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心に狂いが生じるとき―精神科医の症例報告

2013-10-15 10:01:06 | 著者名 あ行
岩波明 著

狂い、というととても激しいものに思えてしまうのだが、
ここで紹介されている症例は、依存、摂食障害、うつなど、
いわば身近なものが多い。

どれも本人はもちろん、周囲の人たちの苦しみは大変なものだ。
その一方で、初期に適切な対応がなされていれば、または
せめて正しい理解がなされていれば、こんなに重くならなかったのでは、
と思えるものも多い。

正常と異常の境目はとても曖昧で、それをふみこえるのはあまりにもたやすい。
そして精神科のハードルはまだまだ高くて、恐怖心が先に立つ。
しかし、現在治療法も薬も進化している。早めに手を打つということしか
素人にできることはなさそうだ。

とても印象深かったのが「精神鑑定の嘘」だ。
事件が起こり、その容疑者が精神に異常があるとみとめられた場合、罪に
問われないことがある。それを決める鑑定がこんなに難しいものだったとは。
確かに自分自身に責任がもてない状況になる病気はあるだろう。
賠償などは絶対にできないどころか、家族や周囲の人まで地獄に突き落とされる。
それを保護し、治療の機会を与える、というのは確かに必要なことだろう。
でもこんなあやふやな部分がわかってしまうと、いったい責任とはなんだろう、
病気とはなんなのだろうと考え込んでしまう。

精神の病は増加している。理解が進んだからこそ認識されたという数を差し引いても、
増加はまぎれもない事実だろう。
そんな社会の中で生きていくうえで、知っておきたいことがここにあった。

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