立春の日、空は明るい。電線にスズメが群れてとまっていた。スズメたちも春の気配を感じているのだろうか。鳥の観察をする人もいる。スズメが塒を立つのは日の出の5分前と観察したのは、宮崎尚幸氏。塒に戻るのが日没前である。カラスの塒立ちが日の出の40分前、塒に帰るのが日が暮れてからというから、スズメの朝寝坊というのは、氏の観察によるところが大きい。電線の向う側に、竹林があり、ヒヨドリがしきりに鳴いている。
竹の穂の春立つ光ふりこぼす 水原秋桜子
地中海、イタリアのシチリア島では聖アガタの日で祭りが行われる。島に住むアガタは裕福な貴族の娘であった。ローマ総統からプロポーズされるが、カトリック教に殉じ、総統の申出を断る。それを怒った総統は、アガタを火あぶりの刑を与えた。その後、エトナ火山が幾度もこの地を襲う。人々が聖アガタに祈ると、溶岩流の流れが変わり、町が救われた。地震、火災、飢餓から町を幾度となく救った。聖アガタはこの言い伝えから、火災守護聖者として、火を扱う人々から護符として貼られた。
2月4日、町の人々は、家で焼いた大きなパンを持参して教会に行く。パンの上には、「電光、雹、火事から守り給え、聖なるアガタよ」と書いた紙が載せてある。聖職者は依頼を受けてパン焼き釜を潔めに行く。また潔められたパンを持ち帰り、家族がわけあって食べる。家畜の餌にもこのパンをまぜて与える。こうして一家の無病息災を祈る日が、聖アガタ祭だ。この信仰は、日本の火伏神社や山の神とも似た部分がある。人々の信仰の大本は、文化が変わっても一脈通じるものがある。