風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

G20大阪・夏の陣

2019-07-02 00:54:22 | 時事放談
 G7ではもはや世界を代表できないと言われて久しいが、G7でも纏まるのが難しいこのご時勢に、G20を議長国として取り仕切るのは、さぞ大変なことだったろうと、これは安倍さんをヨイショするつもりはなくて、そう思う。貿易問題では「保護主義と闘う」との文言が2年連続で見送られたのは止むを得ないにしても、「自由で公正かつ無差別な貿易・投資環境を実現し、開かれた市場を保つ」ための、ただの(と言っては失礼だが)努力目標と明記するだけに終わってしまったのは物足りない。辛うじて、デジタル経済に関してデータ流通の国際ルールづくり「大阪トラック」や、プラスチックごみの流出による海洋汚染を2050年までにゼロにする「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を立ち上げたのは良いが、総論賛成、各論はなかなか困難が予想される。とにかく難しい時代になってしまったものだ。
 このデジタル経済をテーマとした会合で、身長190cmのトランプ米大統領、175cmの安倍首相、180cmの習近平国家主席の三人が仲良く並んで、首脳会議(サミット)だというのに普通っぽい会議室に狭っ苦しく肩寄せあったすし詰め状態だったのが話題になった。その写真で見るトランプ大統領と習近平国家主席の表情の不機嫌そうなこと・・・狭いからではなく、そもそもそうした全体会合には関心がないのがありありで、個別会合で頭が一杯だったのではなかったかと想像させられる。この三人に関わることで、三つばかり印象に残った。
 一つは、その個別会合で最も注目された米・中で、お互いに立場を慮ったのか、歩み寄りを見せ、ひとまず「休戦」と報道された。しかし根本的には何も変わっていようはずはなく、長期戦を覚悟せざるを得ないのだろう。
 二つ目、トランプ大統領が、帰りに韓国に寄った際、金正恩委員長と電撃会談を行なった。実質一日の内に、トランプ大統領のツイッターの呼び掛けに金委員長が応えたという(習近平国家主席の仲介は水の泡?)、いかにもトランプ大統領らしいスタンドプレイだ。訪韓を懇願されたところで文在寅大統領とは話すことがない手持無沙汰の解消のためか、あるいは6月の文藝春秋に掲載された麻生幾さんの論考にあったように、アメリカの関心(麻生さんに言わせればフットプリント=軍事的な重心)はもはや朝鮮半島から中国に(いや、中国に中東情勢も加えて、インド太平洋だと、私としては言っておこう)、移ってしまったのか。金委員長としては、現職のアメリカ大統領に初めて北朝鮮の地を踏ませ、個人的な関係の強さをアピールできて、さぞ満足だったろうが、トランプ大統領の中では、麻生さんが言われるように、北朝鮮の軍事的脅威のレベルは決して下がっていないものの、現在のままで(すなわち経済制裁は効いており、これ以上の北朝鮮による挑発は自殺行為になることを金委員長自身も分かっていることから)封じ込めることが可能と判断し、プライオリティを下げているのだろう。急がないというトランプ大統領の度々の発言にも、そのあたりの感覚が滲んでいるように思われる。そして文大統領は終始、蚊帳の外で、好々爺の如く見守るだけだった。
 三つ目、議長として多忙ということにして、安倍首相はG20で韓国大統領と会う時間を作らなかったが、その韓国に対して輸出規制を強化する方針を発表した。韓国から徴用工問題に対する経済報復との反発があるであろうことを承知の上で、しかし徴用工問題では韓国の余りに誠意のない理不尽な対応に堪忍袋の緒が切れて、他方で「自由で公正かつ無差別な貿易・投資環境を実現し、開かれた市場を保つ」ためとG20の首脳宣言で謳っておきながら、福島などの水産物輸入禁止措置があったり、北朝鮮による瀬取りを見逃していたりと、「貿易管理について韓国と一定期間対話がなされていない」(経済産業省)し「信頼関係の下に輸出管理に取り組むことが困難になった」(同)として、抗弁できると判断したのだろう。過去、贖罪意識もあって韓国に対しては控え目な対応をしてきた日本にしては、なかなか大胆な打ち手である。
 いずれにしても表面上の派手さの陰で、実務上は波乱の幕開け(再開)となりそうだ。
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