七月大歌舞伎 昼の部 21(金)
泉鏡花作品4連発上演~ 3本目!
なななんと~本日は、昼夜通し~。
久しぶり~。ああ、無謀~。
でもここは1階!さっきまでとは違う視界を楽しみまっしょー
作:T12(1923)年 雑誌「女性改造」に発表
初演:S52(1977)年 俳優座劇場
人形使いの爺(歌六)が酒に溺れている傍らで、
軒下にぶら下がっているのは、静御前のお人形…。
やって来た縫子(笑三郎)が傘を差し掛ける。
人形が~!!あれはただの木偶だヨ。
なのに、「濡れちゃって可哀相~」って思っちゃうのよ。
そしてお人形の後ろには、
華やかに淑やかに咲いている遅桜…。
ここ修善寺で、夫人・縫子は画家・島津(段治郎)に会う。
家からの追ってをくらますために、偽の夫婦になって欲しい。
先生、私はここに死んで流れています、この鯉の、ほんの死際、
一息前と同じ身の上でございます。
…島津は申し出を拒んだ。
縫子は大胆にも、人形使いに近づいて…。
私は何にも世の中に願いはなし、何の望みも叶わなかったから、
お前さんの望むこと一つだけなら、きっと叶えてあげようと思うんだよ。
望んでおくれな。お爺さん、叶えさしておくんなさいな。
自らの身体を血が出るまで!息が止まるまで!打って欲しいー。
そんな願いを聞き入れる縫子。
山吹の花が咲く丘の上、遠くに伊豆の連山。
人形遣いの背に負ぶさる静御前は…
生きてるよー。艶かしいよー。
彼はその昔、若い女性を死なせたことがある…。
その罪滅ぼしに痛めつけられたい!
画家は、2人のその異常な光景を見た。
人形使 その上の願いと申せば、この身体が粉々になりますまで、
朝に晩に、毎日毎夜、お美しい奥方様の折檻を
受けたいばかりでござります。
夫人 爺さん。私がお前と、その溝川へ流れ込んで、十年も百年も、
お前のその朝晩の望みを叶えて上げましょう。
泉鏡花集成7(ちくま文庫)で、先に原作を読んでみた。
胃が引っ繰り返るような気分…。
人形使いも縫子も、演じる俳優はテンション上げて、集中して挑まないと…。
台本を初めて読んだ時の、嫌悪感や違和感…。
そういうものを消化して役作りするのは大変。
それなりに順序立てていかないと、こんな境地に達しない~。
私なら一日これ1本しか出来ない~。
でもって、日を追う毎にヤツレテ行きそう…(演る日は来ないっつ~の)
縫子は、少女時代に画家に焦がれていた。と告白。
その愛し方も「ヒステリーだ。気が変だ。」と言われる程!
話しを聞くと確かに異様…。
今もまたこう言う。
画家 貴女のそのお覚悟は、他にかえようはないのですか。
夫人 はい、このまま、貴方、先生が手をひいて旅館へお帰り下さる外にはー
ビクビクしているのは、画家ただ一人。
私には決心が着きかねます。卑怯に回避するのではありません。
仕事が忙しいー。しかし一月、半月、しばらく待って下さるなら、
その間に、また、覚悟をしてみましょう。
それじゃぁ遅せえんだヨ!この瞬間が勝負なんだヨ!
完全に腰が引けている画家・島津。
画家 爺さん、きっとお供をするかね
人形使 犬になってー馬になってお供をするだよ
貴方、そのお持ち遊ばすお酒を下さい。ーそして媒酌人(なこうど)をして下さい。
死んで腐った鯉を食べる縫子と人形使い。
今生の別れに今一度御手を…。
夫人 (草に手をつく)貴方、おなごり惜しゅう存じます
画家 私こそ。(喟然とする)
傘を差し出す画家。
それは、彼が出来る精一杯のこと。
夫人 世間へ、よろしく。…さようなら、…
画家 御機嫌よう。
-南無大師遍照金剛-
-南無大師遍照金剛-
画家 うむ、魔界かな、これは、はてな、夢か、いや現実だ。-
(夫人の駒下駄を視る)
ええ、おれの身も、おれの名も棄てようか。
いや、仕事がある
「仕事がある」この一言に場内大爆笑~!
爆睡していた人はオメメパッチリ!
”なんじゃこりゃ~”と観ていた人も、
”イイワ、イイワ”と観ていた人も、
”ここに全うな人間がいる”ってホッとするのか。
自分の心を見透かされた照れ隠しか。
舌の裏がザラつくよーな。
例えば、マンガ『どろろ(どろろと百鬼丸)』
※百鬼丸の声は若かりし頃の那っちゃん(野沢那智)でちゅぅぅぅ。
覗いてはいけないものを見ているよーな。
例えば、竹中直人の映画『無能の人』
”グロテスクとエロス”。そういう空気が感じられず残念…
『天守物語』とはまた違った意味で
”具現化するのはスーパーE難度”だ!やっぱりだ…
人形使いを竹中直人あたりでチョット観たい。
香川照之は?ナマっぽ過ぎるかなぁ。
玉三郎が演った時(1980年)は、天本英世だったのか!
じぇんじぇんイイだろ~な~。観たかったな~。
三島由紀夫演出で観たかったな~
生写真コーナーには、中日劇場の公演『雪之丞変化2006』の物も!
ビビビックリ~。今までこんな趣向なかった。
まさに澤瀉屋month!
7月の歌舞伎座は、こ~でなくっちゃ!
こちらのレポもどうぞ
7/7/~31
昼の部 「夜叉ヶ池」 「海神別荘」
夜の部 「山吹」 「天守物語」
ランキング参加中、あなたの清き一票を(笑)
お、夏休み!PCから離れるって快適です(笑)。GWの時そう思いました~。不思議な経験だったけど(笑)
舞台を観るより原作を読んだ方が、イマジネーションが羽ばたいたんですが、
舞台では、私にはひたすら「静御前」のお人形が気になって…。妖しかったです。生きているよーな。
だから、人形使いが畏まって膝ついてお辞儀するんだろうな。
そんなにまで想っている静御前を捨てて、縫子について行くんだなぁ…。という。
人形はマジシャンです。文楽は楽しいですヨ(話ズレた…)では、よい夏休みを!
PCから離れた数日は、多分、物足りなさと不安にさいなまれる
のではないかと。
(^^;
タイトルだけ書いてた何本かで、これはアップできてホッとしました。
トラバさせていただきます。
中々厳しい劇評もあるようですが、私は楽しく観れたという感想です。
(*^^*)
当方の拙いレポを紹介して下さいましてありがとうございました。
私はガッカリ度がかなり高かったです。期待する「鏡花ワールド」は、初日でも楽日でも描けていなかっただろうと推察します。
澤瀉屋一門に鏡花を体験させる試みに、何故「山吹」を持ってきたのか。様々な面から見て歌舞伎俳優には心底難しい演目だと思います。
言葉で現すと「倒錯」ですね。「心理劇」を超えたその空間を作り出さねば、鏡花ワールドではない。と私は思います。「本能や感情の異常および人格の異常によって、社会的規範に反する行動を示すこと」(広辞苑より)
この座組で4本上演するということが先にあるとなると、これがベストキャストかなあと思います。泉鏡花が初めてな澤潟屋の若手は玉三郎丈の指導によくついてきて成長してくれたなあと感慨深いものがあります。
現代劇ばかり見ている友人が夜の部を見て「天守物語」より断然「山吹」が面白かったと言ってました。様式美は少ないですが、心理劇としての満足度が高いと私も思います。歌舞伎でも心理劇的な演出を大事にしている玉三郎丈の今回の歌舞伎座での上演の決断はアリ!でそんなに失敗ではなかったと思っております。
しかしながら若手だけに楽日に近ければ近い方が初日に比べての完成度は格段に高かったでしょうねえ。初日から毎日演じる中で成長する度合いが高いでしょうからねえ。何度も観る余裕がない時に若手の舞台ほど楽日に近く観ることにしているのはそのためです。
「天守物語」もなるべく早くアップできるように頑張ります。
スゴイっっ!やっぱり天本英世&玉三郎の世界は筆舌に尽くし難い。って感じだったんでしょうね。ワープしてナマ観劇したいです~。
静御前のお人形は本当に…。”文楽”でも感じる妖しさでした。
コメント&TBありがとうございます。
天本英世が本当に美しかった頃の玉三郎に打ち据えられる場面って、劇場が静まりかえってしまって凄く緊張したのを覚えています。二人が舞台中央を奥に向かって歩き出すところも独特な空気が流れて…。
今回の千秋楽の「山吹」はズッとよくなってましたよ。桜の木に立てかけられ捨てられる静御前の人形が効いてましたね。よい幕切れだと思いました。
>こういった内容に対する観客の習熟度も重要なのかもしれませんね。
ハ~…ため息出ます…なんだか…。
「三島演出、天本の人形遣い」これなら、ガガガ~ッと世界に吸い込まれて笑う暇なかったかも。そういう有無を言わさぬパワーが必要かも…ネ。
拙宅の記事もTBさせていただきます。
>「仕事がある」この一言に場内大爆笑~!
正直、笑っていいものかどうか躊躇しましたよ。
こういった内容に対する観客の習熟度も重要なのかもしれませんね。
私も三島演出、天本さんの人形遣いで観たかったです。
そうですね。気を許すとズルズルと7月モードになりますね(いかんいかん)。前を見なくては!(笑)
コメント、ありがとうございました。
・・・・・・ごめんなさい、八月に入ったというのに気がついたらボーっとして七月に舞い戻りそうなので、お礼のみで。