風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

大震災(1)帰宅難民

2011-03-12 16:24:56 | 時事放談
 かれこれ25時間前、私は36階のオフィスにいて、デスクトップ・パソコンが倒れないよう手で押さえながら仁王立ちになっていました。同僚の多くは机の下に身を隠し、主のいなくなった椅子があちらこちらで床の上をごろごろ動き回るのが、人々の狼狽ぶりを象徴するようでした。震度5強ということでしたが、兎に角ゆらゆらとよく揺れて、しかもそれが長く続いたものですから、気分を悪くしてオフィスの廊下に横たわる女性も出る始末です。柔構造なのでよく揺れるが、外に出るよりは安全だと、パニックになるのを抑えるような落ち着いた声の放送が流れたのは、しかし、ずっと後のことでした。その後も何度か余震が続いて、そのたびに、既に私たちはインターネットやワンセグで状況を把握しているのに、ずっと遅れて館内放送がもっともらしく解説するのがなんとも間抜けでしらじらしく感じられました。
 その間、意外に冷静な気持ちでいられたように自分では感じていましたが、今から思うと、何故か「日本沈没」のことが頭をよぎり、首都が崩壊するかもしれない、しかしここで死んでたまるか・・・と、支離滅裂なことを考えていたところからすると、かなり動揺していたのかも知れないと思います。その後も断続的に引いては寄せる波のような余震の中でとても仕事をする気になれず、窓の外に広がる暗い雲や、遥かレインボー・ブリッジの上を這う青虫のような車や、お台場あたりから煙があがるのを、ただぼんやり眺めたり、インターネットのニュースを目で追ったりしていました。
 暗くなる頃、館内放送に従い、歩いて帰宅できる同僚を見送ると、残った半分くらいの同僚は、会社から乾パン二個と500mlの水二本の配給を受けて、不安な夜を殺風景なオフィスで過ごす覚悟を思い思いに決めているようでした。いつまでもパソコンをぼんやり見つめる者、机にうつぶせになる者、部長席の椅子に深々と身を沈める者、会議室の椅子を並べて横になる者・・・。
 なかなか寝付かれず、どんよりと鈍い意識のまま、夜が明けて、窓際に近づくと、抜けるような青空の下に、いつもの街並みが無傷に広がっているのが見えて、一体、僕たちはどこにいるのか、何をしていたのかと、奇妙な錯覚に囚われました。その先には富士山が、まるで何もなかったかのような、静かな佇まいを見せて、昨晩の不安がまるで夢だったかのようです(上の写真)。
 昼過ぎに帰宅してテレビで見る、宮城県を中心に東北地方の太平洋岸で広がる自然災害の凄まじさに、東京で起こったことなど何でもないことだったのだと、あらためて目を見張りました。一刻も早い救援と回復をお祈りいたします。
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