常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

リンゴ半分

2023年02月13日 | 日記
食後には必ず、妻と半分にしたリンゴを食べる。秋が深まり、フジが出回るようになってからの習慣だ。上山でペイペイ支払いで30%のポイントがつくようになってからずっと続けている。袋入りの不揃いのものだと、300円ほどで買える。たまにシナノスィーツの黄色が混じる。品種をかえることで、飽きがこない。リンゴを食べきって、朝食が終わると、十分に栄養がとれたという満足感が広がる。何故か、今日も元気に過ごせるという自信めいたものがわいてくる。

刃を入るる隙なく林檎紅潮す 野澤節子

庄野潤三の短編小説に『金木犀』というのがある。駅前の小さな場所で梨売りの爺さんがいて、そこから主人公とその息子が梨を買う話だ。爺さんの売る梨は長十郎と二十世紀だが、爺さんは赤梨、青梨と呼んでいる。爺さんは畑から捥ぎたての梨を持ってきて売る。その赤梨のおいしさはすばらしかった。1㌔50円で売ったていたが、何ものにも代えがたい秋の味であった。息子が学校帰りに買うのは、隅に積んであるひと山30円の赤梨だ。

勤務帰りに買う主人公、学校帰りに立ち寄る息子。二人の会話は少ない。「リンゴ買った」と一言。主人公は、爺さんに聞く。「いつも来る少年は今日来た」爺さんは「さっき買って行ったよ」毎日のように顔を合わせても、そんな少ない言葉しか交わさない日常。そののどかさに、暮らしの幸せがかくされている。わが家のリンゴも、これと同じようで、フジは赤リンゴ、シナノスィーツは青リンゴと呼んでもよさそうだ。そして爺さんが店じまいをするころ、金木犀が咲く。息子の誕生日に、成長した息子の机に置く電気スタンドを買って誕生祝をする場面もいい。夜中に目覚めた掌編を読み終えて、また寝入るのにちょうどいい長さの小説である。
コメント
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