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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0515「しずく18~新任教師」

2019-04-12 18:58:26 | ブログ連載~しずく

 月島(つきしま)しずくは、新任(しんにん)の女教師(きょうし)の顔を見たときハッとした。そして、あの暴漢(ぼうかん)に襲(おそ)われた時の記憶(きおく)がよみがえり身体(からだ)が震(ふる)えた。――教壇(きょうだん)に立った女教師の長い黒髪(くろかみ)、鋭(するど)い眼差(まなざ)し、そして…。一瞬(いっしゅん)しか目にしなかったが、間違(まちが)いなくあのとき助けてくれた人。あの後、どこかへ消(き)えてしまった女性に違(ちが)いない。しずくには不思議(ふしぎ)なくらい、その確信(かくしん)があった。
 教頭(きょうとう)が教室から出て行くと、女教師は黒板(こくばん)に自分の名前を大きく書いた。
〈柊(ひいらぎ)あずみ〉その文字は美しく力強いものだった。この女教師の生き様(ざま)を現(あらわ)しているかのようだ。柊先生は簡単(かんたん)な自己紹介(じこしょうかい)をすませると、一人ずつ生徒(せいと)の名前を呼んで出席(しゅっせき)をとりはじめた。
 昼休みの時間。教室に変な噂(うわさ)が持ち込まれた。昨日まで担任(たんにん)だった山波(やまなみ)先生が、生徒にいかがわしいことをしていた、というものだ。誰(だれ)が言い出したのか分からないが、職員室(しょくいんしつ)で先生たちがそんな話をしていたらしい。教室にいた誰もが、そんな根(ね)も葉(は)もない噂話(うわさばなし)を信じるはずはなかった。誰が言うともなく、確(たし)かめようという話が持ちあがった。
 いつの間に始業(しぎょう)のチャイムが鳴(な)ったのか、教室の入口に柊先生の姿(すがた)があった。先生は騒(さわ)いでいる生徒に向かって、「何してるの! 早く席につきなさい!」
 先生の鋭い声で生徒たちは一瞬にしておとなしくなった。生徒たちが席につくと、先生はみんなを見回し、しずくに目を向けると、「月島さん。何を騒いでいたのか説明(せつめい)しなさい」
 しずくはすっとんきょうな声を上げて、「えっ、私?! 私、ですか…」
<つぶやき>目立(めだ)たないようにしているのに、先生に当てられることってありますよね。
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