恐ろしい記憶、唯一無二の表現

台風7号はゆっくり北西へ、島岡美延です。連休前には首都圏直撃コースを覚悟しましたが、明日、紀伊半島に上陸しそう。もちろん、台風から離れていても大雨、強風は油断できず。

戦争関連番組を見ながら、子どもや若い世代への教育、大人の行動が国民の空気を作り上げていったことに辛く、苦しくなります。ピノチェト政権下のチリに実在した〈コロニア・ディグニダ〉。規律正しい特別な教育を受けられると入れられた寄宿舎で、少年たちは強制労働や性暴力被害に。

そこからインスパイアされたという映画『オオカミの家（19日公開）』をご紹介します。チリ南部のある施設から脱走し、森の中の一軒家で二匹の子ブタと出会った娘マリアの身に起きる悪夢のような出来事を描いた物語。

レオン＆コシーニャ監督の〈異形の〉ストップモーション・アニメーションは全編カメラが止まることなくワンシーン・ワンカットで空間が変容し続ける――。怖くて、暗い。でも絵画や立体造形の動きに釘付けになる唯一無二の世界。