息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

古書店アゼリアの死体

2012-04-17 10:20:55 | 著者名 わ行
若竹七海 著

主人公・真琴はとにかく不運だった。
一生懸命働く普通の31歳。編集プロダクション勤務だから、
多忙な日々と理不尽なクライアントに振り回されているけれど、
その分年齢に対する無駄な焦りはない……はずだったのに。

編プロは倒産、気晴らしにホテルをとったら火事に巻き込まれ、
焼死体まで目撃するはめになる。不幸は不幸を呼ぶもので、
なぜだか新興宗教にまで追いかけられ、住まいまでも捨てる
はめに陥る。
やけくそで海辺の町へ向かい、「バカヤロー!」と叫ぶが、
そこにあったのは水死体。
わけがわからないままにぐんぐん進む巻き込まれ系物語。

ストーリー自体は地元の名家や財産争い、地元企業の力関係に
殺人が絡むというありがちなものだが、異色なのは盛りだくさんの
ロマンス小説のエッセンスである。
といっても、真琴の恋愛は脇役も脇役、ロマンスは真琴が店番をする
古書店アゼリアの本棚が舞台である。
オーナーの紅子は地元の名士、そして独身、ロマンス小説のエキスパート。
趣味と好みだけでつくられたような、そして潤沢な資金と豊富な知恵を
注ぎこまれたのがアゼリアである。真琴はその豊富な知識と本への愛を
見込まれて、宿と職にありつくことになったのだ。

ワガママなお金持ち、箸にも棒にも引っかからないのにとてつもない
美少女のお嬢様、名士の指示とあれば死体の身元までいつわっちゃう
医師、とキャラクターは濃い。警官たちはもっと濃い。
それなのにあまり嘘くさくならず楽しく読めるのはすごい。

ただ、残念ながら私はロマンス小説の知識がほぼ皆無。
巻末に解説もあるのだけれど、これってわかってる人が読んだら
100倍、いや1000倍も面白いのではないだろうか。

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