風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

そして次の米大統領は

2016-06-12 11:46:16 | 時事放談
 その昔、「究極の選択」なる言葉遊びがあった。いろいろ段階があって、「空飛ぶ超能力と、心を読む超能力」あるいは「あらゆる楽器の達人になれるか、あらゆるスポーツの達人になれる」場合に、どちらを選ぶかを想像するのは夢があっていいが、ほんの序の口で、「誰も出席しない自分の葬式と、誰も出席しない自分の結婚式」あたりになると雲行きが怪しく、更に「災害の多い町と、犯罪の多い町」とで住むならどちらか、尾籠な話だが有名な「うん●味のカレーと、カレー味のうん●」とで食べるならどちらか、あたりになると、どちらも選びたくなくてハタと困ってしまうが、選ばなければならない状況が本来の「究極」である。そこまで究極ではないにしても、今回のアメリカ大統領候補は、民主党のクリントン女史と共和党のトランプ氏に絞られたようで、一種の「究極の選択」で、先が読めない。冷静に演説だけ聞いていれば、不動産王と言ってもやり手の中小事業者の、庶民派だけれどもジャーナリスティックで、と言っても高級紙ではなくゴシップ紙がお似合いのトランプ氏より、「ワシントンの支配階級」(サンダース氏)で傲慢に見えてもクリントン女史の方を選びたくなる。
 しかし、物事はそう単純に行くものではない。100年前ならまだしも、現代のような情報社会にあってもなお100年前と同じように時間をかけて、核大国アメリカの最高指揮官、否、世界の独裁者を丁寧かつ慎重に選ぶ過程にあっては、サシの勝負であるだけに、どちらが優れているを見極めて勝敗がつけばいいが、優れていたとしても思わぬところで足を掬われれば負ける(逆に敵失で勝つ)ことだって大いにあり得る。まさかトランプ氏が共和党候補として勝ち残るとは思っていなかったが、それでも、トランプ氏が相手なら、ヒラリー女史は楽勝だろうと思っていたら、そうでもない。Financial Times紙は、クリントン女史のことを、「重大な欠点をいくつも抱えた弱い候補」だと言う。
 かつて三流役者崩れのレーガン氏が大統領の座を射止め、まさかソ連を追い詰め冷戦構造を崩壊に追いやる歴史的な立役者になろうとは誰も予想しなかったように、今は過激な発言でさんざん世間の(どちらかと言うと興味本位の)注目を集め、熱狂的な支持層を取り込んで共和党の主流派を抑えたトランプ氏が、もし、まともな側近を集めて耳を傾けるならば、そして持ち前のビジネス感覚を研ぎ澄ませるならば、化けないとも限らないと、私のように夢想する、ひねくれ者がいるかも知れない。実際、安保タダ乗りの同盟国は見捨てると公言したり、日韓両国に核武装を平気で勧めたりするのは、トランプ氏のブレーンによると、ゼロ・ベースで議論を巻き起こそうとしているだけで、その通りに信じているわけでは必ずしもないと言う。また、ここ三代、アーカンソー州知事だったクリントン氏や、テキサス州知事だったブッシュJr.氏や、上院議員になったばかりのオバマ氏に見られるように、ワシントン政治が腐敗していると嫌気されて、大統領には中央政界に染まっていないフレッシュさが求められていると指摘する声がある。そして何よりトランプ氏を押し上げて来た背景なり格差社会の世相を読み解けば、弁護士からファースト・レディになった迄はともかくとして、その後、上院議員から更に国務長官にまで登り詰めて、すっかりエスタブリッシュメント然としたクリントン女史のイメージは、最近、年齢と共に益々福福とする容姿と相俟って、却ってマイナスに影響しかねない情勢である。
 今年の大統領選は「史上最も不人気な二人による一騎打ち」になると言われる始末だ。既に「Crooked Hillary(いんちきヒラリー)」と「Trump the Fraud(詐欺師トランプ)」との争いになっているとも言われている(Financial Times紙)。クリントン女史は、票になると察すれば、TPPにしても弱者保護にしても、民主党の支持母体である労働組合に阿り、手のひらを返したように政策の立場を変える無節操さを見せ、公務のメールのやり取りに私用サーバーを使っていたことで追及を受けるマイナス・イメージが定着している。今後、トランプ氏とのTV討論という醜い争い(となることを実は期待している人が多いと思うのだが)で品位を保てるかどうかという試練が待ち構える。
 他にも爆弾を抱えている。ビル・クリントン氏の「クリントン財団」の存在だ。外国の政府や企業から何百万ドルもの寄付を受け取り、国務大臣だったクリントン女史が見返りの政策で応えたのではないかと疑われ(保守系ニュースサイトの総合監修者ピーター・シュヴァイツァー氏の著書「Clinton Cash」)、本人どころか女史の講演料にも数10万ドル単位の謝礼金が動くと、最近、池上彰氏も週刊文春のコラムに書いていた。こうなるとエスタブリッシュメント然どころか、数万・数十万円単位の公私混同で叩かれるチンケな舛添氏など消し飛んでしまうほどの、強欲ぶりだ。Financial Times紙も(財団のことを)米国の政治において前例がない組織だと指摘する。折しも、同著書のドキュメンタリー映画が、この前のカンヌ国際映画祭で先行上映され、7月25日の民主党大会前の24日に一般公開される予定らしい。
 11月の本選まで何が起こるか分からない。国際政治やアメリカの国内政治は停滞するだろうが、ゴシップ的な楽しみはある(本来、そうであってはイケナイのだが)。
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2 コメント

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そして次の東京都知事は (あんびばれんと)
2016-06-15 21:30:53
都民のため、という感じが最後までありませんでしたね。自分中心の言い訳にしか聞こえない。だからこういう事態になったと見えるのですが、本人にはそういう観点はないのでしょうね。

私が最も懸念したのは、オリンピック・パラリンピックへの影響です。リオデジャネイロ大会が控える中での選挙は次期開催都市としてふさわしくない。4年後の東京大会も同様であります。この事態を避けたいと思いました。しかし、これ以上、都政の停滞を長引かせることは私にとっても耐えがたい。
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Unknown (風来庵主人)
2016-06-18 23:57:27
オリパラの話は、舛添さんが単に言い訳にしているだけだと思います。リオ五輪でブラジル大統領が職務権限停止になって、せいぜい無事開催されるか心配する程度ではないでしょうか。そこでの次期開催都市の都知事選なんて、世界の誰が気にするでしょう? 晴れの東京五輪開催期間中に首長の選挙があるとすれば問題ですが、むしろ真夏の東京五輪でマラソンを走ることが出来るのか気になります(苦笑)
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