息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

竜が最後に帰る場所

2014-05-20 10:57:35 | 恒川光太郎
恒川光太郎 著

手が届きそうなすぐそこに見え隠れしていそうな、
それでいて手に取れないもどかしさ。
著者の生み出す世界は私にとってそんな存在だ。
既視感がある。
懐かしさがある。
そこに行ってみたい。
戻れなくてもいい。
それなのに行けないことが悲しい。

この5編もそれぞれにしっかりとした世界観が構成されながら、
各々個性的な作品だった。
時間の感覚も独特だ。
行きつ戻りつしたり、長い時間をかけてつくりあげられたり、
世代を超えて受け継がれたり。
いったいどこからこんな物語が生み出されるのだろう。

最も好きなのは「夜行の冬」。
錫杖をもった赤い帽子姿の女が先導する徒歩の旅。
行きついた町は自分がこれまで住んでいた場所のパラレルワールド。
そこで旅をやめてもいいし、さらなる世界を求めてまた
歩き始めてもいい。ただ、脱落したものは闇にのまれる。
とても怖くそれでいてファンタジック。
赤い女の脈絡のない姿には、逆にリアルを感じてしまう。

著者の作品はずっと読みたいと思う。

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