息をするように本を読む

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ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

風の又三郎

2013-02-19 10:52:27 | 著者名 ま行
宮沢賢治 著

たいして外出もしないが、それでも冬は寒い。
北風が吹きすさぶ日は、春が待ち遠しい。

風といえば、風に乗ってやってきた不思議な少年を思い出す。

谷川の岸べにある小さな小学校に転校生がやって来る。
小さな集落の顔見知りばかりの暮らしの中、それだけでも大ニュースだ。
しかも、彼はどこか謎めいていて、子供たちは風の精・風の又三郎ではないかと思う。

行動の違和感、そして遊びに行った先でのアクシデント。
そこで垣間見せた不思議な力。
生まれた時からローカルルールの中で暮らしてきた子どもたちが初めて知るよそ者は、
次々と驚きをもたらした。
そんな環境なのに、それほど排他的ではないのはなぜなのだろう。
転校生のもつ雰囲気にのまれてしまったのか、日々の遊びを通じて連帯感が
生まれたからなのか。

ガラスのマントを羽織って空を飛び、子供たちを溺死や遭難から守る少年は、
どこからどこまでが現実だったのか、わからないままだ。
成長の過程にあり不安定な少年たちが見た夢なのか。
伝説にとらわれすぎた妄想なのか。

風のように現れた少年は、やはり風のように去っていく。
9月1日にやってきて、9月12日には昨日転校したと告げられる。

なんだか北風に乗ってきたイメージがあったのだが、これって秋の初めの話だったのだな。
今回読み返して気づいた。
木枯らしではなく野分だ。
ものすごい季節外れ。記憶違いも甚だしい。
きっと「北風小僧の寒太郎♪」との混同だと思う。これは歌です。

子供でも理解できるのに、詩のように美しい。
いろいろな読み方ができる作品だ。

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