みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1242「歳を重ねる」

2022-05-08 17:31:16 | ブログ短編

 夫婦(ふうふ)で散歩(さんぽ)をしていると、昔(むかし)の友人(ゆうじん)にばったり出会(であ)った。その人は、以前(いぜん)住んでいたマンションで隣(となり)になった人だ。歳(とし)も近かったので家族同士(かぞくどうし)のお付き合いをしていたが、もう二十年以上もご無沙汰(ぶさた)をしてしまった。
 その人の話で、連(つ)れ合いが二年前に亡(な)くなったと知った。ずいぶん気のいい人だったので、何だが残念(ざんねん)で仕方(しかた)がない。あの頃(ころ)は、よく二人で居酒屋(いざかや)で呑(の)んだことを思いだした。
 その人と別れて家路(いえじ)についた。歩きながら、僕は何気(なにげ)なくぽつりと言ってしまった。
「あの人も歳を取ったよなぁ。髪(かみ)も白くなってたし…」
 妻(つま)は僕(ぼく)の顔をチラリと見ると、「何よ。そんなの当たり前でしょ」
「まあ、そうなんだけどね。……綺麗(きれい)な人だったのになぁ」
「へぇ、そんな風(ふう)にみてたんだ。ふ~ん、知らなかったわ」
 妻は不機嫌(ふきげん)そうな顔を僕に向(む)ける。僕は目を合わせないようにそっぽを向いた。
 妻は僕に聞こえるように、「ねぇ、あたしはどう? 変わっちゃったかなぁ」
 僕は返答(へんとう)に迷(まよ)った。ここで下手(へた)なことは言えないぞ。僕は平静(へいせい)をよそおって、
「いや、それは…。まぁ、いつも顔を合わせてるからなぁ、変わんないんじゃないのか…」
 妻は明らかに不満(ふまん)そうだ。僕は取り繕(つくろ)うように言った。
「まぁ、歳相応(としそうおう)ってことだよ。僕たち夫婦も、それなりに歳を取ってきたってことで――」
<つぶやき>妻といえども女性です。それなりの配慮(はいりょ)は必要(ひつよう)だと思いますよ。気をつけて。
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