みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0522「秘湯めぐり」

2019-04-20 18:30:43 | ブログ短編

「ねえ、ほんとにこっちでいいの? 道(みち)に迷(まよ)ってるんじゃない?」
 貴子(たかこ)は心配(しんぱい)になって訊(き)いてみた。先頭(せんとう)を歩いていた穂乃(ほの)が振(ふ)り返り、それに答えた。
「大丈夫(だいじょうぶ)よ。森(もり)へ入って真っ直(す)ぐ行けばいいんだって。三時間ぐらいで着くみたいよ」
「三時間って、わたしたち、それ以上(いじょう)歩いてるよね。もう、疲(つか)れたわ」
 一番後ろを歩いていた一恵(かずえ)が音(ね)を上げた。貴子は周(まわ)りを見回して、
「ここって道じゃないんじゃないの。ねえ、目印(めじるし)とか聞いてない? 川があるとか…」
 穂乃はまた振り返って、「そういえば何か言ってたけど…、忘(わす)れちゃった」
 穂乃はかなりアバウトなところがある。穂乃から秘湯(ひとう)へ行こうと誘(さそ)われたとき、ちゃんと下調(したしら)べをしておけばよかったと貴子は後悔(こうかい)した。
 貴子は穂乃に言った。「ねえ、地図(ちず)を見せて。ちゃんと確(たし)かめようよ」
 だが穂乃は平気(へいき)な顔で、「そんなの持ってないよ。だって荷物(にもつ)になるんだもん」
 貴子は呆(あき)れて、「なに言ってるの。それ、一番大事(だいじ)なものでしょ。あなた、秘湯めぐりをなめてるでしょ。どうすんのよ。もし、遭難(そうなん)したら」
 遭難という言葉を聞いて一恵が急に叫(さけ)んだ。「イヤよ! あたし、こんなとこで白骨死体(はっこつしたい)になりたくない。ねえ、もう帰ろうよ。あたし、帰りたい!」
<つぶやき>秘境(ひきょう)の温泉(おんせん)。いいよね。でも、準備(じゅんび)は怠(おこた)らないようにしないといけません。
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