石破さんが7日、「自由民主党総裁の職を辞すること」を表明、次期総裁選には出馬しない意向も示された。「石破おろし」に耐え切れなかったとの見方がある一方、党内分裂を回避するため続投を断念されたとの見方もある。いずれにしても、党内の反主流、あるいは党内野党の哀しさであろう、党内の支持基盤が弱く、閣僚人事にも難儀したと言われ、「安倍(晋三元首相)はけしからん」と言い続けただけに反発が強く、党内抗争を制御できなかった。自民党には珍しく清廉潔白、軍事オタクで、プラモデルづくりが大好き、政治家としては不器用なのかもしれない。身内の不正にも目をつぶらない正義漢で、それだけに厄介扱いされる一方、野党の声を丁寧に聞き、信念を貫く政治家として、意外にもリベラル野党からも、また自民党と対照的に国民からも比較的人気が高かった。最新のJNNの世論調査によれば、参院選の敗北を受けて石破首相が「辞任する必要はない」と答えた人は49%にのぼり、「辞任すべき」の41%を上回る。この民意とのギャップは、しかし自民党の命取りになりかねない。
初めにお断りしておくと、常日頃、懇意にして頂いている自衛隊の元幹部が石破さんに近く、折に触れお人柄を忍ばせるエピソードを聞かされているので、私は穏健保守、石破さんはリベラル保守でも、行きがかり上、心情的に石破さん贔屓である(微笑)。
政治評論家の田崎史郎氏は、「自民党という会社の中で、何か大きな損失が生じた。その時に社長が何も責任を取らなかったら、社員はやる気がなくなるわけですよ」と主張される一方、業績予想が外れて減益となれば、社長は交代しなければならないのかと疑問を呈する向きがある。確かに、昨年の衆院選、今年の都議会選、参院選と、言わば三期続けて業績回復しなければ事業責任者に責任を取らせる企業が多いのは事実だろう。問題は、企業と違って政治家の中には言うことを聞かない連中が多く(政治は言わば我が儘な個人事業主の集まりと言える)、首相(社長)一人の責任に帰すことが出来るのかという疑問、そして、少数与党という党(会社)の勢いが明らかに鈍っている中で、律儀に原則通りにトップに責任を取らせてよいのかという疑問がある。所謂「裏金問題」に党としてケジメをつけられないままズルズルと来たことが、衆院選、都議選、参院選に惨敗した最大の要因であるとするならば、石破首相お一人と言うよりも、自民党の政治家一人ひとりの姿勢が問われる問題だと、国民は受け止めているだろうし、選挙の敗因をつくった所謂「裏金議員」たちが石破首相の足を引っ張っていると、国民は感じていることだろう。
石破政権の一年間は、党内融和を気遣いつつ、少数与党として、野党と是々非々で妥協しながら、政権運営に努めて来られた、最近の自民党政権にはない苦難の道のりだった。それにしては、党のバックアップは感じられず、大敗した先般の参院選の総括報告書で記された「解党的出直し」は、今に始まったことではないはずなのに、自民党が変わったとはとても思えない、なんだか妙に他人事(石破さん事)のような軽さがある。僅か一年という時間は、政策アジェンダとして成すべき仕事に十分ではない。とりわけ米国でトランプ政権が発足し、世界中で相互関税の混乱が巻き起こっては、それどころではない。客観的に見て、気の毒な一年だった。結果として、石破さんは、史上初めて総裁選前倒しという、党から不信任を突きつけられる形で辞めるという屈辱に甘んじることになったが、問題は自民党の今後である。
政治家のご都合主義で、選挙に勝てる人、野党とも話し合いができる実務型の人となると、実は見当たらないのだが(否、石破さんに続投させたかったのだが 笑)、まあ、高市早苗さんや小林鷹之さんより、小泉進次郎さんの方が有力かもしれない。あるいは、外相経験があり、宏池会の事務総長を務め、政治経験豊富で、政策的にも穏健保守の立ち位置で、野党との関係も悪くない林芳正内閣官房長官をダークホースとして推す向きがあるのも理解できなくはない。因みに私は、自民党の残り少ない有力カードとして、高市さんや小泉さんは来るべき将来に向けて温存すべきだと思っている。だからと言って、石破さんを軽く見ているのではなく、要は時代特性と人のキャラクターのマッチングの問題だ。石破さんのお人柄故に少数与党として打開の道筋は描き易いのではないか。こうした人事を含めて、麻生派以外の派閥が解消しても、やはり旧派閥を中心に合従連衡が繰り広げられ、国民から乖離して党内の「コップの中の争い」に齷齪するのだとすれば、自民党の行く末が案じられる。石破さんが退陣表明の記者会見で述べられたように、「自民党が信頼を失うことになれば、日本政治が安易なポピュリズムに堕することになってしまうという危惧を強めている。古い自民党のままで何も変わっていないと見られるようでは自民党の明日はない」のだ。三十数年振りの時代の転換期にある世界は待ってくれない。
石破さんをトカゲの尻尾切りにし、あるいはスケープ・ゴートにしたところで、真の解決にはならないことは明らかだ。ここまで来た以上、総裁選では国のあるべき姿について骨太の議論を戦わせ、さすが自民党と、見直す機会になることを期待したい(が儚い夢なのだろうか)。実に未練がましいブログになってしまった・・・。
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