何に「目くじら」を立てて選挙に臨むか、有権者各位はそろそろ心の準備をしておかねばなりませんぞ。
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