哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

Nobody 一周忌

2008-03-08 09:30:30 | 時事
 あれから1年になります。亡くなられたのは2月下旬ですが、新聞発表等で世間に知らされたのは、ちょうど1年前の3月の今頃です。

 ところで、池田晶子記念という賞が創設され、第1回の受賞が件の川上未映子さんだそうです。


(池田晶子記念)わたくし、つまり Nobody賞


 このNobodyですが、“自分”というものが何者でもない、ということは池田さんは何度も書いておられます。上のサイトで紹介されている「墓碑銘」の「さて死んだのは誰なのか」というのは、その最後のものといっていいでしょう。この言葉は、ローマの墓碑にあるという「次はお前だ」という言葉に触発されたものです。その文章を少し引用してみましょう。


「他人事だと思っていた死が、完全に自分のものであったことを人は嫌でも思い出すのだ。・・・こんな文句を自分の墓に書かせたのはどんな人物なのか、・・・諧謔を解する軽妙な人物である一方、存在への畏怖に深く目覚めている人物ではないかという気がする。生きている者は必ず死ぬという当たり前の謎、謎を生者に差し出して死んだ死者は、やはり謎の中に在ることを自覚しているのである。」


 「次はお前だ」という言葉のもつ、今生きている者を死へ引きずり込むような、圧倒的な吸引力は、池田さんの誉める通り、とても秀逸です。

 池田さんの「さて死んだのは誰なのか」と併せて、存在の謎を考えるにはいい言葉でしょう。