ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

上原ひろみ@丸の内コットンクラブ

2011-04-18 15:01:55 | ジャズ
HIROMI / VOICE

4月14日、上原ひろみさんのピアノ・ソロによるライヴを観に、丸の内コットンクラブに行ってまいりました。ミーハー魂を炸裂させて整理番号1番、かぶりつきで堪能でした! 至福。

上原さんと言えば先月に新譜を発表したばかり。あの震災の1週間後に発売された「VOICE」(写真)です。私は震災による被害はありませんでしたが、精神的にはかなり参ってしまいまして、大好きな音楽もさほど積極的に聴く気になれず、ただただニュースを見続けては恐怖におののく日々を送っていました。そんななか上原さんの新譜が発売され、これは繰り返し聴きましたね。癒されましたし、エネルギーを貰いました。

そしてその震災の影響で、コンサートやイベントが次々に中止になりました。上原さんが参加予定だった『ロックの学園』も中止。そして上原さん自身の新作リリース・イベントである『「VOICE」発売記念サイン会』も中止となりました。その後も海外アーティストの来日公演中止が続き、ブルーノートやコットンクラブもその影響を大きく受けたようです。そしてその穴を埋めるべく、急遽決まったのがコットンクラブにて「上原ひろみ -ソロ・ピアノ-」公演、ブルーノートにて「上原ひろみ×熊谷和徳」公演、4月中旬から下旬にかけてあわせて9日間18公演! なんか侠気を感じますよね、可愛らしい女性ですけど。

さて、私が観たのはコットンクラブ公演2日目の1stショー。整理番号1番ですからね、案内の方に勧められた席は上原さんがピアノの前に座るそのちょうど真横の席。上原さんの全身、表情、指先まで全てを間近で見ようとすると、この席しかあり得ない唯一の特等席。ここ憧れだったんですよね~。なんかもう目の前のピアノを見ているだけでドキドキでしたね。そして場内が暗くなり、いよいよ上原さんの登場。いつものように、可愛さと同時に独特の緊張感を伴っている。そしてピアノの前に座ると一瞬、時間が止まったような感じになる。さらにピアノに入り込むように前屈みの姿勢で弾き始めたのは「Old Castle, by the river, in the middle of a forest」。幻想的且つノスタルジックなメロディーが流れるようなスピード感で紡がれていく。前にも書いたけど、上原さんは顔でピアノを弾く。とにかく弾いてるときの表情が堪らなく良い。そしてその視線の先にはおそらく上原さんにしか見えない世界が広がっているのでしょう。それを少しでも共有したいがため、私は至近距離で上原さんのライヴが見たい。ま、たんなるミーハーなだけなんですけど…。

2曲目は「Capecod Chips」。これはね~、とにかくキレが半端無かった!フリーキーに躍動するリズムの立ち具合は過去に何度も聴いた中でこの日が圧倒的に鋭かった。多彩なリズム解釈がまるで上原さんの全身から溢れ出るようであり、その音は鍵盤を通じて空間を切り裂くようにハネまくる。もう堪りませんね。しかも弦をミュートしてのベース・プレイもあり、ちょっとしたブレイクには“うん!”とか“ハイ!”とか合いの手のような声を挟みながら、立ち上がるは、足踏みするは、ひろみワールドは止まるところを知らない感じ。天晴でした!

そしてこの日唯一のMCがあったのは、この曲が終わったあたりだったでしょうか? ピアノへの集中力とはうってかわって、相変わらず脱力系のおしゃべり。まず、急な決定であったのにも関わらず集まってくれたお客様への謝辞を述べ、今、ミュージシャンとして自分に出来ることをやる、的なことを話していました。ちなみに上原さんは、今回の出演料を被災地復興のために全額寄付するそうです。やはり侠気を感じますね~。そしてMCの最後には、短い時間なのであとはピアノが沢山喋ってくれます、的なことを言って拍手喝采を受けてました。

MC後の中盤で圧巻だったのは「BQE」ですね。ここでは拍子木を外すという裏技が炸裂する訳ですけど、その状態でソフトペダルを踏むと、変な感じに音がうにゃっとずれるようで、序盤はそんなトリッキーな技で観客を翻弄しつつ、徐々に集中力を増していく上原さん。何所でスイッチが入ったかは分かりませんでしたが、気がつけば何かに取り憑かれたような猛進モード。鍵盤に拳を叩き付けるは肘で叩くは、感情の高ぶりがビンビンに伝わってくる。もう唸りっぱなしですし、表情も正直ちょっと怖かったり。まさに鬼気迫る感じ。そしてそれが頂点に達した瞬間にパー!と視界が開ける展開。この瞬間の高揚感っていうのは何度体験しても堪らないものがありますよね。ちなみにこの曲はニューヨークの高速道路をイメージして作った曲らしいのですが、NYってこんなに凄いの?みたいなことをいつも思います…。

そして「Haze」。これは唯一最新作「VOICE」からの曲ですが、これ良い曲ですよね。上原さんの曲というのは、スローな曲であっても、ある種の瞬発力のような感情表現の積み重ねで形作られてるように感じますが(ライヴでは特に)、しかしこの曲は大きく緩やかな流れが、繊細且つ美しいメロディーを優しく繋いでいくような感じで、それがひたひたと心に染み込んでくる。上原さんの曲の中ではかなり異質なタイプだと思うのですが、異質ゆえに輝いてましたね。まるでピアノと同化するような上原さんの感情表現にもうっとりでした。

本編ラストは「I Got Rhythm」。前半のラグタイム調の部分が、トイピアノを思わせるような可愛い感じだったので、初めは「The Tom And Jerry Show」へ繋がるのかと思いきや、「I Got Rhythm」でした。この曲でも途中、弦を押さえてノリノリでベース・プレイ。有名ジャズ曲のフレーズを織り交ぜたりして盛り上げてました。そして後半は一気にスピーディーな展開になだれ込む。ここからはもう怒濤の如く。鍵盤の上を縦横無尽に動き回る手の動きの目まぐるしいこと! そしてそれをこれ以上に無いほど楽し気な表情で弾きまくる上原さん! そして左手が繰り出すブギっぽいリズムのグルーヴ感は相変わらず最高!! そして椅子から飛び降りるような勢いで雪崩の如く終了。天晴!!!!

当然、鳴り止まない拍手に応えてのアンコール。そして弾き始めた曲は「Lean on me」。これビル・ウィザーズですか! 素晴らしかったですね~。なんか泣けてきましたよ。しっとりとしながらも、力強く包み込むようなタッチが感動的でした。しかも上原さんはサビで完全に「Lean on me ~ 」って歌ってましたからね。ちなみに邦題は「私を頼りに」です。うん、やっぱり侠気だ!



さて、次はブルーノートでタップダンサー、熊谷和徳さんとの共演です。楽しみ!


ちなみにこの夜のセットリストはこんな感じだったようです。間違ってましたらごめんなさいね。

1. Old Castle, by the river, in the middle of a forest
2. Capecod Chips
3. Sakura Sakura
4. BQE
5. Haze
6. I Got Rhythm
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7. Lean on me