ここの所続けてチャールズ・ロイドのアルバムを買っている。買ったのは国内版だけど、インタビューをもとにした小川隆夫氏の解説があってよくわかって良い。少し引用させてもらいながら書いてみよう。(「」内が小川氏のインタヴュー記事から引用させてもらったロイドの言葉)
解説の出だしは1967年録音のLP“フォレスト・フラワー”の話で、熱狂的な支持を受けたことが書いてあるけれど、このアルバム当時としては特異なサウンドで、わたしも不思議な気分になるのでしばらく友人に預けたという経験がある。
さて45年後の今度のアルバムは「非常にパーソナルな内容を込めたもの」となっている。そのパーソナルな内容とは7曲目から5曲の組曲“Hagar Suite”で、ロイドの曾曾祖母のこと「これは10歳で南ミシシッピ州の自宅から連れ去られ、テネシー州の奴隷主に売られた曾曾祖母に捧げた曲だ。その奴隷主は彼女を14歳の時に妊娠させた。彼女はその後、彼の娘の旦那に売られ、その娘の個人的な奴隷にされた。」
この5つの曲を「これまでの人生で、私にとってモニュメンタル物を集めてみた」という9曲が挟んでいる。
演奏はカルテットでも一緒のジェイソン・モランとのデュオ、カリフォルニア州サンタバーバラでの録音は普段のECMと比べると一寸違って感じる。ECMといえばじっくり時間をかけてミキシングして完璧な流れをつくってから出すけれど、2012年4月に録音されたこの9曲は一発取りみたいな雰囲気だ。
1曲目2分15秒、2分33秒、3分8秒にジェームス・モランは乱れではと聞こえるタッチを聞かせます。ECMにしてはアレッと思ったけれど、これがこのアルバム、このアルバムのために精神こめたモランのフレーズの方が選ばれたような感じです。
柔らかな“Mood Indigo”
4曲目ロイドの音はロイドで、ロイドのスタンダードだねという感じです。
6曲目は大好きな“You've Changed”「曾曾父母に捧げた組曲が暗いものになったから、その前後には明るい気持ちになれる曲を並べるようにしたんだ」とあるようにこの前後の9曲、深くフレーズするのではなく、歴史の年譜のようにJAZZを並べた感じでJAZZの史実が淡々とあるようです。
そして問題の5曲がそれに挟まれたとても個人的な歌となっています。
5曲目ロイドのバス・フルートで先住民の儀式のように始まって、徐々に激しい感情をしまします。モランもここにきて呪術的な演奏に変化します。ロイドによれば曾曾祖母はアメリカ先住民の血をひいていたそうです。
8曲目、初めてモランのソロから始まる曲はロイドのテナーがだんだんと瞽女の呪詛のようになっていきます。
9曲目ロイドの神託のようなフルートの短い曲。
10曲目モランが引き続いて攻撃的なリズムを作れば、テナーの瞑想、コルトレーンに通じていくのです。
11曲目同じテーマが鎮魂歌のように変化して、とても個人的な歴史への思いはおわるのです。
この組曲についてもロイドが語っていますが、それは小川隆夫氏の解説でお読みください。引用させていただいてありがとうございました。
生誕75周年を記念して作ったアルバムは、ECMをしてロイドにすべて自由させたアルバムのように思う。
せっかくで小川しがまとめにとりあげているロイドの言葉
「アルバムのために選んだ曲は、同じ縦糸でつながっている私の人生である音楽の一部なのだ」
フォレスト・フラワーからのお付き合い、一寸感情移入して書きました。
Hagar's Song / CHARLES LLOYD
Charles Lloyd Tenor and alto saxophones, bass and alto flutes
Jason Moran Piano, tambourine
1.Pretty Girl
2.Mood Indigo
3.Bess, You Is My Woman Now
4.All About Ronnie
5.Pictogram
6.You've Changed
Hagar Suite
7.Journey Up River
8.Dreams Of White Bluff
9.Alone
10.Bolivar Blues
11.Hagar's Lullaby
12.Rosetta
13.I Shall Be Released
14.God Only Knows
コメント&トラバありがとうございました。
>10歳で南ミシシッピ州の自宅から連れ去られ、テネシー州の奴隷主に売られた曾曾祖母
ここまでは、知っていたのですが、、その後の文章は胸がつまってしまい、、絶句、、という感じです。。
わたしが女性だから、とか、、娘がいるからとか、、そういう限られた者の問題でなく、あまりに非人道的なことで改めて怒りを感じます。
さて、その組曲は、、この重たく暗い真実をはき出すようなメロディや演奏でしたね。でも、全体にはホンわりと暖かな空気でしたねぇ。。
お正月に来日したロイドを聴きに行けなくて、残念だったなぁ。。。
75歳にして自分の一族の過去をさらけ出す勇気、でもとてものびやかになったかもしれませんね。