宮尾登美子 著
『櫂』などで読者にはお馴染みの主人公・岩伍。
著者の実父がモデルとなっている。
真っ直ぐで熱くなりやすいゆえに、若い頃はさんざん暴れたものであるが、
芸妓娼妓紹介業を人助けと思い込み、その溢れんばかりのエネルギーを商売に注ぎ込む。
その仕事の中で見聞きしたさまざまな出来事や出会いを語る形式だ。
華やかだった戦前の土佐の花柳界。
それだけに海千山千の人々が集い、その影に商品としての女たちの涙があった。
そこを度胸ひとつで生き抜いてきた岩伍。
ある意味とても純粋なところがあって、それゆえに翻弄されることもある。
「三日月次郎一件について」はまさにそんな話。旧制中学の教師から妻を売りたい、と
もちかけられた岩伍は、自分の学歴コンプレックスもあって一肌脱ごうとする。
しかし相手は岩伍に大金を出させたまま姿をくらまし、その影には三日月次郎という
博徒の姿がちらつく。
曲がったことが許せない岩伍の次郎との一騎打ちは手に汗握る場面で、のちに
「土佐一番の度胸者」という評判が商売を助けることになる。
「すぼ抜きについて」では一筋縄ではいかない人間相手の駆け引きが語られる。
「満州往来について」では、大金が動く戦前の満州で一旗揚げようとする人々と、
良家の子女として育ちながら、父の病のために売られた三姉妹の数奇な運命を描く。
これはいわばごく普通の感覚の少女たちが突き落とされる話だけに心が痛む。
娘たち三人ともが苦界に落ちても生きる術を知らず、暮らしを変えられない
お嬢様育ちの母親がなんとも切ない。
「博徒あしらいについて」では、花柳界とは切ってもきれない裏世界との関わりが
語られる。
どれも綿密な取材と、その地で育った著者の記憶に基づいて書かれている。
岩伍はとても魅力的な男だ。
ただし身近にいなければ。
喜和の苦労がつくづくわかる一冊でもある。
『櫂』などで読者にはお馴染みの主人公・岩伍。
著者の実父がモデルとなっている。
真っ直ぐで熱くなりやすいゆえに、若い頃はさんざん暴れたものであるが、
芸妓娼妓紹介業を人助けと思い込み、その溢れんばかりのエネルギーを商売に注ぎ込む。
その仕事の中で見聞きしたさまざまな出来事や出会いを語る形式だ。
華やかだった戦前の土佐の花柳界。
それだけに海千山千の人々が集い、その影に商品としての女たちの涙があった。
そこを度胸ひとつで生き抜いてきた岩伍。
ある意味とても純粋なところがあって、それゆえに翻弄されることもある。
「三日月次郎一件について」はまさにそんな話。旧制中学の教師から妻を売りたい、と
もちかけられた岩伍は、自分の学歴コンプレックスもあって一肌脱ごうとする。
しかし相手は岩伍に大金を出させたまま姿をくらまし、その影には三日月次郎という
博徒の姿がちらつく。
曲がったことが許せない岩伍の次郎との一騎打ちは手に汗握る場面で、のちに
「土佐一番の度胸者」という評判が商売を助けることになる。
「すぼ抜きについて」では一筋縄ではいかない人間相手の駆け引きが語られる。
「満州往来について」では、大金が動く戦前の満州で一旗揚げようとする人々と、
良家の子女として育ちながら、父の病のために売られた三姉妹の数奇な運命を描く。
これはいわばごく普通の感覚の少女たちが突き落とされる話だけに心が痛む。
娘たち三人ともが苦界に落ちても生きる術を知らず、暮らしを変えられない
お嬢様育ちの母親がなんとも切ない。
「博徒あしらいについて」では、花柳界とは切ってもきれない裏世界との関わりが
語られる。
どれも綿密な取材と、その地で育った著者の記憶に基づいて書かれている。
岩伍はとても魅力的な男だ。
ただし身近にいなければ。
喜和の苦労がつくづくわかる一冊でもある。
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