風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

陸上装備研究所

2015-11-05 00:16:43 | 日々の生活
 昨日(文化の日)、最近発足した防衛省の外局「防衛装備庁」の中で「火器、弾火薬類、耐弾材料、耐爆構造、車両、車両用機器、施設器材などの調査研究を行う」という「陸上装備研究所」の一般開放があるというので、淵野辺まで行って来た。我ながら物好きだと思う。因みに「陸上」とある以上、「航空装備研究所」は立川に(その支所が土浦と新島に)あるし、「艦艇装備研究所」は目黒に(久里浜地区と川崎に支所も)ある。さらに「電子装備研究所」と「先進技術推進センター」が世田谷の池尻に、「試験場」が札幌と下北(青森)と岐阜にあるようだ。
 さて、今や戦車もハイブリッドを目指しているらしい。駆動用モーターとバッテリーを持ち、バッテリーに蓄えた電力だけで走行できるため静粛性に優れ、制動エネルギーを電気として再利用することで燃費も向上し、協力な発電機を搭載しているので災害地などでも電力を供給できる・・・と聞くと、まさに乗用車で実現しつつあることが、災害救助などの場面でより威力を発揮しそうである。同研究所の展示室では、戦車のもつ火力、防護力、機動力を維持しながら、より軽量でコンパクトな戦闘車両を開発している話も聞いた。今の「10式戦車」(ヒトマル式と読むらしい)は5トンもあり、空輸するには重すぎて二つに分けなければならないところ、軽量なら南西諸島への配備も容易に行えるという(所謂戦力投射が容易ということだろう)。アメリカでは、インターネットなど、もともと軍事技術として先行していたものが民間開放され、爆発的に広がったが、どうも平和な日本では軍事技術の開発に力が入っていない(と言うより、やはり及び腰である)ような気がするのは、気のせいではなく本当なのだろう。
 広場では「CBRN対応遠隔操縦作業車両」のデモをやっていた。CBRNはChemical、Biological、Radiological、Nuclearの頭文字を取ったもので、これら脅威対象に晒されている汚染地域(たとえば東日本大震災後の福島第一原発)等に遠方から投入し(最大20キロとも)、瓦礫撤去や通路啓開等の施設作業や各種情報収集を行うものらしい。さらにその中継車もまた、無人で無線操縦可能で、三菱パジェロを改造し関連機器やパラボラ・アンテナを積んでいた。ドローンに代表されるように、無人・無線技術は、軍事にもどんどん入り込んでおり、最近、乗用車の自動運転で危惧されるような乗っ取り等の対策は、軍事ではより重要になることだろう。また、「IED走行間探知技術」も紹介されていた。IEDとは、Improvised Explosive Deviceの略で、地雷のようなシステム的なものとは異なり、テロリストやゲリラなどがパイプや空き缶などの内部に爆薬を入れて簡易に製作するような、即製爆発装置あるいは簡易爆弾と呼ばれるもののことで、最近、アフガニスタンやイラクなどで活動する多国籍軍が被害を受けているらしい。
 訪問者の内、専門家らしき人(あるいは軍事オタクっぽい人?)は一眼レフを抱えているのですぐ分かるが、むしろ近所のおじさん・おばさん、さらには家族連れも多数訪れ、子供がそこかしこを走り回って、およそ研究所のいかめしさはなく、ほのぼのとしていた。警備の腕章をつけた関係者も、実に丁寧に解説して下さる。こうした一般開放は今年で4年目らしいが、そんな訪問者に配慮してか、「安心・安全」をテーマに、防災や人命優先の技術として、先ほどの「CBRN対応遠隔操縦作業車両」や「IED走行間探知技術」を前面に出した展示としているように見える。こうして家族連れにも防衛省(陸上装備研究所)という組織やその活動を身近に感じて貰えることを主催者側は期待しているのであろうが、家族連れが最も喜んで並んで写真を撮っていたのは、豈はからんや「10式戦車」であった。まあ、子供が(子供だけでなく大人も)まっさきに惹かれるのは、こういった類いであろう。
 何を隠そう私も、戦車に乗れるのではないかと秘かに期待していたのだが、そこまで開放的ではなかった。と言うより、そもそも展示されている戦車や機動車は実戦配備されたものではない。ここは飽くまで研究所であって、研究のための試作機を保有していることから、展示しているのである。
 というわけで、私も童心に返って心惹かれたのは、上の写真にある「10式戦車(試作4号車)」(写真の上半分)と、乗員を安全に前進させるために装甲を強化され、既に実戦配備されて南スーダンをはじめとする国際平和協力活動でも活躍している「軽装甲機動車」(写真の下半分)であった。やれやれ。
コメント
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