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たばこロード(中野重治編)その11/完

2017年10月24日 | 小説・映画等に出てくる「たばこ」
【313ページ】
退屈で仕方がない。そこに押入れがある。押し入れは百姓の家(うち)にはない。小使部屋は町風に出来ているのだろう。ここにふとんがはっていて、おばさんはここが家でここで泊まるのだろうか。置いて行ったおばさんのキセルがある。何かの空缶のなかに袋のままのたばこがある。「はぎ」ではなくておばさんは「あやめ」を吸っている。

[ken]私は「はぎ」という刻たばこを知っていましたが、「あやめ」については記憶にありませんでした。今回、講談社の「たばこおもしろカタログ図鑑」で調べ、画像もいくつか写真で撮り、本ブログでも使用・引用させていただきました。
中野重治さんの『梨の花』(岩波文庫 緑83-3)は、1957~1958年にかけて発表されたのです。私が4~5歳の頃ですから、まさか60年も経って、これほどリアルに読めるとは思いませんでした。育った時代こそ異なりますが、育った農村の生活はさほど違っていなかったのです。良平少年はスズメを食べますが、私はスズメをどのように捕獲し、囲炉裏でどうすればこんがりと焼けるのかを知っています。そこまでは、中野重治さんも書いていません。
私が本書と若い頃に出会わずに、今になって出会うのも運命なのでしょう。中野重治さんとはだいぶ年齢が違い、生まれ育った地方も、同じ「福」で始まるものの、福井県と福島県では異なりますが、田おこし、田植え、稲刈り、稲束運びまで、同じような農作業を体験し、お惣菜やおやつまで共通点が多いことに、心底驚かされました。
何よりもビックリしたのは、「これらの話が小説に成り得ている」ことでした。その豪腕とマグマのような熱さに、心揺さぶられました。(終わり)
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