みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1241「竜宮城」

2022-05-06 17:28:34 | ブログ短編

 そこは海の底(そこ)にあるという、乙姫(おとひめ)が住む竜宮城(りゅうぐうじょう)。
 今の乙姫はまだ幼(おさな)くて、陸(おか)の世界(せかい)に憧(あこが)れを持っていた。そこで乙姫は、ウミガメさんを呼(よ)びつけて言いました。
「あなたは陸(おか)に上がれるんでしょ。人間(にんげん)をここに連(つ)れて来てよ」
 ウミガメさんは答(こた)えます。「それはムリです。今の人間はわたしたちのことなんか…」
「でも、あなたは浦島太郎(うらしまたろう)をここに連れて来たんでしょ。あたしも、会いたいの」
「太郎さんは、もう亡(な)くなってます。人間の寿命(じゅみょう)は短いんですから」
「じゃあ、誰(だれ)でもいいわ。あたし、陸(おか)の上のことが知りたいの。どんな世界なのか――」
「それは、ダメですよ。外(そと)の世界のことを知るのは、乙姫にはまだ早いです。それに、人間を連れて来るには、いろいろと手続(てつづ)きが大変(たいへん)なんです。人間の中には悪人(あくにん)もいるんですから。もし、乙姫に何かあったら…」
「あたしなら大丈夫(だいじょうぶ)よ。あんなに青(あお)くて、キラキラしてる世界に悪(わる)い人なんか――」
「乙姫、どうしてそんなことを…。まさか、海の上に出たんですか?」
 乙姫は口を押(お)さえると、誤魔化(ごまか)すように言った。「そ、そんなこと、してないわよ。ちょっと、トビウオさんたちが話してるの、聞いただけよ」
「ほんとですか? もし掟を破(やぶ)ったら、乙姫だって罰(ばつ)を受(う)けることになるんですよ」
「そ、そんなこと、ちゃんと分かってるわよ。もうしないから、誰にも言わないで…」
<つぶやき>やっちゃってましたね。知りたい気持ちは分かるけど、掟は守(まも)らないとダメ。
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コメント
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