ルーツな日記

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ジョー・サンプル&クレオール・ジョー・バンド@ブルーノート東京

2012-09-16 14:29:36 | ニューオーリンズ

9月11日、ブルーノート東京にて、ジョー・サンプル&クレオール・ジョー・バンドを観てまいりました。このバンド名義では昨年に引き続き2度目の来日。しかも初作品「CREOLE JOE BAND」リリース直後というタイミング。私が観たのはこの日の2ndショーです。

開演予定時間を過ぎた頃、会場が暗くなり、後方からバンド御一行がステージに現れる。先頭を歩くのはジョー・サンプル。片手に赤ワインを持って颯爽と登場です。ステージ中央にはご存知レイ・パーカー・JR.(g,vo)と女性シンガーのエリカ・フォールズが並ぶ。向かって左に我らが山岸潤史(g)、さらにその左にラブボードのアレックス・マクドナルド、右側にはジョー・サンプル。後列にはダグ・ベローテ(ds)、ニック・サンプル(b)、スキップ・ナリア(kbd)という布陣。本来なら、ここにアコーディオンのブルース“サンパイ”バーンズが加わるはずでしたが、残念ながら急遽キャンセル…。私はこのキャンセルの報を当日の朝知ってがっかりでした…。

このクレオール・ジョー・バンドは、ジョー・サンプルが自身のルーツであるザディコに取り組んだプロジェクト。そしてザディコと言えばアコーディオンな訳で、本場のブルース“サンパイ”バーンズの存在は欠かせないはずでしたし、個人的にも彼の演奏を観るのを楽しみにしていたんですけどね~。

1曲目は「Creole Joe」。彼らのテーマ・ソングとも言える曲からスタート。濃密なザディコではないですが、ポップなルイジアナのノリを感じさせる楽しい雰囲気。ブルース“サンパイ”バーンズが居なくても、何だかんだでメンバーの半数はルイジアナ/ニューオーリンズ系の人達ですからね。中でも特に目を引くのがラブボードのアレックス・マクドナルド。ラブボードとは洗濯板をパーカッションにしたもので、アコーディオンと並んでザディコには欠かせない楽器です。で、このアレックス・マクドナルドはドゥエイン・ドプシーのバンドで活躍していた人。つまり、ブルース“サンパイ”バーンズが居ないこのクレオール・ジョー・バンドにおいて、彼だけが唯一ザディコを本職としている人なのです。ですが見た目はパンク! 坊主頭、ピアス、派手なTシャツ、そこから出る長い両腕には入れ墨。そんな悪ガキ臭を漂わす白人青年の彼。彼のラブボード捌きは泥臭さよりも切れ味勝負な感じ。しかもこの切れ味が半端無い。ドラムのフィルに対抗するが如く、それに合わせて高速フレーズを切り刻む。これが格好良い!! ちなみにドラムのダグ・ベローテもジョン・クリアリーのバックなどで活躍するルイジアナの人。アコーディオンを弾くのはジョー・サンプル。残念ながら私がザディコに求める“勢い”は有りませんが、彼の弾くどこか人懐っこく朗らかな音色は、結構好きです。


「Louisiana Lovin'」、「Down In New Orleans」とリリースされたばかりのアルバム「CREOLE JOE BAND」の曲が続き、客席もルイジアナらしい楽しい雰囲気に染っていく。そんなステージを引っ張るのは昨年の来日公演同様、レイ・パーカー・JR.です。彼のユーモア溢れるパフォーマンスにはついつい引き込まれますね。そして新加入の女性シンガー、エリカ・フォールズも頑張っていました。この人もニューオーリンズのシンガーで、近年のアーマ・トーマスやドクター・ジョンの作品にバック・コーラスで参加したりもしてる人。彼女の見せ場は中盤にやって来ました。まずは「Don’t You Touch My Cush Cush」。R&B調の曲で、彼女の歌唱は流石のリズム感でしたね。こういう曲をもっと聴きたかった!なんて思ったり。やっぱ良い声してますよ!

ちなみにこの“Cush Cush”って言葉、どういう意味なんでようね?下ネタですかね?レイ・パーカー・JR.がそれっぽく説明して喜んでましたし。エリカ・フォールズも自分のお尻を掴んで“Cush Cush”と言って盛り上がったり。それを見たアレックスなんて大爆笑してましたね。で、そのアレックスがラブボード・ソロで気を吐いたのもこの曲でしたっけ? レイ・パーカー・JR.が客席を指差して、アレックスにあそこへ行って弾いてこいみたいな無茶振りを指示。アレックスはここぞとばかりにジャカジャカ鳴らしながらフロアに分け入っていく。私の目の前を通り、もの凄い早さでボードを擦ると言うか、ほとんど叩いてる勢い。最終的には後方のテーブルに乗っかってのワンマン・ステージ。やってくれます!

そしてスティーヴィー・ワンダーのカヴァー「Higher Ground」。ここでもエリカ・フォールズがソウルフルな歌声を聴かせてくれました。終盤へ向けてどんどん昂揚感を増していく歌唱は流石の一言。しかも隣でアレックスが暴れてる。ザディコでもなんでもないこの曲でアレックスがノリノリ。体をブンブンと振り回しながら派手なフレーズを連発。この人、ホントにパンキッシュ!

徐々に黒人シンガーとしての真価を表していくエリカ・フォールズが、最もその凄みを見せつけたのがスロー・ナンバー「If Anybody Ask You」。これには参りました。ジョー・サンプルのキーボードをバックに歌うこの曲。彼女の歌唱は神がかってましたね。どっぷりとしたブラック・フィーリング。ニューオーリンズらしい暖かな包容力。高低差を自在い操る圧巻の歌唱力。徐々に感情を解放していくかのような表現力。聴き終わった後、思わず目がうるうるしちゃいましたよ。こういう歌唱は、日本ではなかなか聴けませんよ! もちろんジョー・サンプルの鍵盤にもうっとりでした。

そんな感動に包まれた会場を仕切り直すかのようにファンキーな「Boomti, Boomti, Boom Boom」。ここからはレイ・パーカー・JR.の時間。前回もやっていたスロー「Please Forgive Me」でのアダルトなちょいエロ・フィーリングは今回も健在。恍惚とした歌声は、もう名人芸。最前列の女性に絡んでいくあたりも流石のエンターテイナー振り。山岸潤史のブルージー極まりないギターソロも素晴らしかったですね!

サディコ名曲「Zydeco Boogaloo」ではメンバーそれぞれがソロを回す。それまで控えめな印象だったジョー・サンプルもキーボードでブギウギ調のソロを聴かせてくれました。そしてやっぱりアレックスは気を吐いてましたね。掛け声のようなコーラスでも、水を得た魚のようにノリノリでした。そして「Creole Joe Groove」で一旦終了。アンコールは「Louisiana Woman - Texas Man」。決めの“Aiyee!!!”の部分をみんなで叫んだり、ノリの良いおばちゃんをステージに上げて一緒に歌ったりの大盛り上がり。

なんだかんだで楽しさ一杯のライヴでした。ブルース“サンパイ”バーンズのキャンセルを知った時は、ザディコとしてどうなっちゃうの?と心配になりましたが、元々、アルバム「CREOLE JOE BAND」自体もかなりポップで、私が求めるザディコとは大分違っていましたからね。それでもあのアルバムは大好きだったりするんです。なんて言いますか、ルイジアナのホーム・パーティ的な楽しさに溢れてるじゃないですか? (もちろんルイジアナのホームパーティなんて参加したこと無いので想像の世界なんですけどね…)。今回のステージもまさにそんな印象でした。そういう意味でも、あのアルバムのライヴ版としての雰囲気は充分に出ていたと思います!!

吉岡正晴さんのブログによりますと、ブルース“サンパイ”バーンズは、9月8日の東京ジャズへの出演後、息子さんが怪我で足を骨折したという報を聞き急遽帰国の途についたそうです。


セットリスト↓

01. Creole Joe
02. Louisiana Lovin'
03. Down In New Orleans
04. Don’t You Touch My Cush Cush
05. Zydeco Train
06. Higher Ground
07. If Anybody Ask You
08. Boomti, Boomti, Boom Boom
09. Please Forgive Me
10. Zydeco Boogaloo
11. Creole Joe Groove
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12. Louisiana Woman - Texas Man



*上の写真はメンバー全員にサインを頂いたフライヤー。それにしても出演者全員のサイン会ってすごくありません? 8人ですからね! 緊張も8倍ですよ! 外人さんに「サンキュー」しか言えないのは仕方ないとして、山岸さんにも「ありがとうございます!」しか言えなかった自分…。でも出来上がったこのフライヤーはなかなか壮観。って言うかもうどれが誰のだか分りません…。



CREOLE JOE BAND / CREOLE JOE BAND
で、なんだかんだでCDにもサインを頂きました。




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 12.09.10 クレオール・ジョー・バンド
 11.05.21 クレオール・ジョー・バンド@ブルーノート東京(昨年5月の来日公演レポ)


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