みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1250「しずく165~取り込む」

2022-05-24 17:32:03 | ブログ連載~しずく

 日野(ひの)あまりが目を覚(さ)ますと、そこは大きな倉庫(そうこ)の中のようだ。回りはがらんとしていて何もない。あまりは椅子(いす)に縛(しば)りつけられていた。ロープが手首(てくび)に食い込んでいて、痛(いた)くて身動(みうご)きができない。倉庫の大きな扉(とびら)が音を立てて開き始めた。
 黒岩(くろいわ)が数人の男たちと入って来た。突然(とつぜん)、あまりの背後(はいご)にエリスも姿(すがた)を見せた。黒岩は、あまりの前まで来ると、彼女をじっくり観察(かんさつ)して言った。
「すまないねぇ。手荒(てあら)なことをしてしまって…」
 黒岩はロープをほどくように指示(しじ)をした。エリスがナイフを出してロープを切(き)る。あまりは、赤くなった手首をさすりながら胸元(むなもと)に手を持っていった。
 黒岩はにこやかに言った。「君(きみ)は、人の心を読(よ)むことができるのかね?」
 あまりは何も答(こた)えなかった。恐(こわ)くて、しゃべることもできないのだ。黒岩は、あまりの顔をまじまじと見つめた。あまりの顔に、恐怖(きょうふ)の表情(ひょうじょう)が表(あらわ)れた。黒岩はにやりと笑(わら)うと、
「なるほど…。私はいま、君をどうやって殺(ころ)すか考えていた。君は、私の心を読んだんだね。いいぞ。君のその能力(ちから)は、とても貴重(きちょう)だ。我々(われわれ)には必要(ひつよう)なんだよ。どうかな…、我々に協力(きょうりょく)してくれないか? なに、とても簡単(かんたん)な仕事(しごと)だよ」
 あまりは、心を読むことを止(や)めた。恐くて、これ以上(いじょう)は耐(た)えられそうもなかった。
 黒岩は震(ふる)えているあまりに優(やさ)しく言った。「大丈夫(だいじょうぶ)だよ。我々に協力してくれるのなら、君に危害(きがい)を加えることはない。では、食事(しょくじ)でもしながら話しをしようか――」
<つぶやき>あまりはいったいどうなってしまうの? 黒岩の手駒(てごま)にされちゃうのかなぁ。
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