朝、眺めるキュウリの花は涼やかである。
しかし、列島の北にある低気圧に向かって吹き込む
湿った南風のせいでやたらに蒸し暑い。朝の、散歩で
流した汗は、この夏もっとも多かった。
あつきものむかし大阪夏御陣 夏目 漱石
漱石は子どものころ、落語や講談の寄席へ行くのが
好きで、俳句に寄席ネタを使うことが多い。
「豊臣家最後の日」も、講談の演題である。
大阪落城のその日、旧暦の5月だが、とにかく暑い日
であったという。
暑い日とはいえ、お城が落ちては、大阪の市民は
上を下への大騒動となった。女や子どもたちが、敵
味方入り混じる城下を、知り合いへと逃げ延びて行く。
とても暑いなどと言っている場合でない。
それに比べれば、熊本のこのくらいの暑さなど、と
強がりを言った滑稽味というところか。