アントニオ・ファラオのリーダー・アルバムは久しぶりで10年ぶりだろうか。
参加アルバムでは5年前にこれがある。
「PASSERS of TIME」
このアルバムではSylvan Beufのサックスが入っている。彼のリーダー作でも前作はJoe Lovanoがメンバーだった。
2013年 「EVAN」
ピアノ・トリオとしてはその前の作品にさかのぼる。
2011年〈「DOMI」
だから今回は14年ぶりのトリオ・アルバムとなる。ベーシストのジョン・パティトゥッチ、ドラマーのジェフ・バラードという強力な取り合わせとなっているし、クリス・クロスから出すのは初めて。「DOMI」が息子に贈るアルバムで、ちょっと慈悲の感じが多かったけれど、今回はどうだろう。
1曲目、アルバムのタイトルにした”Tributes”にどのような意味をこめたのだろうか。私は最初のテーマのメロディーからマッコイ・タイナーをおもいだした。ジョンとジェフのバックはピアノの熱に同調するように熱くなり、ベース・ソロも熱い。
2曲目も煌めくようななピアノが、同じく煌めくバックにささえられる曲。
3曲目も引き続いて、グルーヴ感のある曲調、疾走するピアノ・ラインは、これが凄い。このアルバム、タイトル名からして、ファラオがジャズの本流に改めて向かい合うことを決意したとアルバムではないだろうか。
それだから4曲目、コール・ポーターの曲も、挑戦のような気迫がこもっている。
5曲目はバラッドになって、しかしここでも高いピアノの音がキラキラして美しい。
6曲目”MT"はマッコイ・ターナーへのトリビュート、最近、モーダルにこう弾くピアノが少ないので嬉しい。
7曲目はどうやらミッシェル・ペトルチアーニに捧げた曲の様だし9曲目はももちろんウェイン・ショーター。そして最後はチック・コリアの大好きな”マトリックス”にするなど、何とも嬉しい選曲。
このアルバム、アントニオがトリビュートとするジャズに、気持ちを込めて改めて向かい会った作品だと思う。
Tributes / ANTONIO FARAO
Antonio Farao – piano
John Patitucci – bass
Jeff Ballard – drums
1. Tributes
2. Right One
3. Shock
4. I Love You
5. Tender
6. MT
7. Memories Of Calvi
8. Syrian Children
9. Song For Shorter
10. Matrix
Recorded on July 26, 2023 at Studio de Meudon, Paris
2024年作品tes / ANTONIO FARAO