哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

大御心と私たち(週刊新潮今週号の「人間自身」)

2006-08-27 03:43:15 | 哲学
 池田晶子さんの週刊新潮連載「人間自身」今週号は、「大御心と私たち」という題でした。最初の一文にまずびっくりします。


「「これが私の心だ」という昭和天皇の発言に、私は感動した。」


 デリケートな話題に物怖じせずに斬り込む態度は、切味鋭い言葉の刀を持つ池田さんならではです。当然、池田さんは一切の意見を持ってないはずですし、上の後の文章でも、そもそもこの言葉の真実性も問題にしていません。しかもさらにこんな文章もあります。


「その方の言葉は神の言葉なのである。」


 池田さんはもちろん、神の言葉だからどうだとか言っているのではなく、単に言葉のもつ強い力というものに感心せざるを得ないことを表現しています。だから「これはまさしく詩ではないか」とまで書いておられます。

 そしてさらにまたちょっと驚く文章を書いておられます。


「意味不明の条文から成るあの憲法は、ポエムのようなものである。」


 憲法学者が聞いたら怒りそうですが、池田さんには何らの意図・意見はありません。「意味はよくわからないが、崇高でありがたい」のが、ポエムなのだそうです。国家の基本法がポエムでいいのかどうかは、そもそも問題ではありません。

 今回は、最後の方に最も池田さんらしい文があります。


「言葉のうえの議論をやめ、現実に目覚めよなどと、野暮な人間は口走る。逆である。言葉を愛することのできない人間に、現実という意味はわからない。すべての議論が言葉により為されているという現実について、考えたことがありますか。」


 何となくこの雑誌の後ろの方で過激な発言をされている連載執筆者のことを指摘しているように見えるのは、私のうがった見方でしょう。

 池田さんが常々書いているように「言葉により喧嘩(戦争)が起こり、言葉により勇気づけられる」、まさに毎日の私たちの生活に起きているその通りのことを、「現実」として池田さんは表現しているだけです。