風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

選挙戦終盤

2017-10-18 00:56:29 | 時事放談
 ちょっと意外な展開になってきた。小池都知事が率いる希望の党が下馬評とは裏腹に失速しつつあるのに対し、希望の党から「排除」されたはずの民進党の残党である立憲民主党が意外にも健闘して野党第一党に手が届くかも知れないといい、こうして野党が共闘できずに票が割れる選挙区で漁夫の利を得る自民党が、内閣支持率が下落傾向にあるにも係わらず、単独で300議席をうかがう勢いだと(左の朝日からも右の産経からも)報じられている。小池都知事の実力を伴わないスタンドプレイが嫌気されてさすがの神通力も翳っているのか、一部の民進党出身者が馬脚を露わし明暗を分けているのか・・・。
 希望の党の失速については、小池都知事が民進党の全ての政治家を受け入れる気持ちは「サラサラない」とか一部の左派を「排除する」などと言ったことへの反発があるからだとか、更にはそのときの小池都知事が「上から目線」に見えたのが嫌気されたからだとか、党代表ながら出馬を見送ったことも失望されたからだ、などともっともらしく解説されるが、俄かに信じ難い。勿論、かつての民進党候補者に刺客をぶつける(しかし自民党でもお友達の石破茂氏や野田聖子氏の選挙区には候補を立てないといった)イジワルなところも含めて、小池都知事のイメージが多少なりとも悪くなったのは事実だろう。朝日新聞と東大・谷口将紀研究室が、希望の党の公認候補に対して実施した調査によると、小池都知事が「踏み絵」を迫った安保関連法に関して、民進党からの合流組以外では69%が「評価する」「どちらかと言えば評価する」という(希望の党の看板通り)評価寄りの立場だったの対し、合流組で評価寄りだったのは僅か10%に留まり、71%が「評価しない」「どちらかと言えば評価しない」と答えて否定的な立場を示したという。すなわち、前原氏が安倍政権打倒のため「名を捨てて実をとる決断」と語ったように、「小池マジック」の再来を頼りに、民進党からの合流組は変節したと言うよりも(それも信頼を失う話だが)、本心を偽って長いモノに巻かれただけで、実は政治信念は変わっていないという、そのご都合主義が、有権者から見透かされて見放されたのではないかと思う。自らのブログで白状する人も出て来ているようだ。
 他方、立憲民主党については、その獲得議席や比例得票率がいかほどか、最近の日本人のリベラル度数みたいなものが測れるので、私はちょっと楽しみにしているのだが、長いモノに巻かれることなく、かつての民進党時代の節を曲げなかったことが有権者から好感されたように思う。このあたりは、石原・元都知事が昨日、思想的には対極にある枝野幸男氏について「今度の選挙では候補者たちの卑しい人格が透けて見える。戦の前に敵前逃亡、相手への逃げ込み、裏切り。まるで関ケ原の合戦の時のようだ。その中で節を通した枝野は本物の男に見える」と投稿したのが話題になった(まあその限りにおいては認めないわけではないが、なにしろ政治信条が違うからなあ)。結果として、かつての民進党への支持は希望の党ではなく立憲民主党に流れている構図ではないだろうか。
 安倍内閣の支持率がまた下落傾向にあるのは、野党候補者が盛んに大義なき解散や加計疑惑隠しを叫び、その声をマスコミが拾って、国民の忌まわしい記憶が蘇っているせいだろうか。安倍外交はアメリカべったりで見苦しいところがあるが、リベラルな国際秩序を守るためにアメリカを繋ぎ留める役割を担っている点では重要だし、キナ臭い朝鮮半島情勢や不気味な中国の存在感を思えば、当面は(日本が軍事的に自立できない以上)気紛れなアメリカ(と言うよりトランプ大統領ご本人)の機嫌をとるしかない(その点で安倍さんには安倍さんならではの余人を以て代えがたいところがあるように思う)。景気は、世界的にも良いからと言ってしまえばそれまで。末端まで恩恵が行き渡っていないといった批判があるが、これほど多様化した社会であれば濃淡も出てくるだろうし、全般的に緩やかな回復基調にあって国民に余り実感がないかも知れないがそれほど大きな不満もないのではないだろうか。他方、社会保障や子育て・教育、そして成長戦略には大いに不満だが・・・概ね野党の混乱に助けられて支持を集めやすいのだろう。
 「永田町の内側の事情、政治家の事情より大事なことがあるだろう。国民の皆さんに『受け皿を作れ』と背中を押していただいた」と訴えた枝野幸男氏にせよ、「北朝鮮情勢? そもそもこんな時期に衆院解散するなよ、という話だ。よほど不都合なことを隠したいのでないか。このまま『安倍1強』政治を許すのか否か」と訴えた小池都知事にせよ、実質的に2009年の民主党「政権交代。」と変わらなくて、所詮、選挙なんて、実のある政策論争など期待出来なくて、人気投票に過ぎないのは分かっているのだけれども、「状況」を訴えるばかりで「中身」がない。それでも選挙はミズモノで、あと数日の間に無党派層がどう動くのか、大勢は決まりつつあるとは言え最後のところで結果は読めないから、やっぱり選挙は面白い。
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