月島(つきしま)しずくに指(ゆび)を差(さ)された女性秘書(ひしょ)は目を丸(まる)くして言った。
「ちょっと、待ってください。あたし、そんなことしてません。所長(しょちょう)、信じて…」
神崎(かんざき)は不審(ふしん)の目を向けた。しずくは立ち上がると、秘書に近づきながら言った。
「もし、私に協力(きょうりょく)してくれたら、目を瞑(つむ)ってもいいんだけど…」
しずくは、秘書の肩(かた)に手を触(ふ)れた。秘書は一瞬(いっしゅん)ふらついたが、すぐにしずくの手を払(はら)いのけると姿(すがた)を消(け)してしまった。神崎は声をあげて警備員(けいびいん)を呼んだ。
しずくは慌(あわ)てることなく言った。「大丈夫(だいじょうぶ)ですよ。すぐ戻(もど)って来ますから」
しずくの言葉(ことば)通り、女性秘書はまた姿を現した。どうやら、飛(と)ぶことができなかったようだ。秘書は座(すわ)り込むと、怯(おび)えたようにしずくを見つめた。しずくはにっこり微笑(ほほえ)んで、
「心配(しんぱい)しないで。あなたは自由(じゆう)よ。私が守(まも)ってあげる」
しずくが秘書の頭に手をのせると、その手が光りはじめて秘書の身体(からだ)を包(つつ)み込んだ。しずくが手をどけると、光は消えてしまった。秘書は訳(わけ)が分からず言った。
「あなたは…、いったい誰(だれ)なんですか? あたしを、どうしようと…」
しずくは秘書の前でしゃがむと、「あなたを縛(しば)りつけてたものは取り除(のぞ)いたわ。今まで辛(つら)かったよね。もう、何もしなくていいのよ」
秘書はそれを聞くと、ぼろぼろと涙(なみだ)があふれてきて泣き崩(くず)れてしまった。
<つぶやき>いったい何を取り除いたのか。きっと爆弾(ばくだん)付きのチップかもしれませんね。
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