
散れば咲き散れば咲きして百日紅 千代女
この句にあるとおり、この花の咲く期間が長ので、なるほどと名前の由来が分かる。ところが、百日紅と書いて「さるすべり」と読む。これは木肌がつるつるとしていて、猿が滑るという意味である。つまり、この名はふたつの意味を持っている。インドの原産で、中国を経由して日本にやってきた帰化植物である。仏教の渡来との関係があるのか、百日紅はお寺の庭に植えられていることが多い。この花が咲くと、セミの鳴き声が聞こえ、真夏の日々が近づいてくる。
中国から渡来した言葉で、日本では違う意味を持つ言葉がある。「有頂天」これは梵語のバヴァーグラ(最高神)を漢訳したもので、存在の最高なる者の意味である。日本に入ってきてからは、狂気することの意味で使われる。たしかに最高神であることは、気持ちのいいものには違いないが、中国ではそのような意味では使われることはない。山形に「有頂天」いう名のラーメン店があるが、最高のラーメン店という意味でつけたのか、食べた人があまりのおいしさに有頂天になって喜ぶという意味なのか、どちらであろうか。先ごろ山の仲間と食べに行ったが、美味しいことは間違いないが、狂気するほど喜んだのでもなかった。
「億劫」という言葉も日本では違った意味で使っている。劫は時間の長さに単位で、大きな城を芥子粒で満たし、百年に一粒を取り去り、その大きな城の芥子粒が無くなる時間のことである。大きな城には幾粒の芥子が入るのか定かではないが、百年に一粒だから途方もない時間であることは間違いない。日本では面倒くさくていやになってしまうことの意味で使われている。
