12日にテレビの故障を見に来た電気屋のお兄ちゃんは、「修理をすれば見られるようになると思いますが、このテレビは8年も経っていますから、10年で取り替えるにはちょっと早いですけど、新しいテレビにされるという選択肢もあります」とパンフレットを見せる。そうか、初めから新品を勧めるつもりで来たのか。電気屋の両親とは付き合いが長く、不幸が重なって今は彼がひとりで店を守っている。
カミさんはそんな彼を応援しようと、前のテレビと同じ大きさのテレビを買うことに同意する。「在庫があるので明日設置に来ます」というので、13日からもう新しいテレビになった。「LEDを使っているので、画面は鮮明ですし、電気代もかなりお得です」と言うが、何となく画面は白っぽい。確かに鮮明度は高く、肌の小じわまで見えてしまう。本当にそんな鮮明度さが必要なのだろうか。
テレビを見ていると、美しい人はより美しいように見える。私が歌手の藤あや子さんを見ていて「この人、いい匂いがしそう」と言ったら、カミさんから「いやらしい!」とにらまれてしまった。テレビは匂いまで伝えてくれないが、そういう女性はいると思う。地域新聞を発行していた時、イギリスの名門オックスフォード大学の女子大生が町の議場を見たいというので案内した。透き通るような白い肌の美しい女性だったのに、獣のような匂いがきつくてびっくりした。
彼女の足は、当たり前なのかも知れないが、美術室に置いてある石膏像の足のようだった。谷崎潤一郎や川端康成が、細長くて形のよいきれいな素足に異常な関心を示していたけれど、思えば私も同類だった。これもテレビで知ったことだが、今の子どもたちは猫背が多いという。朝礼のわずかな時間も背筋を伸ばしてじっと立っていられない。その子たちの足形を見ると足の指が面についていない。これではじっとしていることは出来ないだろう。
直立二足歩行の猿人は、手を様々な用途に使うようになり、それによって脳も刺激され、原人へと進化したという。道具を使うことで身体を保護することになり、体毛は抜け落ち、素肌が露わになったらしい。素足やうなじに女性の美しさを感じるのも、衣服からわずかに出た部分から、隠された美を想像することが出来る脳のおかげである。