暑さのなかで柿の実が大きくなっている。民話の「猿蟹合戦」にも登場するまだ青い実だ。そもそも柿は実のなかの種が成長するまで、果肉にタンニンと呼ばれる渋味を持っている。種が成長する前に、虫や鳥に食べられないようにするためである。タンニンは水溶性で、果肉や果汁に溶け込んでいるので食べられない。
ところが、種が成長してしまうと、逆に鳥に食べてもらって、種を運んで糞と一緒に排出してもらわないと子孫を増やすことができず困ってしまう。そこで柿は、実のなかで種の成長に合わせてアセトアルデヒトという物質を作り出す。この物質がタンニンに作用してその性質を不溶性に変える。甘柿のなかに黒いゴマのようなぶつぶつしたものを見ることができるが、これが不溶性に変わったタンニンである。
渋抜きに焼酎をヘタにつけて密封した袋にいれるが、これは人為的に柿の実の呼吸を止めて、アセトアルデヒトを作り出させる作業である。大きくなった柿の実が色づいて種を成長させるまでにあと30日から40日を必要とする。