風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

北朝鮮と国際社会

2017-03-21 01:42:50 | 時事放談
 金正男氏殺害事件で、北朝鮮とマレーシアの親密ぶりが明らかとなり、拉致問題で厳しく対応している日・韓そして米国以外は、それなりに付き合いがある実態も明らかとなった。平壌に大使館を置いている国は24ヶ国あるが、マレーシアはその内の一つだ(2003年に北朝鮮がクアラルンプールに、翌2004年にマレーシアが平壌に、大使館を設置)。因みに、アジアの国ではインド、インドネシア、ベトナム、カンボジア、ラオス、モンゴル、パレスチナが、欧州ではイギリス、ドイツ、スウェーデン、チェコ、ブルガリア、ポーランド、ルーマニアが、その他エジプト、ナイジェリア、ブラジル、キューバが、そして言うまでもなく悪友として中国、ロシア、イラン、シリア、パキスタンといった面々が大使館を置いている。東欧だけでなくASEAN諸国も多いことには驚かされる(が、そもそも北朝鮮と国交を樹立している国は161ヶ国もあるのだ)。また、反米のマハティール元首相の影響もあってか、2009年には両国間で相互ビザなしで訪問できる最初の国となった(シンガポールもビザなし入国を認めていたが、2016年に取り消した)ことも、今回、報道されていた。
 実はここ一年ほど、北朝鮮のフロント・カンパニーが、(従来からの中国・大連のほか)マレーシアやシンガポールなど規制の緩い東南アジアで暗躍しているという話を聞いていた。マレーシア・クアラルンプールには北朝鮮の偵察総局が活動拠点とする北朝鮮レストランや合営企業も存在するらしい。そもそも東南アジアの地が選ばれたのは、2005年に米国政府がマカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)を「マネーロンダリングに関与した疑いの強い金融機関」に指定した際、BDA内の北朝鮮関連52口座2500万ドルを凍結し、他の外国金融機関も北朝鮮との取引を避けたため、北朝鮮指導部の台所事情を直撃する事態になったのがきっかけと言われるが、日本で取り締まりが厳しくなったほか、昨年3月頃から、さすがの中国も国連制裁決議実行に前向きな姿勢を見せ始めると、重点的活動を中国から東南アジアへ移し、とりわけ隣国インドネシアとともに「北朝鮮人の出入りに“寛容”な国」(西側外交筋)で知られるマレーシアが利用されるようになったようだ。
 それにしても貧しいはずの北朝鮮が、何故、核開発やミサイル発射実験を繰り返すことが出来るのか。かつて、偽のドル紙幣と麻薬が資金源だと言われたことがあったが、そんな細々としたものではなさそうだ。北朝鮮には開発競争力のある地下鉱物資源が約20種類あり(石炭、銅、金、黒鉛、マグネサイト、亜鉛など)、韓国によると、その潜在的価値は韓国の22倍にあたる推定6986兆ウォン(約640兆円)に上るという。中国が、国連制裁の網の目をかいくぐり、人道支援の名目で石炭を買い続けていたのは有名な話だ(今回の件で、年内は購入しないと発表したが)。さらに武器輸出や軍事支援も行っている。
 このあたりについて、昨年夏、北朝鮮の建設会社がナミビアの大統領府の建築を請け負うといった浅からぬ縁が某テレビ番組で紹介されたので、調べたことがある(http://blog.goo.ne.jp/mitakawind/d/20160707)。確かにナミビアとの友好関係はあらゆる分野に渡っているようで、北朝鮮の武器商社で、米国の制裁対象になっている朝鮮鉱業開発貿易会社の要員らが駐在し、同じく北朝鮮の万寿台海外開発会社グループが秘密裏に弾薬工場を建設していたとの話もあった(ナミビアは、国連・専門家パネルの報告書を受け、昨年6月に両社との取引を止めることを発表)。その他、北朝鮮は赤道ギニアから大統領の警護システムなど巨額のIT事業を受注しているとか、第4次中東戦争の際に北朝鮮から空軍パイロットの「助っ人」を送ってもらったエジプトも国連制裁に協力的とは言えないとか、クーデターや内戦の絶えなかったウガンダで初めての戦車部隊を訓練したのは朝鮮人民軍の顧問団であり、近年においても、北朝鮮高官の訪問が続いていた、といった情報もあった(DailyNKによる)。
 Wikipediaは「朝鮮民主主義人民共和国の国際関係」について記述しており、意外な二国間関係が生々しく登場する。北朝鮮は(イランに核開発の支援を行っているのは知られているが)かつてイラン・イラク戦争時には非公式に兵員や兵器と軍事顧問でイランを支援したとか、キューバ革命以後、北朝鮮はキューバと反米を共通政策に友好関係を保っている(キューバはそのため韓国と国交樹立していない)とか、シリアとの間にも軍事交流がある(シリアはそのため韓国と国交樹立していない)とか、ジンバブエとは1980年、軍事的な交流を行う合意文書に署名し、その後、ジンバブエ第5旅団として知られることになる兵士を訓練するため、106人の北朝鮮の軍事顧問団を派遣したとか、ブルガリアは冷戦崩壊後も活発な関係を維持し、平壌の外国語研究所にはブルガリア語科がまだあるとか・・・。
 折しも、北朝鮮で5回目の核実験が行われた9月初めに、昨年4月まで国連安保理の北朝鮮制裁委員会で専門家パネルのメンバーを務めていた古川勝久氏が時事通信のインタビューで、アフリカ諸国などでは、そもそも対北朝鮮制裁決議が知られていない、などと語られていたのを見て、納得した次第である。
 北朝鮮は、核開発にせよミサイル実験にせよ、また今回の金正男氏殺害では白昼堂々、空港というオープン・スペースでVXなる化学兵器を使うなど、国際社会の鼻つまみ者になりつつあるのは間違いないが、北朝鮮レベルの経済規模(貧しさ)では、なんとか食って行ける抜け穴があるようだ・・・などと、対北朝鮮では全面禁輸の日本だからこそ、抜け穴と呼んだが、世の中は抜け穴とも思っていない、遠い国々もあるもの・・・というのが現実のようだ。
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