保健福祉の現場から

感じるままに

ICTの標準規格が急務

2019年05月09日 | Weblog
メディウォッチ「効果的・効率的な医療提供のため、電子カルテ等の「標準規格」を早急に検討、公表せよ―規制改革推進会議」(https://www.medwatch.jp/?p=26255)。<以下引用>
<効果的かつ効率的な医療提供などを可能とするために、まず電子カルテシステムなど医療データに関する「標準規格」「標準仕様」を早急に検討、公表し、また各種のデータを連結するための環境整備に向けた検討を進めよ―。規制改革推進会議の医療・介護ワーキング・グループ(以下、ワーキング)は4月24日、このような内容を柱とする「医療分野におけるデータ利活用促進に関する意見」を取りまとめました。我が国の膨大な保健医療データの利活用を、縦割りの制度やベンダー独自の仕様が阻害 国民皆保険体制を敷いている我が国では、▼診療記録(カルテ)▼診療報酬等の明細書(レセプト)▼処方箋▼各種検査データ▼画像診断データ▼健康診査結果―などさまざまな保健医療に関するデータが蓄積されています。これらを連結し、解析することで、例えば「若年期に●●といった生活習慣を持ち、健診で■■と判定された人は、中年期になると○○疾病に罹患する可能性が高い。その際には□□の治療法が有効である」といった知見を確立することが期待されます。こうした知見に基づけば、より効果的で効率的な医療サービスが提供可能になるとともに、画期的な治療法(医薬品や医療機器等)の開発に結びつく可能性もあります。ただし、こうしたデータは格納場所、格納方法、様式、保存期限などが区々で、また患者を含む国民が「自らのデータを管理する」ことも困難な状況です。こうした状況を踏まえてワーキングは、▼当事者(患者等)が、データ利活用に関する方針に合意の上で、契約によって情報の取り扱いを明確に定める▼「特定健診」(40-74歳が対象)以外の各種健診データ(学校や企業等での健診など)についても、個人への提供方法や利活用の在り方を整理し、40歳未満からの継続した健康管理を可能とする―ことが望ましいと強調。その上で厚生労働省に対し、▼健診情報のデータ利活用の必要性や活用方針を 明確にし、公表する▼関係者の意見を踏まえて、データ提供や利活用に関する契約条項例や条項作成時の考慮要素等をガイドライン等で示す―よう要望しています。具体的には、(1)データ利活用のための「標準規格」の確立(2)データを活用した最適な医療サービス提供のための包括的な環境整備―の2点を実施するよう提言。まず(1)の「標準規格」は、データを利活用するために極めて重要なテーマです。例えば医療現場で活用が進んでいる電子カルテ1つをとっても、ベンダー(業者)が独自に開発し、それぞれに進化を遂げているため、異なるベンダーの電子カルテデータを連結等することが極めて困難と指摘されます。A社の電子カルテからB社の電子カルテに買い替えようと考えても、過去のデータを移管・連結することが難しいため、「ベンダーによるユーザー(医療機関)の囲い込み」(買い替え等を阻害する)になっているとともに、データの利活用を大きく阻害する要因とも指摘されています。この点、米国では技術革新に意欲的な民間団体の標準規格策定の後押しや、一定の機能条件を満たした病院システムに対しる補助などの施策を推進し、「標準規格の普及」→「データ利活用環境の整備」が進んでいると言います。ワーキングでは、標準規格の確立に向けて次のような取り組みを行うよう厚労省に提言しています。▼技術革新に意欲的な民間の創意工夫を尊重し、国内外での相互運用性(様々なシステムが相互に連携可能なシステムの特性)を意識して「医療分野における標準規格の基本的な在り方」を早急に検討し、公表する▼官民の役割分担を含む運営体制を構築する▼データヘルス改革推進計画の一環として予定される「保健医療記録共有サービス」や「マイナポータルを活用したPHRサービス」に先立ち、「最低限必要となる標準規格」を検討し、ガイドライン等の形で公表する この点については、社会保障審議会の医療部会などでも「電子カルテの標準仕様」 すべきとの強い要望が出ており、厚労省は2019年度予算において「医療情報化支援基金」(国費ベースで300億円を計上)を創設し、▼オンライン資格確認の導入に向けた医療機関・薬局のシステム整備費(マイナンバーカード等によるオンライン資格確認を円滑に導入するため、医療機関等での初期導入経費(システム整備・改修等))▼電子カルテ標準化に向けた医療機関の電子カルテシステム等導入費(国の指定する標準規格を用いて相互に連携可能な電子カルテシステム等を導入する医療機関での初期導入経費)―を補助することとしています(関連記事はこちらとこちらとこちら)。今後、電子カルテをはじめとする各種データシステムの「標準規格」整備が大きく進むことが期待されます。また(2)は、患者・国民が「自らの医療データを利活用するための制度やインフラを整備する」よう求めるものです。ワーキングでは、厚労省に対し、まず▼救命医療における患者情報の医療機関共有▼セカンドオピニオンの取得▼自らの健診情報の取得と管理―など、国民のニーズが高いと考えられる具体的な場面について、費用対効果も勘案し「データ利活用のための包括的な環境整備」に向けた検討を開始するよう求めています。例えば、救命医療の際には、患者の既往歴や服薬情報などを迅速に共有できれば、効果的・効率的に診断・治療が行えます。ただし、救命救急を担う医療機関とかかりつけ医療機関とで共有するためには、全国ベースで情報共有を可能とすることが必要となり、その際には「個人情報保護」との関係を十分に整理しておくことが必要でしょう。ワーキングでは「医療における個人情報取扱いに関する特別法の立法等が必要との意見もある」ことも紹介しています。>

規制改革推進会議(https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/meeting.html)の医療・介護ワーキング・グループ資料「医療分野におけるデータ利活用促進に関する意見 」(https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/iryou/20190424/190424iryo01.pdf)の「データ利活用のための「標準規格」の確立」は当然であろう。日医総研(http://www.jmari.med.or.jp/)の「ICTを利用した全国地域医療連携の概況(2017年度版)」(http://www.jmari.med.or.jp/research/research/wr_670.html)では【地域医療連携】「2012年度調査開始以降、継続できている地域は約6割」「1地域医療連携あたりシステム平均構築費用(累積)は、約1億7,600万円(有料地域のみ)、約1億4,900万円(無料地域を含む)」「1地域医療連携あたりのシステムの平均年間運用費用は、約1,400万円」「将来システム更改時の費用負担をどうするかについては、58.8%の地域で未定、調査開始以降漸増傾向」とある。総務省資料(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/health/dai3/sankou1.pdf)p2「全国に約270の地域医療連携ネットワーク(EHR)が存在するが、多くは一方向の情報閲覧であること、運用コストが大きいこと等から、参加施設及び患者の参加率が低く、活用が十分進んでいない。」は認識したい。これまで、地域医療再生基金(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/saiseikikin/index.html)や地域医療介護総合確保基金(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000068065.html)による莫大な予算を使って、ICT連携が進められてきたであろうが、これからのICT連携の在り方を検討するためには、少なくとも過去の基金事業の検証が必要と感じる。なお、ICT連携は医療機関間だけではない。総務省資料(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/health/dai3/sankou1.pdf)p5「医療・介護データ標準化の推進について(H30);「医療機関・介護施設間で情報をやりとりする際のデータ標準がない(データ項目、形式等がバラバラ)。⇒効果的な施設間の連携を阻害するとともに、データ連携やシステム更新にかかるコストが高くなっている」とある。未来投資会議(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/index.html)の「未来投資戦略2018 ―「Society 5.0」「データ駆動型社会」への変革― 基本的視座と重点施策」(http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2018/0615/shiryo_03-2.pdf)p10「介護現場の生産性を飛躍的に高めるため、ICT化を徹底推進し、2020年度までに介護分野での必要なデータ連携が可能となることを目指す」、具体的施策(http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2018/0615/shiryo_03-3.pdf)p28「介護分野におけるICT化・情報連携が全国的に行われ、介護に携わる関係者の効率的・効果的な協働を可能とするため、居宅介護支援事業所と訪問介護などのサービス提供事業所間における情報連携の標準仕様を検討し、本年度中に結論を得る。あわせて、ICTを活用した医療・介護連携について、本年度実証を行うとともに、その結果を踏まえ、標準仕様の作成に向けて検討する。」とあった。「重点分野に関する取組の中長期目標策定」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000196613.pdf)の全国在宅医療会議が目指すべき方向性の中間目標で、「在宅医療推進に向けたICT等最新技術の活用」が掲げられているが、既に5年前の厚労省資料(http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2014/0416/shiryo_09.pdf)p5で、「ネットワークの標準モデルの確立、普及」「在宅医療・介護を含めた標準規格の策定・普及」「クラウド技術の活用等による費用低廉化」があり、あまりに遅すぎる。様々な補助金を使って、それぞれの地域・企業で開発競争するのではなく、標準規格による医療連携、医療介護ICT連携の普及・普遍化を図る必要性を強く感じる。
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