息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

アンナ・カレーニナ

2012-04-04 10:28:13 | 著者名 た行
レフ・トルストイ 著

文庫で全4巻の長編だ。
しかしさすがに名作。読ませる。

1870年代のロシアを舞台に描かれる結婚・恋愛、そして幸福や神への想い。
ペテルブルグに住む政府高官の妻・アンナは、兄夫婦のトラブルを解決するために
夫と息子を置いてモスクワに赴いた。そこで出会った将校・ヴロンスキーに魅かれ、
禁断の恋に落ちる。

兄嫁の妹・キチイはヴロンスキーに心を寄せており、かなわぬことから病に倒れる。

一度は想いを断ち切り、夫のもとに戻ったアンナだが、ヴロンスキーはあとを追う。
夫が世間体を気にして離婚を承諾しない中、アンナはヴロンスキーの子を出産し、
瀕死の状態となる。何もできない事実に絶望するヴロンスキーだったが、やがて
手に手を取って外国へと逃れる。

キチイの病は癒え、以前から想いを寄せていた純朴な地主・リョーヴィンと結婚する。
人生について深く考えるリョービンは、時間と愛情と誠実さでよき家庭を築く。

帰国したアンナとヴロンスキーは偏見の目にさらされる。離婚も遅々として進まず、
絶望のあまり、アンナは列車に身を投げる。
そして残されたヴロンスキーは義勇軍を編成し、トルコとの戦争に向かう。

って書くと、不倫は罪、神は真実という勧善懲悪的な物語に思えるけれど、
そうでもない。根底に走るものがそうであっても、絡み合う複雑な人間関係と
お互いに与え合う影響、そしてそれがもたらす結果はさまざまで、しかも
それぞれが成長をしていく。

仕事一筋のアンナの夫だが、妻の事件で嘲笑を浴びてもくじけず、息子の将来のために、
いずれ捨てられるであろう妻のために耐えることを選ぶ。
母に捨てられた息子は、不安定な心を抑えつつ、父の理想の子であろうとする。
そしてアンナは自分の心に正直に生きようと願う。

アンナの物語は華やかだが、実はメインの座はリョービンにある。
彼が死について考え、神との関係をつきつめていく場面は本当に深い。
夫婦愛・親子愛をじっくり育てる人柄は実に魅力的。
そして、都会的な物語に農村という視点が加わって面白さが増す。

気合を入れないとなかなか読めないけれど、
当時の風俗・歴史・文化を理解するのにも役立つ。

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