埼玉県所沢市で住民投票が行なわれた。学校にエアコンを設置することに賛成か反対かを問うものだった。ことの発端は、現市長が「エアコンの設置は必要ない」と言ったことだ。所沢市には自衛隊の航空基地があり、その騒音防止策として国はエアコンの設置に補助金を交付している。けれど、市長は「設置を行なえば、市は30億円を負担することになり、財政を圧迫する」と言う。
これに驚いた保護者が署名運動を行ない住民投票となった。所沢市の学校は防音対策のため窓は2重ガラスになっている。市長は「熱ければ窓を開ければいい」と言うけれど、それでは騒音は防げなくなる。私たちの子どもの頃はもちろんエアコンは無かった。寒さ対策でストーヴが置かれていたが、中学校には無かった。熱さも寒さも我慢だったけれど、エアコンを設置できるのならその方が快適になることは確かだろう。
市の負担が大きすぎるというのであれば、防衛省に全額負担するように要望すべきだろう。全額が無理なら補助金を増やすように要望すればいい。エアコンが必要となる原因は飛行機の騒音にあるのだから、所沢市としては当然の主張である。もし、市長が「子どもはもっと我慢すべきだ」という信念でエアコンの設置をしないというなら、それは少し時代感覚が遅れていると思う。耐えることを学ばせるならもっと他にある。
住民投票の結果は、賛成が56,921票、反対が30,041票だったから、賛成した人が反対した人の2倍近い。ところが問題は投票率で、31.54%しかない。有権者の3分の1に満たない。しかも皮肉なことに、市長選挙の投票率34.68%だったけれど、市長の得票は賛成票よりも少なかった。市長は任期の10月までに結論を出すと言っている。
民主主義って何だろう。住民投票に法的拘束力はないけれど、それにしても3分の2を超える人が投票しなかったのはどうしてだろう。こんな馬鹿らしい問題では投票する気になれないのかも知れないが、政治とは無関係でいたいという気持ちの表れなのか。だとすると、いったい政治は、誰のため、何のためなのだろう。