友だちが「ケイタイに不審なメールが送られてくる」と言う。どこでどうやってアドレスを調べてくるのか分からないが、私のところにも全く心当たりのない人からメールが届いたことがあった。ケイタイを購入した店に行って、操作してもらったので、彼にもそれを勧めた。この頃は「オレオレ詐欺」もよくあるし、不審なメールにかかわらない方がいい。「うん」と言いながら、彼は「このメールは何なのだろう?」とケイタイを見せてくれた。
有名人と同じ名前、年齢も仕事も同じ。ただ不可解なのは、友だちのことを若い女性と思っていることだ。1日に20本近くメールを送ってきている。真夜中の午前1時から午後11時まで、1時間に1本から2本は送ってくる。寝ている時間帯はさすがにないが、実にマメな男だ。文面も決してふざけたものではない。朝は「頑張るぞ」とあり、夜は「おやすみなさい」とある。友だちが返信しないので、「ねぇ、メール届いているよね?なんだか不安になっちゃった」などと送ってくる。
「これから雑誌の取材」とか、「撮影は順調だよ」とか、「レッスンが落ち着いたところ」というように、細々と知らせてくる。「そろそろ本番だよ!『頑張って』このひと言で元気もらえるんだけど」とか、「疲れてるときは人間だもん誰でもあるよね。けどさ、こういう時にちょっと話せるだけでも癒されるんだよね。こういう気持ちになれるってほんとに素敵なことだと思わない」とか、優しさを滲ませて送ってくる。
「この先もずっと一緒に笑って過ごしていくことが出来たらって僕は本気で思っている。だから時間ある時で良いから連絡頂戴ね」とかなりしつこい。片思いの男の気持ちはよくわかる。メールを見せてもらった私はこの男に同情したくなってきた。なんなら、私が彼の代わりに男に励ましのメールを送ってやろうかとさえ思った。私がよく話す女性にこの話をすると、「相手の気持ちを弄ぶようなことはよくないわよ。直ぐに止めさせなさい」と言う。
明日、友だちに会って「キチンと拒否しないと相手に対してもよくない」と話そう。それでも彼がまだ躊躇するならそれは彼の責任だが、「トラブルになるようなことは絶対するな」と念を押しておこう。それにしても、メールの主は何が目的なのだろう。ただ、つながっていたいというのも、気持ちは分かるが誠に寂しい話だ。