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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0507「志願する」

2019-04-04 18:31:20 | ブログ短編

「どうして、勝手(かって)にそんなこと決(き)めたのよ!」
 女は哀(かな)しみと怒(いか)りで混乱(こんらん)していた。男はそんなこと気にもかけないで答える。
「向こうへ行けば、もっと素敵(すてき)な女性がいるかもしれないだろ。だから志願(しがん)したんだ」
 女は男の腕(うで)にすがりつき、「そんな…。死んじゃうかもしれないのよ。それに、向こうへ行ったからって、あたしより良い女なんて――」
「心配(しんぱい)すんなよ。俺(おれ)はこっちで君(きみ)と付き合えたんだ。向こうへ行ったって上手(うま)くやってやるさ。俺には、その自信(じしん)がある。俺はモテる男なんだ」
 女は呆(あき)れて言った。「それは違(ちが)うわ。たまたま、あなたがあたしのタイプだっただけで…。あなた、他の女性と付き合ったことなんてないじゃない」
 男はなおも強気(つよき)な態度(たいど)だ。「それは違うぞ。君以上の女性がいなかっただけで、付き合おうと思えば、誰(だれ)とだって。――それに、もう決めたことだ。明日、ここを離(はな)れるから」
 女は男の顔をキッと睨(にら)むと、男の腕を押(お)しやって吐(は)き捨(す)てるように言った。
「だったら、もう二度と戻(もど)って来ないで! あたしは、他の人と一緒(いっしょ)になるから。後悔(こうかい)したって、あたし、知らないから! さあ、行きなさいよ。出てけ!」
 男は女に背(せ)を向けると、振り返りもせず、そのまま歩き出した。
<つぶやき>男は冒険(ぼうけん)を求(もと)めるのです。でも女を捨(す)てるだけの価値(かち)があったのでしょうか?
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