
今日、日本詩吟学院の濱岳優先生の吟道講座があった。濱先生は、俳諧歌の普及に努め、一茶の句を取り上げることが多い。このたびは、一茶の俳諧歌に加えて、山頭火の俳句「うどん供えて」が興味深かった。この句が収められた第一句集『草木塔』には、若うして 死をいそぎたまへる 母上の霊前に 本書を供えまつる」という山頭火の献辞がある。
うどん供えて 母よ わたくしもいただきまする 山頭火
山頭火の母は、夫の放蕩に失意し、山頭火が10歳のとき井戸へ身を投げて自殺した。この母の死は山頭火の生涯に大きな影響を与えた。放浪の俳人となる山頭火のふところには、肌身離さず母の位牌が入っていた。父の放蕩に加えて、母の自殺という山頭火の幼児体験は、その後の人生を決定づけるインパクトを持っていた。
山頭火が得度して寺男となるのは、自身の自殺体験のよっている。人生への絶望か、酒がなせるわざか、山頭火は線路の入って走ってくる電車の前に立った。危うく助けられた山頭火は、報恩禅寺に寺男となり、得度する。法体となって行乞の生活に入るのは大正15年のことである。
このブログで数回、山頭火の句にふれているものとして、講座に山頭火が選ばれたのは、不思議な縁を感じる。加えて一茶の俳諧歌、吉田松陰の和歌、頼山陽の漢詩とどれもが興味深いものであった。写真はユーモアを交えながら講演する浜岳優先生。
