風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

アジア紀行(中)

2014-07-15 00:18:35 | 永遠の旅人
 前回の続きで、今日は、シンガポールでも中国語放送を流し続ける中国の国営テレビ局CCTVを見たときの雑感です。
 外食後、ホテルに戻ってシャワーを浴びて、まだ飲み足りなく感じて近所のコンビニまでビールとつまみを買いに行って、英語の字幕が出るので何とはなしに見ていました。7月7日、七夕の日は、中国が言う日中戦争、私たちが子供の頃に習った日華事変または支那事変のキッカケとなった盧溝橋事件からちょうど77年目だったようで、日本の「新しい教科書」に絡めて、日本の若者が正確に近代史を理解していないことを嘆く日本人の有識者の声を、もっともらしく伝えていました。日本の進歩的知識人(というのは今どき死語でしょうか?)は、日本の良識派として中国共産党に利用されている(国益を損なっているとまでは言いませんが)現実を、知ろうとも思わないのでしょうね。
 こうした日本の(中国に都合の良い)映像利用も含めて、中国はディスインフォメーションを垂れ流し続け、心ある国際社会から眉を顰められています。また、最近で言えば、イラク問題に関して、中国はイラクの石油業界への最大の投資国としてイラク政府に一定の影響力を有していながら、通り一遍のコメントを出しただけで沈黙を守り続けており、世界に対しては「大国扱い」を求めながら、自らは大国らしく振舞う気がない、所謂ご都合主義も、心ある国際社会からは見透かされています。
 更に、最近、南シナ海と東シナ海における中国の海洋進出を巡り、敵の敵は味方という現実感覚からか、日本に急接近しつつあるフィリピンと日本の協力に対して、中国外務省は、「中国の台頭を封じ込める作戦の一部」と見て、安倍総理とアキノ大統領の共同声明に不快感を示し、フィリピン政府に対して「関係国は故意に緊張を高め、地域情勢に緊張と対立を招くような要素を増やすべきではなく、誠意を示して中国と同じ方向に進むべきだ」と言い放ったそうです。ニューズウィーク7/8号は、これを、アジアの盟主である中国に逆らったり、日本の味方をしたりすれば、痛い目に合うということらしい、と言い換えていました。ことほど左様に、最近は、近隣の小国に対して恫喝も辞さない構えです。
 CCTVに戻りますと、中国が目指すのは、ウソも100回言えば本当になる・・・ということだと、まことしやかに語られます。国際社会は心ある人たちばかりではなく、いかにも勿体つけてわざとらしいCCTVであっても、疑心なく無垢に目にする人は少なくないわけで、日本としても何らかの対策が必要であるのを実感します。目には目を、歯には歯を・・・と同じ目線で対抗するのではなく、全く異次元で、そう、政治的な駆け引きや権謀術数の苦手な日本人としては、日本人らしさを見せつけることだと思います。問題は、世界中で存在感を示すことです。ただ大人しく、つき従っていればよい、というものではありません。
 そのためにも、私たち自身が自信をもたなければならない。同じくニューズウィーク7/8号によると、フィリピン・アキノ大統領は、集団的自衛権行使を容認する日本国憲法の解釈変更に賛成し、「日本国民もそれを望んでいる」ことを前提に、「国際的義務を果たす日本の能力が強化され、両国の共通目標である平和・安定・相互繁栄に近づくならば、フィリピンは日本国憲法を見直す如何なる提案にも警戒の念は抱かない」、「日本政府が他国を助ける力を得れば、善意の国家にとっては恩恵あるのみだ」とも語ったそうです。そして演説の締め括りに、アキノ大統領は日本人に「過去のとりこにならない」ように呼びかけたそうです。
 これを読んで、マレーシア駐在時代の上司(マレーシア華人)から言われたことを思い出しました。「日本人は国際社会でもっとリーダーシップをとるべきだ」と。返答に困って、「いや、日本人は第二次世界大戦のときにアジアで侵略行為を行ったことから罪悪感を引き摺っていて、自信をもって行動するのを妨げられているのだ」と言い訳すると、「それは君たちの世代の問題ではない」と一喝されたものでした。同じ中華系でありながら、東南アジアで土着している華人は、中国共産党とは違って、過去に囚われることなく、現実的に今を生きているのだと感じたものです。それは、日系企業に勤める親しさからという理由によるものではないのは、狭い社会ながらも、近隣の知り合いや、不動産屋のおばちゃんやおねえちゃんや、マーケットのおじさんや、学校の子供繋がりで様々なバックグラウンドをもつ父兄も同じだったことからも明らかです。マレーシアの日本人と付き合うことによって祖国で受けた反日の歴史教育が間違っていたことを認識したと告白した韓国人がいたことは、以前、このブログでも触れました。
 安倍総理の積極的な外交姿勢が国際社会で評価されています。私たち一般人も、頑張って存在感を示したいものだと、これは、普通に海外にいれば多かれ少なかれ日本国を背負うことになる、また日本人の代表と見られざるを得ないことへの、ささやかな矜持の宣言でもありますが。
 上の写真は、シンガポールの新しいビル群の谷間に残るコロニアル調の建物(これは床屋ですね、中華街にて)。
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